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一人で完結の生産者※仮題  作者: 銀狐@にゃ〜さん
9/30

リアル側のお話



ログアウトした俺はVRハードを頭から外し枕脇に置いて窓を眺める。

時刻は夕方の4時を少し回ったくらいだ。

まだ春先ということもあり、晴れてはいるものの夜になれば急激に気温は下がってくる。

若干の肌寒さを覚えた俺は椅子にかけていた薄手の上着を羽織って部屋から出る。


階段を下りてリビング兼台所に向かい冷蔵庫の中身を改める。

昨日の残りのご飯と卵、野菜がナスと玉ねぎにピーマンか…

他にもいくつか食材が入ってたから炒飯と麻婆茄子でも作るかな?


足りない食材を買いに行こうと家を出たところで近所のおばちゃんが井戸端会議をしていた。

俺に気付いたおばちゃん達がこちらに視線を向ける。

絡まれるのは面倒ではあるが、ここは愛想良くしておいた方がいいか…


「こんばんわ。冷えて来ましたね」


「あら理玖君こんばんわ〜、これから出掛けるの?」


「えぇ、今日は母が出張なので俺が食事当番なので食材を買いに」


「まぁ偉いわねぇ!?うちの娘にも見習わせたいわぁ」


「いえいえ、大したことじゃないので…それじゃ失礼します」


「気をつけてねぇ」


軽く会釈してその場を離れる俺。

あのまま話してると延々と話し続けるからな…


近所のスーパーに到着し、レトルトの麻婆茄子の素と挽肉とハムを購入。

袋詰めを終えて出口に向かうと、見知った人物と鉢合わせた。


「雪菜先輩?」


「ん?…あぁ理玖君…こんばんわ」


「こんばんわ。買い出しですか?」


「うん。理玖君も?」


「そんなとこですね。足りない物を買いに来ただけですが」


手持ちの袋を掲げて見せると雪菜先輩も同じように掲げて見せてきたんだが…


「それ…もしかしなくてもお菓子…ですよね?」


「ん?そうだけど…」


「主食とかは…?」


「主食…」


雪菜先輩は持っている袋を見つめている。

まさかなぁ…?


「あの〜…つかぬ事をお伺いしますが、そのお菓子が主食…とか…」


俺が恐る恐る聞いてみると、雪菜先輩は眠そうな目をこちらに向けながらこくんと自信満々に頷いた。


「雪菜先輩、それは主食にしちゃダメなやつです。体調崩しちゃうやつです」


雪菜先輩は首を傾げている。

これあかんやつや…


雪菜先輩はうちの近所に住んでいる同じ高校の先輩だ。

帰国子女ってやつで、親御さんは海外で仕事をしている事が多く家ではほぼ一人暮らしに近い生活を送っているらしい。

いつも眠そうな目をしていて感情表現も乏しいため、何を考えてるのか分からない節もあるけど基本的には美人で優しい先輩だ。

だが、放っておくとこういったちょっと変わったことをやり出しかねないのでなんだか放っておけないんだよな…


「え〜っと、雪菜先輩は辛いのとか平気ですか?」


「大好物」


「麻婆茄子とか…」


「最高」


俺が言い切るよりも先に応えてきたし…

お目々がきらっきらしてますがな…


「今日は俺が晩飯作るんですけど、良かったらうちで食べませんか?」


「でも迷惑じゃ…」


「全然ですよ。一人分増えるくらい手間掛かんないですし」


「じゃあ、お邪魔する…」


そんなわけで、雪菜先輩と連れ立って帰路を進む。

途中雪菜先輩の住むマンションに買い込んだお菓子を置くために寄り道をしたんだが、何度見てもこのマンションはデカイ。

普通にいいとこのお嬢様だよなこの人。

本人に聞くとそんな事はないの一点張りだけど、このマンションを見たらそれは無いってツッコミを入れたくなる。


そうこうしているうちに自宅に到着。

俺は台所へ向かい晩飯作りに取り掛かる。


「雪菜先輩はその辺で寛いでてください。そんなに時間かからないんで」


ある程度下拵えだけはして出掛けたので後は炒めるくらいだしな。


「何か手伝うことは…」


「いや〜…特には無いですかね?炒めるだけなんで」


「じゃあお片付けは私も」


「分かりました。後でお願いしますね」


「任せて」


ふんす!っと両手を握りやる気十分といった様子の雪菜先輩。

歳上に対して失礼かもしれないが可愛らしいと思い、その様子につい笑みを浮かべる。


「ん…どうかした?」


「いや、なんでもないです。じゃあパパッと作っちゃいますね」



およそ20分後

料理が出来上がりテーブルに並べると、雪菜先輩が俺を見てぼーっとしていた。


「出来ましたよ?どうしました?」


「…いい」


「はい?」


「な、なんでもない…すごく美味しそう」


「お口に合うかは分かりませんけどね〜。どうぞ」


「いただきます…」


なんだかよく分からんけど気にしたら負けなやつだな。

雪菜先輩はスプーンを手に取り炒飯を一口。

熱かったのか、はふはふしながら苦戦しつつも飲み下し、続いて麻婆茄子に手をつける。

口に含んだ瞬間眠そうだった目をカッと見開くと、雪菜先輩は結構な勢いで炒飯と麻婆茄子、たまに水といったローテーションで平らげていく。


「どうですかね?」


「……(もぐもぐ)」(力強くサムズアップ)


お気に召したようだ。

俺も食べるか…


しばらくして俺達は晩飯を食べ終えて台所に二人並んで洗い物をしていたら雪菜先輩が話しかけてきた。


「ねぇ理玖君…」


「どうしました?」


「私と結婚しない?」


「ごふっ!!」


思わず()せた

いきなり何言い出してんだこの人は!?


