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一人で完結の生産者※仮題  作者: 銀狐@にゃ〜さん
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検証って楽しいですよね?

あれ?楽しくない?



【錬金術師ギルド】で錬金術の基礎とも呼べる【生産】を習った俺が次にした事は各【生産職】の元締めギルドを周り、全ての【生産職】に転職出来る様にする事だった。

もちろん素材も集めなければならないため【採取職】も習得していた。

【採取職】はあまり種類は多くなく、『園芸師』、『採掘師』、『漁師』の3種類だけであった。

そして各職業を習得する度に『装備セット』枠が追加されていき、今俺が持っている装備セット枠は最初の錬金術師の分を含めて10枠となっている。

俺の予想が正しければ、今後追加されると言われている【上級職】の分も枠が増えるかメイン道具が同じカテゴリーであれば何かしらの装飾品などで補われるんじゃないかと思っている。


まぁ【上級職】なんて今無いものを考えても仕方ないので、俺はもう一つの検証を行おうと最後に作った料理アイテムをインベントリに仕舞ったその時に告知音が鳴った。


「なんだ?メール…じゃない、フレンドチャットか?」


視界の端にある『!』を意識すると内容が展開される。

チャットの差出人は亜子、もといキャラ名『夜子(やこ)』からだった。


『ようやくチュートリアル終わった〜(>_<)今どこ?迎えに行くよ〜⊂((・x・))⊃』


リアルでも騒がしいやつだけど、チャットでも賑やかなんだな…


『俺が今いるのは商業都市の方だぞ?』


『え…(・・?)今何て?』


『商業都市の方だってば』


『えぇぇぇぇぇ!?何でよ!?【戦闘職】じゃないの!?』


何でこいつは俺が戦闘が苦手なことを知ってるのに【戦闘職】を選択すると思ったんだろうか?


『俺が戦闘苦手なの知ってるだろ?』


『うぅ…そうだけどぉ…少し時間ちょうだい!』


『それはいいけど、俺も適当に少し遊んだら一回ログアウトするぞ?』


今日は母さんがいないから晩飯とかも用意しないとならんからな。


『わかたがんがる』


どんだけ焦ってるんだこいつは…

とりあえずログアウトする時は教えるとだけ返して俺は改めて検証を始めようとすると


「そこの君、え〜っと、アース君?」


何やら名前を呼ばれた。

声のした方に振り返ると、どう見ても初心者ではない装備をした女性が立っていた。


「何ですか?」


「いや、なんかあちこちと元締めギルド回ってた様だったから目に付いてさ〜?何してたの?」


「全ての生産職と採取職を習得してただけですよ?」


「全てって…マジ…?」


「何か問題あります?」


なんなんだこの人は?

いきなり聞いて来て小馬鹿にする様な感じの態度を取っている。

失礼な奴だな。


「ついでに聞いてもいいかな?最初のスキルは何を取ったの?」


「…教える義理はありませんね。だいたいあなただってどんなスキルを取ったか聞いても教えないでしょう?」


「そりゃ確かに、まぁでもβテスターのアドバイスとして忠告しておくよ」


「はぁ…」


「【投擲】と【アイテム枠拡張】は完全に外れスキルだから気をつけたほうがいいよ?【投擲】はアイテムを投げた所でしっかりと対象に当たらないと意味無いし、【アイテム枠拡張】はアバターレベル上昇で得られるステータスポイントをSTRに振ればどんどん増えていくから無駄になっちゃうんだよね〜」


