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私の執着心、知りませんか  作者: 倉戸 樹杏
8/14

私とデート当日

「出掛けるんでしょ?はい、これ」


土曜日。デート当日。

朝食を食べている私にママはお金を渡してきた。


「どうしたの?」


「昨日の夜、帰ってきたパパに紗菜が出掛けるからって軍資金ねだったの。1人だけあげないのも不公平じゃない」


「珍しいね」


パパは私たちに甘い。でも、それを知っているからこそ、おねえは滅多におねだりをしない筈。


「眞菜がデートするからじゃない?」


ママがさらりと言った言葉に目を見開く。


「秋人と環菜がベラベラ喋ってたよ。パパは仕事行った後だったから口止めしておいた」


そういえば、口止めするのを忘れていた。おねえに彼氏が出来た時のことを思い出してうんざりする。


「私ももう出るから。今日は夕方まで仕事だけど、3人とも帰ってくる時間は分かんないから連れてくるのはおすすめしないよ」


「連れてこないよ」


「あ、そう?」


ママはそこで会話を切り上げると、荷物を持ってリビングを出ようとする。


「戸締まりはしっかりしてってね」


「はーい」


ガチャンとドアの閉まる音がして、家の中が静かになる。おねえ達はもう出掛けたみたいだ。

私もそろそろ行かなければ。



ーーーーーー



待ち合わせ場所につくと、相原は既にいた。植え込みの縁に座ってスマホを弄ってたが、私に気付くと軽く手を挙げる。いつもの相原だ。


「おはよう」


「おはよう。人ヤバいな」


「駅にこんなに人いるの初めて見たよ」


「俺も」


雑談しながら駅ビルに向かって歩こうとすると、相原は手を「ん」と私に向かって出す。


「何」


「繋ぐから、手」


昨日は私に許可をとったのに、今日は決定事項らしい。まあいいかと手を繋ぐと、するっと組み替えられていわゆる恋人繋ぎになった。思わず、相原の顔を見上げる。


「何?」


「…いや」


なんでもなさそうに聞かれたので、私もなんでもないと言うしかない。しっかりと握られた手の硬い感触が、昨日よりもはっきりと分かる。


「まずさ、1階から回って、気になったところを見てく感じでどう?」


相原が歩きだしたので私も足を踏み出す。


「いいよ。でも1階って惣菜とかじゃないの?」


「何が入ってるか見てみたくね?」


「分かる」


会話は相変わらずいつもと何も変わらない。ただ、繋いだ手がこれはデートなのだと常に私に気付かせ続けている。そんな奇妙な状態のまま、私と相原のデートは始まった。

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