「あ、間違えた…理玖君はいいお婿さんになれる」


「どんな間違え方ですかそれ…そりゃどうもありがとうございます?」


「というわけで私と結婚しない?」


「間違えたんじゃなかったんですか!?」


「ん?言う順番を間違えた」


そっち!?

いや、まぁ言われて悪い気はしないんだけどさ…

この先輩はいろいろと急過ぎるきらいがあるからな。

いろんなプロセスをすっ飛ばして物事を言ってくるからホント心臓に悪いんだ。


「それに…」


「それに?」


「こうして並んで洗い物してると新婚さんみたいだし?」


ほぼ無表情で色々とぶっ込んで来るなぁ。

しかも疑問形とかどう返したらいいんだよ!?


「今時並んで洗い物する新婚さんなんているんですかね?」


「仲が良ければ?」


「まぁ仲が良ければそうかもしれないですね…」


「だから私と結婚しよう」


「自由か!?」


思わず突っ込んでしまった。

いや、これは俺悪くないよね?

どこまで本気なのか分からないが、雪菜先輩は何か問題でも?とでも言いたげに首を傾げていた。



洗い物を済ませた後、時間も時間だったので雪菜先輩を送ることにした俺は、雪菜先輩の住むマンションへ向かい二人並んで歩いていた。


「ところで理玖君は今日のお昼、ゲームしてたね」


「随分と斬新な聞き方ですね…まるで見てましたみたいな言い方ですけど」


「うん。見てたよ」


マジで!?

それはそれでなんか怖いんですけど!?

俺があれやこれやと想像して背筋をざわつかせていると雪菜先輩は続きを話し始めた。


「私も遊んでたから。『アースガルズ・オンライン』」


「あれ?雪菜先輩も?って事は【生産職】なんですか?」


「そう。私は【料理師】だよ。名前は『スノウ』。理玖君そっくりな人がいたからそうかなって」


「なるほど、それなら声掛けてくれれば良かったのに…」


「別の【採掘師】?っぽい人と一緒だったから」


「あぁ、あの時か…あれはライカが…じゃなかった、あのプレイヤーさんがフィールドで立ち往生みたいな感じだったんで街まで送って来てただけですよ」


「ふぅん…」


「どうかしました?」


「なんでもない…この後は?」


何やら雪菜先輩からのジト目が痛いんだが…

ん〜…この後は帰ってシャワー浴びたら特に予定は無いな。


「特に予定は無いですよ?シャワー浴びたらたぶん部屋でごろごろするくらいですかね?」


「そう…じゃあ…」


雪菜先輩はこちらに向き直り、何かを決意したように告げて来た。


「私と友達になってくだしゃい…!?」


噛んだ。

というか俺は友達だと思ってたわけなんだけど違ったのか?

恥ずかしそうにしてるので噛んだ事はスルーしておいて…


「え〜っと…友達ですか…?それはまたどういう…」


「あ、間違えた」


またかよぉぉぉぉぉう!?

今度は何をどう間違えたんだ!?


こほんと雪菜先輩が仕切り直す感じで言い直す。


「この後夜8時にクラフト&サバイバルの中央広間で待ってる」


「え?あぁ…」


「そこで私と友達になってください」


「あぁそういうことですか。全然いいですよ」


「ホント!?」


ぱぁっと嬉しそうに顔を綻ばせて俺の手を握ってくる雪菜先輩。

普段の彼女からは想像出来ないくらいの喜びに満ちた笑顔はとても可愛らしく映った。


それからというもの、マンション前に辿り着くまで表情には出ないものの、雪菜先輩は嬉しさが抑えきれない感じで身体を右へ左へと忙しなく動かしていた。

若干鼻息も荒いしな…

そして俺達はマンション前に到着する。


「それじゃあ俺はこの辺で」


「今日はご馳走様でした」


深々と頭を下げてくる雪菜先輩だったがすぐに頭を上げてはにかんだように笑い


「じゃあまた後で」


「了解です。また向こうで」


「ところで理玖君」


歩き出そうとした俺を呼び止める雪菜先輩


「どうしました?」


「この後も待ち合わせて会う約束をするなんて仲良しだね」


「まぁ、仲良し…なんですかね?」


「というわけで私とけっこ…」


「それじゃあまた後で!!」


言わせねぇよ!?


体力に自信は無いが俺は全力ダッシュで帰った。



ラブコメか?

ラブコメなのか?

理玖もげろ


5・7・5の句にしてみました(季語はラブコメで春)


面白い、続きが気になる、理玖もげろって方は↓の☆をポチッとな!ですよ〜

ブクマも是非に〜


そして残念なお知らせ


6月に入り、リアルのお仕事が通常営業に戻りつつあるため、少し更新速度が低下いたします…

しかし理玖をもぐため(義務)頑張って隙間時間を使って書き上げていきたいと思いますので、皆様応援のほどよろしくお願いいたします!!

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