「ご親切にどうもありがとう。用はそれだけ?」


「いやいや、お近づきの印にフレンド登録なんて…」


「お断りします。失礼」


俺は少し食い気味に断りを入れてその場を離れた。



商業都市、冒険者ギルド酒場内



一人の女性プレイヤーがカウンターで荒れていた。


「この私がせっかく声を掛けてやったっていうのに…ちょっと、いやかなり顔が良いからって調子に乗りやがって〜!!」


ダンッとグラスをテーブルに叩きつける様に置くと、知り合いらしき男性プレイヤーが声を掛けた。


「おやおや、鍛治師のトッププレイヤーと名高いミーシャともあろうものが随分と荒れているじゃないか?どうしたんだい?」


「あぁん!?…なんだゲンか、昼間に生意気な生産初心者に声を掛けたんだけどさ〜」


「んん〜?あぁそうか…フラれたのか」


「フラれたんじゃない!!」


ミーシャと呼ばれた女性プレイヤーをおちょくる様に扱うこの男性プレイヤーはゲンというプレイヤーで、ミーシャ同様、木工師のトッププレイヤーに名を連ねるプレイヤーであった。


「でもさ〜ミーシャ、考えてもみなよ?どう声を掛けたのかは知らないけど、見ず知らずのプレイヤーにいきなり声を掛けられたら普通身構えちゃうでしょ」


ともっともらしいことを発言したのは別の女性プレイヤー。

仕立ての良い布製の装備で着飾るのはユーリというプレイヤーで、他の二人と同じく裁縫師のトッププレイヤーと呼ばれている人物だ。


「でも元締めギルドを全部回って全職を覚えるなんて効率悪いじゃんか〜」


「ほぅ…」


「何それ詳しく!」


アース個人としては思いつく限りの検証をしようとしていただけであったが、その行動はこの場にいるβテスターの中でも有名な【生産職】トップ3の琴線に触れていたようだった。


「私が気になったのは、奴が【料理師】ギルドから出て来たときに仕舞っていたアイテムがチラッと見えたからなんだよ」


「料理アイテムだとしたら…最初に作るのは『目玉焼き』じゃなかったか?」


「たしかそうだったと思うけど…」


「問題は何を作ったかじゃないんだって…そのアイテムの色が見間違いじゃなけりゃ『虹』だったんだよ…」


「「なんだって!?」」


トッププレイヤーである3人が驚くのには理由がある。

この3人はβテスターの中でも古参のプレイヤーであり、職は違えども切磋琢磨しあってきたライバルであり仲間である。

偶然ではあったが彼女達も最高品質のアイテムを作り出したこともあるが、彼女達の実力を持ってしても最高品質のアイテムを作り出せたのは片手の指で足りるほどの回数しかない。

アース、もとい理玖が見ていたファンサイトに載せられていたアイテムも彼女達が作り上げたものだったのは余談である。


アイテムはその品質によって輝き方が違う。

アースが最初に作り上げたポーションはHQ(ハイクオリティ)品であったため、インベントリに仕舞っていればその枠色は金で縁取られていたはずである。

しかし、そういった高品質アイテムはインベントリから取り出した時にパッと見で分かるほどに輝く。

アイテムが高品質であればそれは金色に輝く。

彼女達もトッププレイヤーである以上HQアイテムの輝きは見慣れているが、今回ミーシャが口にした色は違った。


「まさか初心者がSQ(スペシャルクオリティ)を作り出したってことか!?」


「嘘でしょ!?」


ミーシャが口に出した色は『虹』

つまりその色が示す品質は『SQ(最高品質)』に他ならないのだ。

この3人が驚くように、SQを作り出すのは相当至難の業なのだ。

作業工程をほぼノーミスで寸分違わず乗り切らなければ辿り着けない境地なのである。

とある太鼓のゲームで例えるならば、最高難易度でフルコンボ、かつ評価が全てパーフェクトで無ければSQは作れないと言えば分かりやすいだろうか?

いくら初心者向けのレシピであってもその難しさは変わらない。

そんな中、始めたばかりのプレイヤーがSQのアイテムを所持していたとなればそれは話題としては最高級の話題となるのは明白だった。

正式サービス開始の初日にとんでもない物を見たミーシャのテンションは上がりに上がっていたため、普段はやらない初心者への声掛けなんて事を行なったための盛大な自爆であった…


事の真相とミーシャの言動と態度を再現させてみた二人は、揃ってこう言った。



「「そりゃミーシャが悪い」」



ライバルで信頼している仲間二人にとどめを刺されたミーシャの自棄酒は進み、ゲーム内なのにも関わらず酔っ払った様になり、精神状態の異常を感知したVRハードが強制ログアウトを施すといった稀に見る大惨事があった事をアースが知るのはだいぶ後のお話である…



