1-3 どうやらファンタジーな世界のようです
どうでしょうか。
今回は宣言通りテンプレファンタジー要素満載の筈です。
主に説明回っぽくなってはしまいましたが。
あらすじにも書いてある通り、最初はレベル1な主人公ですがこれからチート能力全開で行く予定なので俺ツエーーーー系が苦手な方はご注意下さい。
また後半ちょっと鬱パートっぽくなっているのでお気を付け下さい。
「レベル1?」
そう、困惑していた俺の視界の片隅にあったのは1LVという表示だった。
その位置といえば本当に視界の邪魔にならない程度で、この表示に「いつも君にそっと寄り添っていたよ」と言われてもあ、そっかと納得してしまう程だ。・・・いや意味分からないか。どうやら俺も気が動転しているらしい。
「あぁそういえば」
あの謎空間でシルフイさんこと女神様に「魔法のある世界」と言われた気がする。
もしかしてこの世界って、ゲームのような世界だったり?
魔法があって、レベル表示があって・・・となればそう考えるのが普通だよな?
そう思った俺は、周りに誰も人がいないのをいい事堂々と叫ぶ!
「ステータスオープン!!」
するとなんと!!
本当にゲームのように表示が出たではぁーあーりませんか!!
それは3D技術を結集して出来た立体映像のように不自然に浮かぶ文字の数々達!
少しはこのレベル1さんを見習ってほしい!この決して自己主張をしない位置にあるレベル1さんをッ
とにかく本当にステータスとやらが開いたので一先ず見てみる事にする。
レベル1
[力] 200
[耐久] 200
[早さ] 200
[知性] 200
[技術] 200
[スキル]
なし
[ユニークスキル]
『女神に愛されし者』
所得経験値及びにレベルアップ時に上がるステータス上昇値に補正。
ユニークスキル及びに通常のスキル所得時間短縮。
『ワールドトーカー』
あらゆる世界の言語が自分の聞きなれた言葉に変換される。
だがその世界世界にある固有名詞などは変換不可。
また、このスキルは他の人に表示されることはない。
『無詠唱』
(魔法詠唱短縮の最上位互換)
魔法系統全般の無詠唱化。
『レベルブースト』
レベルに応じたステータス補正。
上昇値は固定ではない。
『武具の心得』
様々な武具の扱いを習得する期間が通常より遥かに短くなる。
『???』
不明。
と、こんな感じだ。
うむ、本当にゲームというかアニメというかな世界みたいだな。
各ステータスに値があるのにお決まりのHPやMPといったものはないらしい。
それで魔法があるってことはMP系統は感覚でなんとかする感じか?
HPはまぁ数値化すると曖昧になるから分からないでもないけど。
後助かるのはワールドトーカーってスキルだな。
言葉が分かるのは本気でありがたい。
異世界に来て真っ先にやることが言葉の勉強ってのは勘弁してほしいからな。
まぁそれでもいくつか勉強しなきゃいけない事はあるだろうけど。
さて、そんな俺のステータスの初期値はオール200だった。
これが高い数値なのかどうなのかは他に比較対象がいないから分からない。
が、まぁ最後に普通にしろって言ってあるからそんな飛びぬけた数値ってわけじゃないだろう。
ないと、思う。
そしてこれまたお決まりの「スキル」に関してだけど今は空欄みたいだ。
この世界へ来たばかりだし、何も習得した覚えなんてないので当然かもしれないけど。
それと打って変わって様々な記述があるのが「ユニークスキル」の欄。
これは俺がやっていたゲームやラノベやらでいうところの個人個人が所有するスキルだよな。
