私と弟妹
「おねえ、デートってお洒落しなきゃいけないの?」
「普通でいいよ」
結局その夜、おねえの部屋を訪問して相談することにした。散々悩んだ問題は、スマホを弄ったままおねえにぶった斬られた。こっちを見ることすらしない。そんな程度の問題だったのかと若干遠い目になる。
「眞菜ねえデート?」
「えー!」
秋人と環菜がドアから顔を出す。環奈はなんだか不満げにしている。なんでだ。
「ほら、中学生は寝る時間だよ」
「ちょっと紗菜ねえ、まだ9時半だよ!」
「子供扱いしないでくださーい!」
「中1なんてまだまだ子供だわ」
しっしっと手を振って散らそうとするおねえに、二人が「横暴だー!」と騒ぐ。中学生になったってこの間まで小学生。顔は似てないけど双子だからか、仕草は似ているし息もぴったりだ。可愛い。
「眞菜ねえ、ほんとに明日デートなの?」
環菜がしょんぼりと私に聞いてくる。
「うん。なんかあった?」
「駅ビルがオープンセールだから、一緒に行って欲しかった」
中1とはいえ、女の子。やっぱり気になったんだろう。
「ママに、すごい人が多くなるから友達とだけでいっちゃだめって。でも日曜は予定あるし」
「俺も。フードコート見たい!」
弟妹の頼みになんとかならないかとちょっと考える。いや、相原の約束が先だったのにそれは人としてどうだろう。でも、数時間遅くならないか…?
悩んでると、おねえが私のおでこをパンとはたいた。
「いった」
「彼氏との約束が先なのに何迷ってんの」
おねえが呆れたように言う。続けて、スマホを置くと今度は弟妹に言った。
「私が連れて行くから。それでいいね?」
「うん!」
「やったー!」
「じゃあ、早く寝な」
大喜びの二人はそれぞれ「おやすみー」と上機嫌に挨拶して出ていく。
「おねえ、ありがとう」
「まだ中学生って言ったけどさ、もう中学生なんよ。あんたも秋人と環菜を優先するの大概にしなよ」
それは分かっているけどなかなか染み付いたものは変えられない。頷いて私も自分の部屋に戻ることにする。厳しい言葉とちぐはぐな、おねえの少し申し訳なさそうな顔がしばらく消えなかった。