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練習試合(運動会?)

……昔から裸の付き合い、等と言いますが、生徒の三人もそれなりに親睦を深めたようです。



 夕刻の入浴を済ませた三人(エミュはややふらつきながらだったが)は、ほこほこと心地好い湯気を漂わせながら食堂へと集まった。エミュを先に座らせて手拭いで扇ぐキュビに、ソーテツは無言で冷たい水を手渡し、それはキュビからエミュへと渡されていく。


 冷たい水に少しづつ口を付けたエミュは、先程までの頭のふらつく状態は次第に治まり、何とか持ち直せたようである。


 「……あの、お見苦しい姿を見せてしまい……本当に申し訳ありません……」


 「いーっての……まぁ、そっちのエロ猿よりはまともだってだけだ、心配するなって」


 「だ、誰がエロ猿なのよっ!!……こんの冷血ハチュー類っ!!」


 「あんだとぉっ!?てめコラやんのかドちびっ子がぁ!?」


 寝間着姿のキュビは魔導結印の重ね掛けを始め、ソーテツはナイトキャップを被ったまま近くにあったフォーク二本を手に取り構えたのだが……



 「……ソーテツ、キュビ……食堂暴れる、晩御飯抜き……よ?」


 彼等の背後から今夜のメインディッシュを持ったエプロン姿のツヴァイが、冷ややかな眼差しで射抜くように二人を牽制すると、双方は空腹に負けて静かにやぁやぁ流石ですな、と互いを讃えながら手を差し出し握手した……これぞ大人の対応である。勿論、エミュはこの騒動の当事者として最初から見られて居なかった為、御咎め無しである。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……みんな、自分達の席に着く!……お皿、いいか?」


 ツヴァイはそう言うと、一番手前の上座に座るエンリケの皿に料理と添え物を手早く配膳し、続けて年長者(たぶん)のソーテツ、年上のキュビ、年下のエミュ、そして自分の皿へと料理を配り終えてから席に座り、


 「……それでは、今夜もお疲れ様!いただきます!!」


 「「「はい、いただきますっ!!」」」


 そう言いながら全員が一斉に料理へと手を伸ばす。キュビはウキウキしながら目の前に鎮座する料理へと改めて向き直った。


 黄金色の衣を(まと)い切り分けられた鶏肉は、その断面から僅かに肉汁を滴らせながらキュビのお皿へ、どでん!!と載せられている。


 待ちわびたその一角をナイフで切り、フォークを使い口に運ぶと……サクッとした薄い衣を噛み締める度に、揚げ油の香ばしさと共に鶏肉の旨味がジュッ、と滲み出して口の中一杯に広がり……


 ……同時に上に載せたエシャロット入りの玉子のタルタルソースが酸味とクセの有る風味を与え、シャクシャクという歯応えも兼ね備えながら嚥下を促すように舌と歯茎を刺激して止まないのである。


 「むわっ!!もれはものむごぐおいじいっ!!はむっ!!むもむも~♪」


 「もう!キュビさんったら……喋りながら食べちゃダメですよ?」


 呆れながら指摘するエミュではあったが、やはり彼女も目の前の《鶏もも肉のナンバン仕立て》に対する期待度は高まる一方であり、それは毎度外さない料理人のツヴァイだからこそ、なのだけど。



 恍惚の表情で、もむもむ♪と美味しそうに咀嚼するキュビを横目にエミュもたっぷりと鶏モモ肉にタルタルソース(いったい何がタルタルなのかはツヴァイも判らないらしい)を載せてから、はしたないと思いながらも一息に口の中へと送り込み、


 「……んむんむ……ふむぅ♪…………あっ、これはいけません……あぁ……!!」


 ……何故か一人でイヤイヤをしながら溜め息を吐いたり、悶えたり悦んだりと嬉しそうに食べ進めるエミュ達の姿に、ツヴァイは腕組みしつつ満足げに頷き、


 「いい肉食べる、いい身体なる!……エミュ、キュビ、サラダも食べる!」


 大きな木製のボウルに入った根菜とレタスのサラダも、二人の近くに有る陶磁器に取り分けられ、肉食偏重派の彼等にしてみれば、サラダは後で纏めて取りますからね?とやや除外対象にされていたが、そのサラダには鶏胸肉の生ハム仕立てが載っていて、結局はそれらも捕食対象として認識されました……。


 「はむっ!!もっちゃもっちゃ……くううぅ~♪ツヴァイさん、あんた……何てことしてくれちゃったんですかっ!?」


 「もう……キュビさん!!喋りながら食べちゃいけませんっ!!」


 「……うるせぇんだよ、このメス猿っ!!」


 「むきぃ~ッ!!猿じゃないもんっ!!」


きゃーきゃー、わーわー、と騒がしい面々の騒々しい食卓は、こうして今夜も続くのでした。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 ……が、その夜は食事だけでは終わらなかったのである。


 「……さて、食事しながらで良いから、みんな聞いてくれ……」


 いつになく真面目な表情で、エンリケが言った言葉は一同の興味を料理から引き剥がすだけの威力を持っていた。



 「……我が王国の近衛兵団に打診していた交流練習試合に、先方から返事が届いた。……()()()()()()()()()()()()()……と、いうことだ……つまり、」




 「……次は、対人戦の熟練者、から教わっている雛鳥だが……まぁ、強いぞ?」


 そう言うとエンリケは、ニヤリと笑った。


そして、次回から新章!!お楽しみに!

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