外伝2 アリシアの気持ち2
二部目です。
後半部分ですが前半と比べて結構短くなってしまいましたね。
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そして彼に魔法解除を教えてから小一時間程が経ちました。
人に何かを教えるという事をしたことのなかった私は言葉を選びながらもまず、魔法解除とは何かという説明とその際の魔力を使う際のコツを教えました。
それを聞いた彼は終始良く分かっていなさそうな顔をしていましたが、そんな顔も大変可愛らしかったです。
そうして説明を終えた彼は取り合えず物は試しだと今の今までひたすら魔法解除を唱え続けましたが・・・結果は先に言った通り。
これまでの間、やはりといっていいものか彼の魔法解除は上手く発動していませんでした。
原因は明らかです。
そもそも魔法を扱うのが本職の私が解けないような呪術を彼に解けるとは思いませんし、根本的に魔力不足でしょう。
ちなみにこの一時間程の間、黙って作業していたのかと言われれば否でした。
本来の私ではあり得ない事ですが彼に私の事を教えたりしていたのです。
まぁ教えたと言っても私の名前や年齢、出身に関する取るに足らないような情報ばかりではありましたけど。
それと同じく彼の事も少しだけ聞きました。彼に関しても名前や年齢の事についてが殆どでしたが、どうやら私と彼は同じ歳みたいだというのが分かりました。
とても意外な事実です。
その見た目の幼さから少なくとも私の二つ程下だと勝手に思い込んでいたのです。
しかし・・・同い年だと分かった私は何故か嬉しいと思ってしまいましたが・・・何で嬉しく感じたのでしょう?
さて、そんな彼ですが今現在は余計な会話を挟む事なく何故成功しないのか首を捻っています。・・・この鎖さえ無ければ頭を撫でてあげたくなるような表情ですね。
しかしこんなにも私のために頑張ってくれている彼には悪いのですが恐らくこれ以上やっても時間の無駄でしょう。
いつもでもこうして彼と話していたいという気持ちはありますが終わりの見えない作業に彼を縛るのは余りにも可哀そうです。
そう思った私は、もう諦めなさいという意を込めて口を開きました。
「成功する、しない以前にあなたでは魔力が足りませんよ。魔力ランクはどうせGとかでしょう?」
その際、少し嘲りも入れておきます。
だって素直に「私のためにありがとうございます。でももう私の事は諦めて行ってください」というのは恥ずかしかったから。
つまりは照れ隠しです。
ですが恐らく、解いてあげようと頑張っている最中本人からこんなことを言われればいくら優しい彼とはいえ頑張るのは馬鹿らしくなるでしょう。
彼に傲慢な女に思われるのは少し悲しいですが仕方ありません。
きっと怒るのでしょうね・・・。
私はそう思います。少なくとも私なら憤るので。
しかし返ってきたのは私を責めたり、怒ったりするような言葉ではなく意外な言葉でした。
「え、魔力ランクって何?」
という。
本当に彼は一体何者なのでしょうか。
レベル1と言い張る割にとても強くて。
今さっき会ったばかりの私のために体を張ってくれて。挙句に可愛いなどと言ってくれて。
なのに、この世界の常識すらも知らない彼。
そんな疑問だけが募ります。
彼にそれらの疑問をぶつけたい気持ちもありましたが、一先ず話しが進まないのでそれらの疑問は飲み込み解説をする事にしました。
「あなたはステータスは開けるのでしょう?自分がレベル1だというのは分かっていたみたいですし」
と、解説を始めた私でしたが途中、彼から提案が入ります。
それは彼の事を名前で呼べ、というものでした。
男性を名前で。
・・・恥ずかしいですね。非常に恥ずかしいです。
ですが、呼べというのなら喜んで呼ばせていただくとしましょう。
気を取り直すように顔を左右に振った私は改めて彼――シンさんに話を振ります。
「・・・ではシンさん。ステータスを開いてみてください」
と、そこからは茶々という茶々も入らず、この世界では常識といわれているような説明から魔法の初歩と言われる解説などを行いました。
そして魔力感知に関する事話した際、シンさんは何かを考え込むように顔を下げるといきなり私の事をジーッと見つめ始めます。
いえ、正確には私に巻かれた鎖を見ているのかもしれませんが・・・・落ち着きません。
真剣な表情の彼は非常に格好いいというか・・・、普通に照れてしまいます。
それからどれくらいの時間そうしていたでしょう。
体感的にはとても長く感じましたが、実際はそんなに時間は経っていないかもしれません。
そろそろ恥ずかしさも極限に達してきた頃―――彼は不意に口にしました。
―――魔法解除―――
と。
すると私を縛っていた鎖はまるで最初から存在しなかったかのように砕け散り・・・アッサリと私の身は自由となりました。
余りの展開に思わず「え?」と間の抜けたような声を出してしまいます。
だって、実際にあり得ないような事だったから。
彼はきっと魔力ランクも低いはずで・・・魔法の知識についても初心者そのものでした。
なのに、こんなに簡単に国宝級の魔導具を・・・・。
それだけではなく先程行われた戦闘についても思い出します。
それにレベル1の筈の彼は格上であるはずのベアウルフを圧倒していたあの光景を。
もしかして、私に嘘をついていた?
しかし、話している時の反応からしてそんな兆候はありませんでした。
魔法解除についても長い時間しっぱいし続けていたわけですし。
ではやはり彼は本当のことを言っていてレベル1なのでしょうか・・・?
格上な筈の魔物相手に圧倒できて。
格上な筈の私にすら解除出来ないような魔道具をアッサリと解除する。
そんなレベル1。
もし、本当にそんな人がいるならそんなのは天才だ何だとかいうレベルなんかじゃ・・・
そこで、私は閃きます。
私の知っている常識などでは測ることの出来ないこの人は。いえ、この方はきっと。
天上の方なのだ、と。
身を縛っていた鎖が壊され自由となった私は、それと同時にずっと地の底の奥深くにあったような心までも自由を得たかのような感覚を覚えました。
そして初めて、これまで彼に抱いていた自分自身の気持ちに気付いたのです。
きっと、一目彼を見た時からしていたのでしょう「一目惚れ」というものを。
それはこの世界に生を受けてから初めて抱いた「恋」という感情でした。
そして。
私の知っている常識という殻を次々と打ち破り「奇跡」という名の光を見せてくれた彼に対して今、改めて抱いたその気持ちは。
それはこの世界でいう恋や愛などを超えたもの・・・。
「信仰」なのだということを――――
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後やっぱり章管理したほうがいいんですかね?
暇が出来たらやってみるかな・・・
蛇足ではありますが、この時すでにベアウルフとの戦闘を経たシンはレベル1ではありません。
ですがそれをアリシアが知る由もないのでレベル1というのを強調する形となっております。