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恋の予感……?

週末は多忙+Wi-Fi導入のゴタゴタで執筆が遠退きました(言い訳)。



 試合を終えたキュビは、自陣へと帰ろうと踵を返したのだが、背後から呼び止められて振り向いた。


 「……あ、お疲れ様です。大丈夫?怪我とかしなかった?」


 「はい?……んと、別に大丈夫です……あ、ありがとうございました!」


 対戦相手のコーデリアに言葉を掛けられて、一瞬身を固くしてしまったが、良く良く考えてみると、別に自分と相手にいがみ合う理由も何もないのである。これはあくまで練習試合。お互いの勝ち負けに遺恨が残る訳でもないし、また同じような機会があったら再戦するかもしれないのだ。


 (……それに、良く見たらやっぱりイイ男……かもしれないな♪)


 キュビはこの時まで良く理解していなかったが、相手は近衛兵団の副団長、つまり二番目に偉いヒトなのである。ついでにやや癖っ毛の赤髪で、やや気だるげな垂れ気味の目元以外はなかなか端正な顔立ちの青年だった。


 「そうですか、それは良かった……あ、次の対戦が始まるから早く立ち退きましょう!」


 「……は?あー、確かに!!……それじゃ、え~っと出口はあっちかな?」


 そんな世間話をしながら、キュビは試合会場と観覧席の区切りとなる塀沿いにやや進むと、目の前に扉が見えてきたのでそちらに行こうとしたのだが……、


 「あ……ここから先は近衛兵団側だから、貴女方は向こう側だよ?」


 「ありゃっ!?……し、失礼しましたぁ!!」


 言いながら恥ずかしくなりその場を後にしようとするキュビだったが、そんな彼女にコーデリアは、


 「いや、しかしさっきのは凄かったよ!実際の戦場でやられたら打ち負かされたのはこっちの方だったよ、きっとね……」


 と、キュビを称えたのである。そして自分達に残された時間が後僅かだと悟り、そこに付け加えてこう言ったのである。


 「……それと、その戦闘礼装(バトル・ドレス)、すごく似合ってるよ?」


 それだけ言い残し、コーデリアは手を振って自陣へと戻って行った。



 (……あれ?……もしかしてあの人、やっぱり……私に気があるのかな?)


 そう思うとキュビは急に身体中がこそばゆくなり、何だか居ても立ってもいられなくなり走って自陣へと戻っていった。


 ……ほんの少しだけ、スリットの端の捲れを気にしながら……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……別に舐めてるから短刀だって訳じゃないぜ?俺としては充分に敬意を払った上での選択ってだけだからさ……」


 相対するアダムと言う近衛兵団の兵士を前にして、ソーテツは少しだけ困ったように身を揺らしてから両手を上に軽く差し上げた。対峙するアダムは両手剣(勿論刃は鈍らせてある)を構えたまま、互いの立ち位置に指定された線の後ろでソーテツを睨み付けている。


 試合開始前、互いの立ち位置に揃った時に審判役から「……武器を忘れてきた訳じゃないよな?」と疑われて苦笑いしながら説明したのだが、それでも納得して貰えなかったのである。


 「……どちらにせよ、この場に足を踏み入れたのなら……()()()()()()()()()()()()


 しぶしぶ離れていった審判役の姿を見送った後、アダムは両手剣を構えたまま、ソーテツに語り掛ける。


 「フム……二本足で歩き始めてから今日まで、屋根の下で寝た回数よりも剣を交えた回数の方が多い生き方をしてきたからなぁ……素人ではなかろうが、」


 軽い調子で応じつつ、ソーテツは何時もの黒装束のまま防具らしい物を身に付けぬまま、左手を前に突き出し右手で拳を握り締め、左足を軽く前に出す構えを取って動きを止めて、


 「……個体数の少ない種族が多民族間で発言権を失わぬ為に、望まぬ戦いも強いられてきた竜人種の戦い方って奴を……その眼で確かめてみるか?」


 「……いいだろう、此方も剣で身を興そうと一度は夢見た事も有る。噂に聞いた【竜転じて龍と化す】稀少種の武芸者がどれだけやるのか、興味はあるからな……」


 アダムの言葉に一瞬だけ沈黙したソーテツだったが、ふぅ……と溜め息を吐いた後の彼の言葉は深刻さの欠片もないものだった。


「……そりゃ当然、ってもんか……練習試合とはいえ、王の足元で剣を振り回すんだから相手のことは調べるよな……こちらこそ宜しく頼むぜ?元【第一王子の一番槍】さんよ?」


 お互いにチクリと刺さる言葉の応酬を交えつつ、似た者同士の試合は始まった。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 キュビがほんの少しだけ迷いながら自陣の観覧席に到着すると、先に試合を終えていたエミュが平服(とは言え見た目とは裏腹に高価な生地なのだろう)に着替えて彼女を出迎えてくれる。 


 「キュビさん!お疲れ様です!……その、残念でしたね……まさか反則取られるなんて……」


 エミュの労いを聞きながら、差し出された濡れタオルで汗を拭いつつ一息つくと、急に身体の筋肉が強張り部分的な痛みを意識した。声をあげる程でも無いし大した事も無いと思っていたが、ふと顔を上げた瞬間にエミュの顔が目の前にあって慌ててしまう。


 「……どこか痛みますか?夢中になっている時は感じなくても、気が抜けた瞬間に気絶してしまう事も良く有るんですよ?」


 どうやら言葉には出していなくても顔に出ていたようだ。自らの身体の各所を確認してみると、膝の脇や肘辺りに軽い打ち身が有った。此処もか此方もか、と見ているとエミュに「……そのようなあられもない姿は……異性に見せられませんよ?」と呆れられたので周囲を見ると、確かに自分達以外に人は居ないけれど腰の高さの仕切りのみの遮蔽物しかなく、ベンチに腰掛けながら足を開いて脹ら脛等を触っていたのである。まぁ殆ど丸見えだったろう……。


 「あ、あは!あははははは!……いや~何とも無くてよかったなぁ~♪いや、まぁ何とも無かった訳じゃないけど……気持ち的に……」


 そう独りごちながら、そのままグッタリとベンチの上に力なく寝転がってしまう。勿論その姿は反対側の対戦相手席から良く見えていたけれど、最早キュビはそんな事はお構い無しだった。



 「……キュビさん!ソーテツさんの試合が始まってますよ!!」


 「……ふにゃ?……あ、私……寝てた?……って、いきなり何あれッ!?」


 いつの間にか居眠りしていたキュビが揺り動かされて目覚めると、離れた場所で繰り広げられていた戦いは……



 ……人の身から放たれたとは信じられない程の剣風と、

 ……人外の身とは言えど怒濤の勢いで繰り出される連撃の嵐を、


 ……至近距離で互いに繰り出し合う、狂気と紙一重の様相だった……。



この作品はヒューマンドラマなので、喜怒哀楽全てを書いていきます。次回は……疑似バトル回(笑)。どれになるんだ?

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