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遠足

毎日更新です。

 


「ふああああぁ~♪……いーいぃ天気っ!!」


 キュビは周囲の状況を意識し、出来るだけ明るく振る舞う。


 軽く伸びをしながら、幌馬車の開口部から後ろを眺めると、付かず離れずの距離を保ちながら二頭の騎馬が見え隠れしていた……。


「……遠足なのに、なーんでソーテツさんとツヴァイさんは馬上で別行動なんでしょ~かねぇ~?」


「……まぁ、細かいことは気にするな」



 キュビが振り返ると、後方の二騎は距離を保つ為なのかいつの間にか姿を消していた。


「……遠足なのに、なーんで馬車の中に中身が干し草の木箱が沢山置いてあるんでしょ~かねぇ~?」


「……まぁ、細かいことは気にするな」



「……気になりますよっ!!何で夜明け前に出発して、わざとらしく人里離れた道のみを選んで、おまけにあーやって途中から二人が先回りするルートを選んで、ついでに目立ち易い大きな街は迂回しないで立ち寄るんですか!?」


「……そりゃ、()()()()()()()()()()()()()()()に決まってるだろ?」


「……ですよねぇ……じゃないですから!!遠足って聞いてホンの少しだけ期待した私が大馬鹿なんですよ、えぇえぇ!!」



 そこまでキュビとやり取りしていたエンリケは、立ち上がって歩み寄り満足げに頷きながらキュビの肩をポン、と叩き、


「……判って貰えて先生、凄く嬉しいよ……!」


「いーえ!判ってませんよ!?いや判ってたまるもんですか!!」


 頭から湯気を出し兼ねない勢いで食って掛かっていたキュビだったが、結局こうして後ろからの襲撃に備えて見張りをしているのである。まぁ有る意味……能天気である。



 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「はぁ~あわわぁ……眠い……エミュは眠くないの?」


「私ですか?……緊張してるから眠くはないです……」


 緊張感の欠片もないキュビに対して馬車の席の端にちょこんと座り、片手に持った愛用の鈍器(モルゲンシュテルン)を握り締めるエミュ。


「まーそー堅くならなくても平気だよ~?襲撃が無い場合もあるからさぁ~」


「……そうならいいんですが……いえ、無ければ実践訓練……いや、実戦での経験にならないですから……」


 じっ、と手にした鈍器を見つめ、眼を瞑るエミュ。長い睫毛が僅かに震えているのに気付いたキュビが声を掛けて励まそうとしたのだが、ゆっくりと眼を開きながらキュビを見て、


「……御心配を掛けてしまって申し訳有りません。……敵と相対することを不安に思ったのではなく、戦うことにより自分に何が残るのか、そう考えてました」


 そう言った後、いつでも馬車の外に飛び出せるように革鎧に袖を通しながら、キュビに笑顔の目線を送り、


「キュビさんも支度しましょう!……相手の数が判らないなら、自分達に出来ることを精一杯しないといけません!」


 そう言いながら手に持った盾をキュビに手渡すと、エンリケに向かって尋ねる。


「……先生、相手の数などは判っているのですか?」


「まだ人数は判らん。だが規模は十以上五十以下……この辺りに出没する盗賊の最大数より多いことはなかろう……(にわか)仕立ての急(こしら)えで数だけ揃えても愚衆じゃ待ち伏せには向かんだろう」


 緊張の欠片もないエンリケだったが、彼も全く気にしていない訳でもないのだろう。馬車に乗り込む時から被っていた帽子が前後逆なのだと今更気付き、ばつが悪そうにポンと内側から叩いて形を整えて、被り直す。


「先生、その帽子……相当年季が入ってますよね?」


 キュビが珍しそうに眺めるそれは、起毛の裏皮を鞣して縫い合わせた薄茶色。お洒落と言うよりもなんらかの実益だろう、そう思いながら訊いたキュビだったのだが、帰って来たのは意外な言葉だった。



「……年季ね……確かに。まぁ、()()()()()()()()()()()()被ってるんだけどね……」


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