1-6 どうやら呪いがかけられているみたいです
というわけで速攻戦闘パートは終了しました。
いや、とっととヒロインパートにいきたかったわけじゃあないんですよ・・・?
いや本当に。
あとタイトル通り後々きちんと女神も出てくるのでご安心を!
次話辺りで改めて主人公やヒロインのステータスが出るかもです
「ッキャンッ!!」
という、何とも犬らしい鳴き声を残して凄まじい速さですっ飛んでいくベアウルフ。
それは真っ先に俺の回し蹴りを受けた奴だった。
「・・・え?」
「ガウッ!?」
そんな光景にやった本人である俺も固まり、最初の一匹と同じようにこちらに近寄っていた二匹もギョッとした様子で固まる。
そしてドガッという鈍い音を響かせると入り口付近の壁にぶつかり止まったベアウルフはそのまま重力に従い地面へと落ちるとそこから起き上がってくる事はなかった。
俺もベアウルフもお互いにその様子を目で追い、そして起き上がってこないベアウルフを数秒見つめた後ゆっくりと視線を戻しお互いの顔を見る。
あれ。
ちょっと待って。
なんか俺、超強くない?
仮にもゴールデンレトリバークラスの生き物を回し蹴りで吹っ飛ばせたこともそうなんだけど・・・。
一撃だぜ?一撃。
それともこの世界ではこれが普通なのか?
「そんな・・・ッレベル1の蹴りで一撃・・・?ありえません・・・」
と、自分のした事に今一現実味がなく首を傾げていた俺だったが後ろから聞こえる少女の声にどうやら普通ではないらしい事が分かる。
これも女神の加護って奴なのかね?
簡単に死んでもらったら困るって言ってたし。
「まぁでも・・・」
何はともあれ。
レベル1の俺でもこの魔物達に十分通用するって事が分かっただけでも大きすぎる収穫だ。
俺は昔習っていた武術の通り、いつでも動けるような構えを取ると先程と同じように警戒したよに唸りながら近寄ってくる様子のない残り二匹のベアウルフに向かって突っ込んでいった。
・・・・・
・・・
・・
「あなたは一体何者何ですか・・・?」
余りにもアッサリとこの世界での初戦闘を終えた俺に、少女から声がかかる。
あれから、残りの二匹もすぐに倒す事ができた。
先に動いたのは俺。
そしてそんな俺に対して釣られるように飛びかかってくるベアウルフ達。
だがステータスのお陰か反射神経、動体視力までも上がっていたらしい俺にはその動きはスローモーションのように見えていた。
二匹同時に飛び掛かってきたベアウルフに対して丁度間に潜り込むと、なーんか殴ったら痛そうだなぁという咄嗟の判断により掌底と呼ばれる部分で一匹の横っ腹を撃ち吹っ飛ばす。
そして真横にいたもう一匹のベアウルフには肘を打ち付けた。
この間僅か数秒の攻防だ。
いや、ベアウルフ達は防ぐことは出来ていなかったので一方的な攻撃といったほうが正しいかもしれない。
それぞれ最初の一匹同様一発で終わった。
ゲームのようにHPバーのようなものがないから完全に息絶えたかはハッキリと分からないものの暫くたってもピクリとも動かず起き上がってくる様子もないため放っておいても恐らく大丈夫だろう。
終わってしまえば、何てことのない戦闘だった。
あれだけ気合を入れたのに恥ずかしい限りである。
そうして一息ついた後、今まで信じられないようなものを見ていたかのように驚愕した表情を浮かべていた少女は一度自らを落ち着かせるように目を瞑るとそう尋ねてきた。
怪訝そうに聞いてくる美少女に対して俺は首を捻る。
「えっと、何者って聞かれたら返答に困るなぁ」
「あなた、レベル1だと私に嘘をついていたのですか?」
「いやいやいや!嘘じゃないよ!本当にレベル1だったって」
「明らかにレベル1の者の動きではないのですが・・・」
そんなこと言われても本当だし・・・。
疑うような視線を向けてくる少女に対して何も言うことが出来ない。
だって俺も分からないんだもんッ
疑うような視線を向けてくる少女と口ごもる俺。
そんな何とも微妙な空気になってしまったので、俺は慌てて話題を変えた。
「そ、それよりさ!君は結局なんでそんな格好になってるの?」
「誤魔化しましたね」
必死な俺の話題振りを一刀両断する少女。
ちょっとは俺の努力もくんでよぉ・・・。
確かに話題を逸らしたのは本当だけどさ。
なんで鎖を巻きつけられた状態でこんなところにいるのかも気になってたんだってマジで。
エロい格好だから非常に眼福ではあるんだけど!
眼福的な意味と話題を逸らしたいう図星をつかれ微妙に視線をズラした俺に少女はハァ、と息を吐いた。
「・・・まぁいいです。それで?私がどうしてこうなっているか、ですか?」
「そうそう!」
「それは・・・趣味です」
「マジですかッ!?」
喜べ男子諸君!!