スキルが鍛錬すれば誰でも習得できるものに対してユニークキルというのはその中でも限られた人しか手に出来ないスキルというもの。
あくまで前の世界のテンプレだったら、の話しだけどね。
だが載っている記述を見ても予想の内容よりかけ離れているというわけでもなさそうだ。
まぁ一つ『???』とかいう、明らかに怪しいスキルもあるけど今は気にしないでおく。
何せ説明欄の内容も不明だからな。
説明欄さんさえも分からないなら俺にはサッパリである。
危ないものや怪しいものには近寄らない。
基本だ。
「しかし、どうしたもんかね・・・」
一先ずステータスなどの情報からここがファンタジーな世界だって事は分かった。
正直トラックに轢かれてからここまで怒涛勢いで一生分の不思議が押し寄せてきたせいもあり、本来ならば考えられないような事もアッサリと受け入れてしまう。
慣れっていうのは怖いもんやねぇ。
まぁ実際こうして自分の知らない土地に立ってしまっているわけだし信じざるを得ないというが本音だが。
となればまず考えなければいけないのはここからどうするかが目下の課題である。
最優先は生きる事。まずはこれだろう。
だが俺の服装は公園へと行った時と変わらずTシャツにチノパンというラフなものだった。
当然剣だとか鎧だとかの装備品を持っている訳もない。
この世界が俺の世界でいうテンプレ的なファンタジー世界であるならばきっと魔物やモンスター的なものもいる筈だ。
というかレベルだとか武具の心得だとかがある時点でこれは確定事項だろうな。
男なのにこんなことを言うのはとっても恥ずかしいのが、そんなものに襲われれば間違いなくアウトである。
多少武道の経験や色々なイベントをこなしてきたとはいえ武器もないしそんな未知のものと対峙するのは、ぶっちゃけ怖い。
とっても怖い。
なので出来れば戦闘は避ける方向で行きたい。
だがそれも込みでとある問題があった。
それは、今俺のいるこの場所が一体何処なのか全然分からないという事だ。
この世界のマップ的なものも持っていないし、本当あるのかもしれないがマップを開くような魔法も使えるわけがないので何処へ行けばいいのかも分からないという有様なのである。
ちなみにステータスと同じように「マップ!」やら「マップオープン!!」とか草原で一人叫んでいたのは内緒だ。
この時ばかりは周りに人がいなくてよかったと思ったよ。・・・はぁ。
さて、そんなわけでどうするか。
自由気ままに歩き回ってもいいけど、それはリスクが高いような気がする。
間違いなく道を歩いている時より魔物とかとのエンカウント率も上がりそうだし、これはなしだろうな。
と、なれば・・・
「道なりに歩くのが、無難だよなぁ」
次善策としての、無難な方を選ばざるを得ない。
道があるのだから、その通り進んでいけばきっと町なり何なりあるだろうという事だ。
「しっかし、まさか異世界にまず来てやることがハイキングとは・・・」
そう。紆余曲折あり、自ら進んできたわけではない世界とはいえ折角男心をくすぐるようなファンタジーな世界に来たというのに結局俺が出来たのは己のステータスを確認する事だけだった。
その事にガックリと肩を落とした俺はじっとしていても仕方がないのでトボトボと道を歩くことにする。
願わくば、魔物とか出ませんように、と。
そんな願いが異世界へ来て最初にやる事が歩く事、というのにガックリしていた自分と矛盾している事に気付いたのは今からおよそ五分後の事だった。
やっぱり戦闘とか何とかよりも、安全が一番だよね!
