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盾の使い方を学ぼう

力強いご支援により様々な数字が倍になりました!(ありがたいです!)


……で、毎日更新してみたくなりました。ではでは!

 


「きゃ~♪えいっ!!」


 ……ガゴッ、と鈍い音を立ててスパイクがキュビの盾に食い込み派手に貫通する。尖端が盾の裏側に飛び出し危うく構えるキュビの腕を串刺しにする所であったので……彼女は恐怖に駆られて盾を捻ってトゲを無理矢理に外すと大慌てで走り出し、距離を取る。


「ひょええぇ~っ!?エミュちゃん無理ムリむりっ!!」


 叫びながら振り返ると、ブンブンと遠心力を利用しながら回転しつつ全身を使い、モルゲンシュテルンの軌道を安定させながら近付くエミュの姿が視界に入り……


「えーいっ!!キュビさんしっかり受け止めてくださいっ!!」


 ……ガズンッ、と再びスパイクがキュビへと襲い掛かる。今度は言われていた通りに当たる寸前、肘から先を跳ね上げてタイミングを合わせたので、軌道を逸らせて突き刺さることは免れたが……


「ぎゃーっ!!ザクザクッて言ったよ!?こんな盾じゃ直ぐにボロボロになっちゃうからぁ~!!」


 確かに彼女が装備した鞣し革のバックラーは軽くて扱い易かったが、相手が持つ物があのような刺突に秀でた鈍器では、全く用を為さなかった。



 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




「……ほらな?確かにキュビの体格では持ち易くて軽い方が魅力的だろうけど、戦場ではどんな武器が用いられるか判らないんだぞ?盾選びが重要だと判ったかな?」


 教師役が板に付いてきたエンリケが諭すが、しかし当のキュビは自分の体格では持てる盾の種類が限られている現状に変わりはなかった。


「キュビ!こっちの盾持つ。これ、鉄板補強。重さそんなじゃない!」


 こちらは白いワンピースにタイトスカート姿の相変わらずなツヴァイだが、手にした強化版のミドルシールドを振り回しながらキュビに手渡す。


「……うーん、重さは確かに持てなくもないけど……よいしょ……まぁ、何とかなるかなぁ……?」


「キュビさん!それじゃ、三回目で~す!!」


 ブンブンと片手で双円方を描きながら、巧みに凶悪な鈍器を振り回していたエミュは停めることなく、手にしたモルゲンシュテルンを残すように身体の捻りを急加速させ、その勢いを肩から肘、そして手首からモルゲンシュテルンへと繋げながら先端部を一気に加速させて……


「……えいっ!!」


 ……ガキュュンッ!!


 数本のスパイクが火花を出しながら鋼鉄の板の表面を削りつつ、軌道を逸らされてキュビの身体を傷付けずに無事に通過した。



「……ひいいいいいぃーっ!!死ぬ……マジで死ぬよ!?あんなの食らったらソーテツさんだって先生だって、イチコロでしょーがッ!!」


「うん、死ぬな」


「……無理に決まってるだろ?赤龍人って言っても不死身じゃないんだからよ……」


 二人は顔を見合せながら、うんうんと頷きつつ当然とばかりに肯定した。




「……だったら私なら即死の倍付けじゃないか~ッ!!」


 キュビは意味不明の言葉を言いつつ、しかし繰り返される打撃を次第に往なして剃らす遣り方を身体に染み込ませていった。



 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




「基本的な防御のやり方を教えるぞ~!」


 そう言いながら校舎の外で三人は用意された様々な盾を選び、敵役のエミュが振るうモルゲンシュテルンをどう捌くかを学んで居た……のだが、


 紺色の制服(この学校の為に用意された)に身を包んだエミュは、長くカールした髪の毛を髪飾りで纏めて編み上げて、動き易いように腕捲りし足元も長めの膝上まである靴下を穿き、見た目はやはり育ちの良さそうな彼女らしく可愛らしかった。


 ……と、姿の見目麗しさは何時もと変わらないのだが、


「うふふ♪……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!!」


 そう言いながら愛用のモルちゃん(命名・エミュ)を振りかざす姿はしかし、さながら戦場に降り立つバルキュリアの様だった……。



「……しかし、エミュってあの見た目と裏腹にどうして軽々と振り回せるんだ?……身体強化の呪符でも使ってるのか?」


 神妙な顔(見た目では判断出来ないが)で呟くソーテツに、多少は彼女の身の上に詳しいエンリケが答える。


「……アドミラル家ってのは、ゴルダレオス王国の【軍人家系】じゃ五本の指に入る名家なんだってさ。その三女のエミュレタリアがあの子。三姉妹の中で最も優秀な、武人の才能を受け継いでるって噂だな」


「道理で……ちゃんと手首に紐を回しながら、か弱い女の握力でも易々とあんな物を振り回して打ち付けるんだからな。……最初は【鬼人(オーガ)】の娘かと思って額に角が有るか見ちまったぞ?」


 二人は感心しながらキュビとエミュのやり取りを眺めていたが、どうやら少しは盾の使い方を理解出来たのか、硬い物が激しく盾を叩く音の頻度は目に見えて減り、代わりに鈍く掠めるような擦過音が増えていた。


「ひーっ!!ひーっ!!死ぬからっ!!死んじゃうからっ!!」


 言いながら必死になって盾を斜めに構えて回避に専念するキュビの姿は、しかし最初とは違い脚をしっかりと踏み締め、柔らかく上半身を使い空いている片手を軽く添えながら、モルゲンシュテルンの猛攻を凌いでいた。


「それにしてもこっちはこっちで……ただのもやしチビっ子だと思ってたが、盾に振り回されず頑張ってるな……さて、と……」


 エンリケは感心しながらツヴァイに近付くと、一本の短槍を受け取りソーテツへと投げて寄越す。


「……先生、なんだいこれは……」


「槍だよ。見稽古も大事だが、やっぱり身体で覚えなきゃいかんだろ?生徒なんだからな」


 エンリケは小振りなカイトシールドを手に持つと、軽く足元を踏み締めてから空いた方の手を使い招きながら、


「……さぁ、戦闘職なんだろ?短槍の扱い位は軽いもんだろうから、その気になって突いてみな」


「……おやまぁ……先生らしくて熱心だな?……それじゃ、お言葉に甘えて……」


 ソーテツは片手に持った短槍を腰の後ろに水平にして構え、



「……殺してしまったら、卒業ってことで宜しいですか……先生様?」


「心配いらんよ、俺の仕事は【先に生き教え諭す】だからな」


 エンリケはソーテツの辛辣な冗談をサラリと受け流し、カイトシールドを前に突き出して、空いた片手を軽く握り締めた。





次回もマイペースな展開ですが、お楽しみに。最新話でのみ評価ポイント加算出来ないそうなので、お一つ宜しくです。感想には渾身のお返事を……!

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