時は遡り、アースがミーシャから逃げる様に立ち去った時間まで逆戻る。


俺はまた変なのに絡まれるのも嫌だったので、近くにあった宿屋の一室を間借りして検証を始めた。


さっきの女性プレイヤーが言っていた二つのスキルだが、実は俺、モロ取っちゃってるんだよね。

あの女が言っていた通り、ファンサイトの前評判では不遇なスキル扱いされてはいたんだが、物は考えようだと思い俺は迷わず取得したのだ。

これは俺個人にしか適用されない様なものなんだが、まずは俺のプレイスタイルの問題だ。


俺は戦闘行為がからっきしダメなプレイヤーであるのは間違いない。

なので俺自身は亜子を始め他のプレイヤーと組む事になったとしてもサポートに徹する事でその存在意義を見出そうと思ったのだ。

その一つが【投擲】である。

β時代でのこの【投擲】スキルは色々なプレイヤーが模索した結果、投擲距離が一定でなおかつしっかりと対象に投擲したアイテムが当たらなければ効果を発揮することは無く、運が悪ければそのまま消失してしまうといういいとこ無しのスキルであった。

だが逆に考えれば当たりさえすれば良いのだ。

そこで目を付けたのが【生産職】の命とも言えるステータスのDEXだ。

DEXを上げるメリットは何も生産効率や成功率を上げるだけでは無い。


【戦闘職】の【弓術師】というものがある。

この職業はDEXを上げる事で攻撃力が伸びていく職業なのだが、見るべき点はそこでは無くDEX自体が命中補正も担っているという点だ。

おそらく【投擲】の検証を行ったのは【戦闘職】のプレイヤーが多かったのだろう。

【弓術師】の高DEXステータスありきのスキルと思われればそれは確かに死にスキル扱いされてしまうだろうが、それを使うのが【生産職】であれば話は変わってくる。

【生産職】に携わるプレイヤーであれば分かるが【生産職】にとってDEXというステータスは飾りではない。

DEXが高ければ高いほど生産の成功率自体が跳ね上がっていくのだ。

前述した通り、DEX自体には命中補正も担っている。

つまりDEXの数値が高い【生産職】にとって【投擲】は非常に相性の良いスキルになるという事だ。

仮に投げるアイテムがデバフを齎すアイテムやダメージを与えるアイテムであれば、【生産職】の数少ないサポートスキルとも攻撃方法ともなるのだ。


まずはこの検証から始めよう。


俺は宿屋に中庭があったのでそこに移動して的を用意する。

用意したのは先程【鍛治師】ギルドで作った銅板だ。

一定の距離を置き足元に転がっていた石ころを手に取り銅板に向かって投げつけると、ヒュン!という軽快な音と共に石ころは飛んで行き、カーン!と甲高い音をさせて銅板に当たる。

アイテムには耐久値というものが設定されており、耐久値が底をつけばそのアイテムは破損、または壊れて消滅する。

耐久値の最大値は100となっているが、石ころを当てた銅板の耐久値を見てみるとこれが78まで減っていた。

これが示す結果はつまり…


「やっぱり【投擲】は十分武器になるって事だな。ダメージ計算がどんな風になってるかは分からんけど、ただの石ころでこの威力があれば全く問題ないだろう」


俺は自分の立てた仮説の結果に満足して宿を出る。

ジョブレベルの上げ方は分かったが、アバターレベルを上げるためにはやはりフィールドにいるモンスターを倒さなければならない様なのだ。


【投擲】でどこまでやれるかも試す必要もあったためあまり気乗りはしないが、仕方無く俺はフィールドへと足を運ぶのだった。




ゴミスキルだって使える事を証明してやりたいんや…


面白い、続きが気になる、その気持ち分かるで…という方は↓の☆をぽちぽちしてくれたら嬉しいんだなぁ


ブクマも是非〜

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