☆
「・・・ッふふ、結局私を殺せず封印するだけなんて情けない男たちですね」
発した言葉が反響するような、薄暗い空間で私はそう呟く。
ジメッとした生暖かい空気が私の頬撫でるようにして通り過ぎていった。
周りが常に薄暗いので、今が朝なのか、夜なのかも分からない。
「全く、せめて封印するのならもっとマシな所にしてほしかったですね。ま、気の利かない無粋な男達ではこんなもんでしょうか」
そう、ここは草原にポツンとある祠だった。
否、祠などという立派なものではないか。
ただの大岩が自然の力によって削られ造られた穴、といった方が相応しいだろう。
そんな穴の中に私は呪術が込められた鎖を幾重にも巻かれ見事に封印されていた。
最初、私を殺そうと躍起になっていた男達も途中であまりのレベル差に私を殺せないと気付いたのか鎖に呪術をかけてこの大穴に封印する事にしたみたいだ。
そう「氷の魔女」と言われ恐れられていた私を。
「氷の魔女、ですか」
自虐気味にそう呟く。
私は決して自らそんなこっ恥ずかしい異名を名乗ったことなどなかった。
これは、帝国の上層部に命じられるがまま任務をこなしていた私に周りがつけた異名なのだ。
・・・そう、周りが。
命令であれば村一つ表情を変えずに滅ぼし、敵とみなせば容赦なく攻撃を加えるそんな私を見て。
これでも私は今まで帝国に尽くしてきたつもりであった。
孤児として行く当てもなく死にかけていた私を拾ってもらった恩があったから。
帝国の意に反する行動をとった村を粛清したり、反逆のために集まったレジスタンスを壊滅させたりとしてきたことは様々だ。
そんな私であったが初めて人を殺した時は、胃の中にあったものを全て吐いた。
同時に涙を流した。
それはそうだろう。
まだ少女といっても過言ではない歳の子供が人を殺したのだ。
平常心でいれるわけがない。
だが帝国という大きな組織がそんな一個人の感情を鑑みる筈もなく、次の日にはまた平気で虐殺の任務がきた。
帝国がまだ幼いながらも大人一人平気で殺せるような魔法を打てる私の才能に気付いたのだ。
それから言われるがままに殺し、奪い、壊してきた。
正常なままでは壊れる心を凍り付かせて。
しかし、力を持ち過ぎた者を警戒視するのもまた組織だという事を私は失念していた。
ある日、いつも通り帝国の上層部からの任務により奴隷の振りをして王国へと潜入する際付けられた手枷。
まさか自分が始末されるとは微塵も考えていなかった私は素直に嵌められたのだが・・・何とそれはマジックアイテムの「魔封じの手枷」だったのだ。
私一人始末するのによくもまぁ貴重なマジックアイテムを探し出し使ったものだと感心する。
それほど、危険視したという事なのだろうが。
そして私に手枷がつけられたのを確認した奴隷商役の男達が人目のない事を確認し一斉に攻撃を加えてきたのだが・・・これでも今まで幾多の死線を潜り抜けている私だ。
男達とレベル差もあった私は魔封じの手枷でも抑えきれない程の魔力を込めると気付けば男達の攻撃を防いでいた。
考えるよりも早く身体が反応したのだろう。
それからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
私を攻撃していた男達は皆肩で息をしていたのは覚えている。
その際「手枷を嵌めた女一人殺せないなんて滑稽ですね」とか言ったような覚えもあった。
それに激怒したのかいつまで経っても私を殺せない事にイラついたのかは分からないが一旦攻撃の手を辞めた男達は私を近くにあったこの大岩へ運ぶと何処からか取り出したのか呪術の込められた鎖を取り出し私に巻き付けたのだ。
その鎖に込められた呪術はかなり強力なもので、私の魔力を以てしてもどうすることも出来ないでいた。
その事に眉をひそめた私に対して男たちは「ざまぁみろ」だとか「氷の魔女の最後も呆気ないもんだったな」とか「本当に奴隷に堕ちたんだったら俺が飼ってやってもよかったんだがな!」だとか好き放題言って去っていった。
そして、今の状況に至るというわけだ。
今まで言われるがままに非道な行いをしてきた償いという事なのだろう。
そう思えばこんな惨めな状況にも納得が出来た。
「・・・雨、ですか」
不意に雨の降る前の独特な臭いがする。
こんな大穴の奥まで匂ってくるという事は恐らくそれなりに激しい雨となるだろう。
それはきっと、私の心の中で降っている雨と同じようなくらいの雨と―――――
よろしければ評価ブクマなどよろしくお願いいたします!
そして複数のブクマありがとうございます!
こんな稚拙な作品ではありますが読んでくださってる方がいるんだなぁと、書いていて非常に励みになりました!
余談ではありますがステータス初期値がオール200の主人公。
これはかなり高い初期値の設定です。
後々分かる事ではありますが補足として言うなら騎士の職についている者のレベル10で各ステータスがおよそ30~60の間といったところです。
普通のステータスにしただろうという主人公の予想は外れたことになりますね。
それだけシルフィーさんの愛が深かったという事でしょう・・・