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見て分かりやすい愛の形

作者: MOZUKU

「好きです!!付き合ってください!!」

「ごめんなさい。無理です。」

また断ってしまった。告白してくれる娘には悪いが、日に日に作業化されていく。

呼び出される→告白される→断る

これの繰り返しである。

赤石あかいし ただし。それが僕の名前。あと高校一年生である。

本当に自慢では無いのだけど、身長180センチで、顔はそれなりに整っている。

そのせいで結構女子から告白される。それは一般男子からすれば喜ばしいことなのだろうけど、僕にとっては苦痛でしかない。

大して話したこともない女子から「好きです」と言われても、僕の一体何が好きなの?外側だけ見て好きなのか?と言いたくなるわけだ。

愛だの恋だの形の無いものも信用出来ない。

なんとなく女性恐怖症になりかけている。

告白を断る度に罪悪感を感じて、胃が痛くなるし、最近良いことないなぁ。



トレーニングジム【レッドストーン】。それはうちの実家である。小さなジムだけど、親父が熱心な筋肉バカなので、常連客が多く。それなりに儲けている。

僕も学校が終わればジムを手伝う。手伝う合間に筋トレをしているので、僕も歳の割には筋肉質な体だ。トレーニングをしている間は嫌なことも忘れることが出来る。僕の精神安定剤の様なものだ。

「おい、正。さっき入って来た新規のお客さん、お前と同じ高校の様だが知り合いか?」

「はい?」

な、なんだと!?とりあえず遠目から、その新規のお客様というのを見てみる。少しポッチャリとしたオカッパ頭の女の子、あれは同じクラスの南方みなみかた 静香しずかさんじゃないか!!・・・割と最悪だ。僕の心落ち着けるジムに、クラスメートの女子が来るなんて、胃が痛くなってきた。

「あの子を僕に近づけないで、じゃないとジムの手伝いなんか出来ない。」

「わ、分かった。」

それにしても南方さんの僕のイメージは、休み時間とあれば、お菓子を食べてるイメージの娘って感じだったのに、どういう心境の変化だろう?

三日坊主ですぐに辞めてほしいという僕の願いとは裏腹に、彼女は毎日の様にジムに来て、汗だくになりながらトレーニングに励んでいた。何が彼女をそこまで動かすのだろう?

その間、僕と彼女に会話も無く、一定の距離を保っていた。どうやら向こうも僕に話し掛ける気は無いらしい。

そうして3ヶ月が経過した。

3ヶ月鍛え続けた彼女の体はスレンダーになり、美少女といっても差し障りのない感じになっていた。遠くから彼女のことを見守っていた僕は心の中で拍手喝采を送った。

すると次の日。

「好きです!!付き合って下さい!!」

なんと南方さんが、僕に告白してきたのである。

呼び出される→告白と来れば、いつもであれば断るなのだが、相手は南方さんである。告白の理由が気になるところである。

「ど、どうして僕に告白したの?」

勇気を持って、キョドりながらも僕は理由を聞いた。はぁ、緊張するぅ。

「前に私が転んだ時に手を差し伸べてくれたから、優しい人なんだなぁって思って、太ってた私のことデブって言わなかったし、今までこんなに優しい人に会ったこと無かったから、惹かれました。」

な、内面だ。僕の内面をちゃんと見てくれている。こんなに褒められると照れる。顔が熱い。

「でも赤石君カッコいいから、太ってる私が告白するのは気が引けて、それで痩せて少しでも可愛く見せたくて、ジムでトレーニングしてたの。まさか赤石君のお父さんがやってるジムとは思わなかったけどね。」

えっ?僕の為に体を鍛えてくれてたの?マジで?

そうなると僕はどうしても確認せねばならないことがあった。

ここが人気の無い体育館裏で良かった。もしかすると彼女に幻滅される可能性もあるのだけど、この衝動は抑えられない。

「あの腹筋を見せてくれない?」

「ふ、腹筋!?」

「そう腹筋。駄目かな?」

「・・・え、えーっと。」

駄目か、やはり駄目か。確かに百年の恋も冷める要望だったかもしれない。

「い、良いですよ。」

まさかのOK!!ダメ元だったけど聞いて良かった!!

彼女は顔を赤らめながら恥ずかしそうに制服を捲り、お腹を見せてくれた。美しいシックスパックの腹筋を。

ちゃんと段々に、一番割れ難いとされる下の段までくっきりである。腹斜筋もちゃんと鍛えられているし、非の打ち所が無い。

"ツンツン"

「ひゃあ!!ちょっと触るのは勘弁してください!!・・・鍛えるの楽しくなっちゃって、こんなバキバキになっちゃいました。恥ずかしいです。」

硬い。硬いよこの腹筋。見せ掛けだけの腹筋じゃない。彼女の努力の結晶だ。

「う、うぅぅうう。」

「あ、赤石君、泣いてるの?」

あぁ、目頭が熱い。彼女の努力は全て僕に捧げられたもので、僕の言った分かりやすい形で現された愛の形であった。

女性恐怖症が吹き飛び、気づいたら僕は彼女に惚れていた。

女の子と付き合うなんて、よく分からないし、少し胃も痛くなってきたが、彼女の努力に見合う男になりたいと思うよ。


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