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短めだけどド〜ン
「ダイブイン」
雪菜先輩との待ち合わせには少し早かったが、俺は確認したい事もあったので早めにログインする事にした。
少しの暗転の後目を開けると、そこは俺が最後にログアウトした宿屋の一室だった。
周りに人もいないため、ちょうどいいので俺はそのまま確認作業に入る。
「コレをこうセットして…よし出来た」
俺は自身の装備を弄っては変えを繰り返す。
側から見たら何をやってるんだと思われかねない行動は人目に付かないところで行うに限る。
「さて、俺の予想通りなら…《クイックセット》A!よし、成功だな」
全てを確認するために俺はA〜Jまで登録したセット内容とジョブを確認していく。
俺が確認したかったのはゲーム開始時に取得した3つ目のスキル、《クイックセット》の使い勝手だ。
《クイックセット》の効果はあらかじめセットしていた装備をスロットに登録しておく事で瞬時に装備を切り替えたりする事が出来るスキルだ。
装備に限らず、よく使うアイテムだったりスキルなんかもこの《クイックセット》に登録しておく事で瞬時に使える、俺的には大変便利な機能だ。
俺は最初から【生産職】でのソロプレイを見越していたため、【戦闘職】以外の全ての職を遊ぶつもりでいた。
この『アースガルズ・オンライン』のシステムではその時に装備しているメイン武器でジョブが変わる。
【戦闘職】で例えるなら槍を装備していれば【槍術師】、剣を装備していれば【剣術師】といった具合である。
【生産職】や【採取職】の場合は武器が道具に変わるだけで理屈としては同じ事だ。
だが、ジョブを変えるためだけに装備し直すのは時間の無駄でしか無いと思っていたが、選択出来るスキルの中に、この問題を解消出来るであろうおあつらえ向きなスキル《クイックセット》を見つけたのだ。
本来の使い方としては、【戦闘職】が使うスキルが膨大なため、それを補うようなお助けスキル的な扱いだったようだが、試してみたら装備もセットする事が出来た。
そうなれば、各ジョブの装備をそれぞれ登録しておけばジョブチェンジが容易になるのでは?という仮説だったのだが、今の検証でそれが可能だという事が判明したのだった。
「上手くいって良かった…全ジョブを取ったところで装備変更に時間がかかってたら意味ないしな…」
シュワンという音と共に【生産職】で一番レベルの高い【錬金術師】の装備に切り替える。
レシピを見ていたら気になるアイテムがあったため、俺は雪菜先輩との待ち合わせの時間までそのアイテムを製作し続けたのだった。
そして待ち合わせの夜8時前
俺は指定された中央広間にやって来た。
流石にこの時間になるとログインして来るプレイヤーが多くなっていてかなりの人混み状態となっている。
そんな中、俺はすれ違う人の頭上を見ながら目的の人物を探していく。
設定次第で消せるのだが、キャラの名前が頭上に表示されるのだ。
プレイヤーとNPCの違いは名前の色で判別する事が出来る。
プレイヤーは水色、NPCは黄緑、敵対勢は赤といった感じだな。
俺がきょろきょろとしていると、不意にローブの袖口をちょんちょんと引っ張られる。
そちらに視線を向けるとボーッとした表情、髪の毛の色は鮮やかな水色でリアルとは違うが見知った人物がこちらを見上げていた。
頭上に表記されている名前は『スノウ』
うん。
このアバターは間違いなく雪菜先輩だな。
「こんばんわ…こっちでははじめまして…」
「どうも、さっきぶりですね。お待たせしてすいません」
「大丈夫。私もさっき来たばかりだから」
お互い簡単な挨拶を済ませると約束通りフレンド登録を行ったが、人が増えてきたため適当に落ち着ける場所に移動してきた。
「いやぁ、すごい人の数ですね…昼間はもっと少なかったのに」
「サービス開始初日だし、社会人の人もログインして来てるから仕方無い」
「それもそうですね。その格好、【料理師】でしたね」
「うん、そう。ゲームだけどなかなか楽しい」
「あぁ分かります。割とリアルで料理するのと変わらないとこありますからね」
「ん。あれ?り、じゃなかった…アース君も【料理師】取ったの?でもその格好は【錬金術師】。知ったかぶりはいくない」
「だけじゃ無いですよ〜?まぁ見ててくださいね?」
雪菜先輩ことスノウさんは首を傾げている。
俺は周りに誰もいないことを確認すると《クイックセット》で早変わりしていった。
するとスノウさんは目まぐるしく一瞬で変わっていく俺のジョブを見て目を白黒させていた。
「何…今の…どうやったの?」
「《クイックセット》っていうスキルの応用してみたら出来ましたね」
「なるほど…というかアース君、もしかしなくても取ったジョブって…」
「【生産職】、【採取職】の全部ですね」
「………」
スノウさんは口をぽかーんと開けて驚いていた。
「やっぱりアース君は変だね」
「いきなりですね!?」
いきなり罵って来るとか…
特殊な人種の方々にとってはご褒美なんだろうが、俺にそういった趣味はない!
「何か変なことしてますかね?」
「普通はそんな遊び方とかサービス開始初日でそんなこと考えつかない」
言われてみればそうなのか?
でもちょっと頭を捻って考えれば誰でも思いつくもんじゃないのか?
俺が納得出来ない様子で首を傾げているとスノウさんは追い打ちをかけて来た。
「アース君はもっと色々と自覚したほうがいいと思う。むしろしないとダメ」
酷い言われようですね…
軽く凹みそうだ…
「そんなアース君にコレをプレゼント」
「どう繋げればプレゼントって話に…これは?」
「『クッキー』。さっき製作で作った」
「いいんですか?」
「晩御飯のお礼」
「あぁ…そういう事ならいただきます。気にしなくて良かったのに」
「そうはいかない。私の気が済まない」
「そういうもんですか」
「そういうもんです」
少しだけ見つめあってどちらからともなく笑い合う。
「じゃあありがたく受け取っておきますね」
「ん。苦しゅうない」
いきなり変な言葉遣いになるのは驚くのでやめていただきたいんだが、これもスノウさんなりの気遣いなんだろうな。
そうして暫くスノウさんと【生産職】についてのあれやこれやを話していたら、不意に後ろから名前を呼ばれた。
「アース!やっと見つけたぁぁぁ!!」
声の聞こえた方に振り返ると、こちらを指差して猛ダッシュしてくる槍を背中に携えた女の子がいた。
近付いてくるにつれてそれが誰なのか分かった。
こちらも髪の毛の色はリアルと違い、燃えるような赤色だったが見間違いようがない。
それはこちらでは『夜子』と名前をもじっていた幼馴染の亜子であった。
美少女に囲まれてくとかどんな…(嫉
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