桃源郷はここにあったぞッ
思ってもみなかった少女の発言に思わず拳を天に突き上げる俺。
人はこれをガッツポーズという。
そんな俺とは対照的にとても冷静な少女。
ゴミでも見るような冷たい目で俺を見た少女は一言。
「嘘に決まってるでしょう。バカなんですか」
ですよねー。
一瞬で素に戻る俺。
「・・・それじゃ本当は何なの?」
「私の余りの美しさに発情した男達がこんな風に・・・」
「なんて酷いことを!!全くナイスな奴らだぜ!」
「最低ですね」
「ごめんなさい」
って一向に話が進まねぇええええええ。
いや乗っちゃう俺も俺なんだけどさッ。
このままでは埒が明かないと判断した俺は、これ以上この少女のノリには合わせまいと気を引き締める。
「あの、それで本当の所はどうなんでしょう?」
「・・・・まぁ色々あってここに封印されてるんですよ。―――やはり私の余りの美しさに」」
「封印?」
同じことを繰り返し言おうとしていた少女の言葉を遮り思わず聞き返す。
その事にムッとした表情を浮かべ「最後まで聞かないとはなんて失礼な人なんでしょう」と言っていたが無視する事にした。
「封印ってどういう事だ?」
「抗議まで無視ですか。いい度胸です。表に出なさい。私は出られませんが」
「・・・封印ってどういう事なんですか。お願いします教えてください」
余りの話の進まなさに思わず嘆願する。
そんな情けない俺の様子を見た少女は仕方がありませんね、と嘆息するとようやくまともに話し始めてくれた。
「この鎖は呪術の込められたもので、手枷同様魔封じの呪いがかけられているんですよ。それもかなり高度な、ね」
「魔封じ?」
「言葉通りです。魔力を封じる呪いですよ」
「呪いっていうなら解けないのか?」
少女の話しを聞いて思った事を素直に口にする。
だってそうだろ?
呪いだなんだっていうなら解ける方法があってもおかしくないはずだ。
そう考え質問してみた俺だったが、質問を聞いた少女は、俺の予想に反し静かに首を横に振った。
「確かに『魔法解除』で解けます。普通なら、ですが。言ったようにこの魔導具達にはかなり高度な魔術が込められているので私でも解呪は無理です」
「『魔法解除』?」
「えぇ。まぁレベル1のあなたがご存知ないのも無理はないでしょうが魔法や魔術をキャンセルする魔法ですよ」
なるほど。
その魔法が使えればその鎖の封印を解くことが出来るかもしれないのか。
目の前にいる少女のレベルは37。
俺より圧倒的に格上のレベルだ。
それに加え格好からして魔法使いか何かだろう。
魔法に関する知識も豊富そうだしな。
ここはやはりそういう世界なのだ。
普通に考えれば言ったように知識もなくレベルでも劣る俺が何をしようと無駄だろう。
だが、さっきも圧倒的ピンチだと思っていた戦闘は何とかなった。
案外女神補正を受けてそうな俺なら何とかならないだろうか?
と、考えていた事が顔に出ていたのかバカにするようにふっと短く笑う少女。
「さっきのベアウルフとは違って、今度こそあなたには無理ですよ。言っておきますが私のレベルは37。それも私のクラスはソーサラーです。そんな私でも無理なんですからあなたには到底・・・」
「まぁほら、やってみなきゃ分からないだろ?もしよかったらその『魔法解除』っていうの教えてくれないか?」
「やる前から分かるから言っているのですが・・・・。あなたは先程といい今といい、何故人のためにそこまでするのですか?」
「何でって言われてもな・・・・」
それこそ、普通だからと答えるしかないだろう。
確かにさっきのベアウルフとの戦闘のように命まで懸けて何かをする人は少ないだろうけど、今のように少女が一人こんな場所で囚われているのに知らんぷりする人は少ないんじゃないだろうか。
それこそ、ベアウルフの件については俺は色々と経験しているからこそ覚悟ができただけだしな。
でも、それでも敢えて言うなら・・・。
「君が可愛いから、かな?」
これに尽きるだろう。
これでもモテたくて色々と足掻いてきた非リア充代表だぜ?
可愛い女の子は助けたいに決まってるだろう!
そんな俺の答えに「は?」と短く言った美少女は・・・僅かに頬を染め・・・たように見える顔でプイッと顔を逸らした。
「い、意味が分かりません。やはり変態の方でしたか。まぁ、教えたところで無駄だとは思いますが好きにすればいいんじゃないですか?」
「ああ、うん。ありがとう・・・」
いや知ってましたよ?
今のやり取りで「やだ素敵!」みたいな感じになるのはアニメの中だけか凄いイケメンな奴らだけだって。
あぁ知ってたさちくしょう!
心の中で涙を流がす俺だがそれを決して表には出さずにこっと笑い「ありがとう」と告げた俺は早速『魔法解除』とやらを教えてもらう事にした。
よろしければ評価ブクマなどよろしくお願いいたします!
余談ですが400PVを超えたみたいです
ありがとうございます!