私と報告
「付き合ったってことは彼氏なんよ。特別扱いなの。出来る?」
ため息の後、おねえは私にそう言った。
特別扱い…私には今まで無かったもの。よく分からないけど、今日の今日で「やっぱりやめる」は失礼すぎる。それに、やっぱり、初めての彼氏にちょっとウキウキしている自分もいる。
たっぷり考えて、おねえに答えた。
「やってみる」
「そうしな」
おねえはちょっと笑ってそう言ってくれた。
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初めての彼氏、相原。
フルネームは確認したところ、相原 浩平。
同じクラスの出席番号1番。
吹奏楽部に入っていて、去年の文化祭でラッパを吹いていたのを見た。
それ以外は特に目立ったところもない、顔も悪くもないがイケメンでも無い男子高生だと思う。
それが私の持つ、彼氏の情報の全てだ。
…いや、ちょっと待って。もうちょっとなんか無いのか?
流石にさ、えー。
と、登校してから席で相原の情報を整理し、その情報量の少なさに自分にちょっと引いてると、別のクラスの友達の瑛子と芽依が来た。
二人とも小学校からの付き合いで、瑛子は大人っぽくて芽依はゆるふわ系だ。綺麗と可愛いの属性は同性として羨ましい。
「おはよう」
「おはよう」
「ところでさ」
瑛子と芽依が顔を近付けてくる。
「相原」
「どうだった?」
びっくりした。
「知ってたの?」
質問に質問で返すと、二人は顔を離してにやーっと笑う。
知ってたな。
「はっきりとはねー。でもそうだったんでしょ?」
瑛子はガタガタと前の席の椅子を引いて勝手に座りながら言った。にっこり笑うその顔の美人さに、瑛子の彼氏が羨ましい。
「返事したの?」
隣に立ったままの芽依もにっこり笑う。多分その後に「教えてくれるんでしょ?」と続く、はず。
「…付き合うことになった」
その瞬間、二人の笑顔が満開になる。何これ、二人とも可愛すぎない?
「席につけー」
そこで先生が入ってきたので、二人ともしぶしぶ自分のクラスに戻る。昼に一緒に食べる約束をしてから。
それを見送って、先生の方に向き直ると、いつの間に来てたのか相原の後ろ姿が見えた。