1話 領地に転生!?
「ここは……?」
朦朧とする意識の中、真っ白な部屋で目を覚ました。
「あぁ、目覚めたようね大空大地くん」
綺麗なお姉さんが話しかけてくる。
「どうしてぼくの名前を? それにここはどこですか?」
たしか、学校の帰りで……
……!?
そうだ、地震のせいで地面が崩れて落ちそうになった子どもを助けようとしたら自分が落ちたんだった。
「もしかして……」
「その通りです」
「やっぱし、僕は死んだんですね」
「この世界の子は理解が早くて助かるわ」
だって、体がないんだもの。
何か透明の球のようなものがぷかぷか浮かんでいて、これが僕の魂か何かなんだなと分かる。
「これはあれの流れですか?」
「おそらくその通りですね。この世界で言うテンプレとかいうやつです。本来は起こるはずのなかった地震で命を失ってしまった魂の救済措置」
よくある異世界転生だ。
このパターンだとある程度は選択肢があるのがテンプレだけど。
「僕もそれなりに作品に触れてるので大体は理解しました」
「それは良かった。出来る限り希望には応えるようにするから、何か希望があれば遠慮なく言ってください」
「生き返るのは……」
「ごめんなさい。それはできないんです」
ですよね。
「では、剣と魔法の世界がいいです」
せっかく、転生するならファンタジー世界がいいな。
モンスターがいて、魔法があって冒険者が活躍するような世界。
「ではそのようにいたしましょう。他に何か希望はありますか?」
「領地経営がいいです」
「まぁ、変わったことを仰るのね」
「……?」
何か変なことを言ったかな。
領地経営も割とテンプレだと思うんだけど。
「問題ないわ。ではそのように転生させますね」
「あっ、あとチートとまではいかなくてもそれなりの力が欲しいです」
「転生してすぐは難しいですが、努力すれば結果がついてくるようにしておくわね」
領地経営の成り上がりになりそうだな。
まぁ、問題なさそうだしオッケーだ。
「ではお願いします」
「異世界でも力強く生きてくださいね」
お姉さんが何かを呟く。
はっきりと聞こえるけど何を喋っているのかは分からない。
恐らく魔法か何かの詠唱ってやつだろう。
眩い光に包まれて徐々に意識が遠のいていく。
異世界……
僕が降り立ったのは草木の一本も生えていない荒野だった。
地面は乾燥してひび割れ、毒ガスのような紫の靄が漂っている。
死の大地と呼ばれてもおかしくないような土地。
というか、絶対そうやって呼ばれてるよこれは。
お姉さんに騙されてしまったのだろうか?
いくらなんでもこんな場所はひどいと思う。
それに……なにこれ?
体が動かない。
というか体がない。
視点は神視点で見たい箇所にフォーカスがあたる。
しかし、ある一定のの場所より外側は見ることができない。
そんなことあるのか?
ここまでテンプレ通りにやってきて……
領地本体に転生とかありえるかーーー!!
叫びたいけど声が出ない。
音も聞こえない。
目は見えても、そこは何もない死の大地が広がっているだけだった。