裏11(前編)
11の裏番組。
アースがやらかしちゃう直前の少女達の戦い。
レディ?
ファイッ!!(カーン!)
アースが店を出た後、残された4人はまだ店に居た。
しかしその様子は女の子4人が集まって姦しいといった様子では無く、むしろ重苦しいお通夜のような雰囲気であった。
そんな中、この空気を作り出した張本人である環は悪びれた様子もなくテーブルに並べられたケーキを食べていた。
「あ〜せいせいした。やっといなくなってくれたか〜」
環の言葉である。
「いくら同じゲームやってるって言っても、何でアタシがあんな奴と一緒に遊ばなきゃならないんだか〜」
「ちょっとたまちゃん…」
「それに何?【生産職】だっけ?このゲームやる意味あんの?このゲームってシナリオ進めてクリアしてって終わりのゲームでしょ〜?それなら別に【戦闘職】だけで十分じゃん」
「たまちゃんやめなって…」
「雪菜さんも【生産職】なんだっけ〜?何のためにやってるの?」
「私は…自分の将来のために…」
「はぁ?マジウケるんですけど〜。だったらリアルでやればいいって話じゃない?」
「そんな事、君に言われる筋合いは無い…」
環の考え方。
それは【戦闘職】絶対主義の考え方に酷似していた。
徹底的に【生産職】を下に見ているこの言動は、今いるこの空間だからこそ騒ぎにはなっていないが、この店、ひいては今いるこの街は【生産職】達が活動している拠点とも言える街だ。
今でこそ矛先は雪菜に向いているだけだが、もし同じような事を街中で言おうものなら大変な事になる。
凛はそれを分かっているため環を諫めようとしているのだが、当の本人が止まらない。
「マジキモいマジうざいマジダサい!あんな奴が作ったのなんて誰が好き好んで使うかっての〜」
「たまちゃんもうホントやめよう?」
「凛も亜子姉もあんな奴どこが良いわけ?見た目も髪型さえちゃんとしてればいいのにわざわざあんな顔を隠すようなことしてキモいし、あんなのが兄貴かと思うとホンットありえないわ〜」
「そうか…君は子供なんだね?」
「は?子供ってなんですか〜?分かるように言ってくれない?」
「理玖君の妹と思って我慢してたけど、君はただ理玖君の優しさに甘えてるだけのただの子供だって言った」
「は、はぁ?意味分かんないし…なんでアタシがアイツに甘えてる事になってんの?」
「………」
雪菜と環の口論を見ていた凛は、雪菜の言葉を聞いて同じ事を思っていた。
ーーside 凛ーー
私とたまちゃんは幼馴染だ。
私は基本的にたまちゃんと仲が良いが、こうやって理玖兄を悪く言うたまちゃんだけは大嫌いだった。
昔から私とたまちゃんを可愛がってくれていた理玖兄を知っているからこそ、たまちゃんの理玖兄に対する態度が許せないのだ。
今朝の事を思い出した。
たまちゃんは家事全般が出来ない。
二人の母親である優花里さんが出張でいないというのはお姉ちゃんから聞かされ知っている。
そうなると、水嶋家で家事を代わりにするのは理玖兄になることも知っている。
今朝の朝食を用意したのも理玖兄だと聞いた。
せっかく用意してくれた理玖兄に対してたまちゃんが言った事もお姉ちゃんが怒りながら教えてくれた。
私も聞いていて腹が立った。
私も家の手伝いなどで家事をする事があるため、その大変さは身に染みて分かっている。
気持ちを落ち着かせるのに時間がかかって、たまちゃんを迎えに行くのが遅くなった。
迎えに行って出迎えてくれたのは理玖兄だった。
頭を撫でてくれた。
すごく、すっごく久しぶりに撫でてくれた。
嬉しすぎて抱き着きたくなったけどそこは我慢した。
私にとっての理玖兄という存在はいつも優しい憧れのお兄ちゃんなのだ。
中学に上がって言われたことはショックでもあったけど、私達を思って言ってくれたことだと知っているから残念ではあったけど受け入れた。
『今までみたいに構ってあげられなくはなると思うけど、環の事頼むな?最近思春期みたいでどう接して良いのか分かんないこと多くてさ…』
あの時の理玖兄の困った様子は今でも鮮明に覚えている。
そして今も理玖兄は困っている…
理玖兄の気持ちを欠片も理解していないたまちゃんの言動によって…
ふつふつと私の中で嫌な感情が膨れ上がってくる…
(なんで私が理玖兄の妹じゃなかったんだろう)
これは思っても仕方のない事だ。
それでもどうしても思ってしまう。
(私ならあんな思いさせないのに…)
去り際の理玖兄の表情を思い出すと足が震える…
全てを諦めたような、理玖兄の中の大事な何かが壊れたような気がした。
あまりに表情が抜け落ちてしまっていた理玖兄を止められなかった…
どうして…
どうしてこうなっちゃったんだろう?
たまちゃんが好き勝手理玖兄を馬鹿にしだした。
雪菜さんにも噛みつき始めた。
私が止めないと…
それでもたまちゃんは止まらない…
やがて…
たまちゃんは言っちゃいけない事を言ってしまった。
「あんな奴いなくなっちゃえばいい!!」
ばちん!!という乾いた音が鳴り響く。
私は思いっきりたまちゃんの頬を叩いていた…
凛ちゃん怒りのビンタ
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