私と約束
「手、繋いでいい?」
「あと3分くらいでバス停だけど」
「まあ、そうなんだけどさ」
いいのか。まあ、断る理由はない。
「いいよ」
「いいのかよ」
なんだこいつ。断って欲しかったのか?
と思っている間に手は繋がれていた。大きくて、固い。
「男と手繋ぎなれてる?」
「弟いるし」
「弟と同じかよ」
そう言って相原はまた笑う。
機嫌いいな、こいつ。弟と同じなわけないだろう。中1だぞ。こんなにゴツゴツしてはいない。違いすぎてちょっと動揺だってしてるのに。意識して普通にしているんだ。
「明日さ、土曜じゃん。どっか行かね?」
「いいよ。どこ行く?」
「駅ビルの改装終わったじゃん?そこ適当に見るのは?」
「いいね。じゃあ、みんなにも連絡しとくわ。何時にする?」
そう言ってスマホを取り出すと、繋いでいた手を痛いくらいに強く握られた。
「いった!何?!」
「あ、ごめん」
悲鳴をあげるとすぐに手は緩められたが、相原はじっと私を見て、溜め息を小さくついた。
「何」
「明日のデート、11時。ここで。」
デート。つまり、2人。
それをしっかりと認識したと同時に、手はするりと離れていった。いつの間にか駅のバス停だ。
「じゃあな」
そう言って丁度停まっていたバスに乗り込む相原に、私は
「あ、うん」
という全く間抜けな言葉しか返せなかった。
デート。聞いたことはある。ドラマとか漫画でも見たことはある。ただ、実際どんなものかなんて分からない。
駅から家までの10分ほど。頭を抱えて帰る羽目になった。