1-2 どうやら異世界へと転生したみたいです
・・・誰でしょうね、次話ファンタジー要素ありますとか書いたの。
いえ、私ではないですよ?本当に。
と、いうわけで今回は転生されるまでが主な話となってしまいました。
次話、次話こそは!!ファンタジ―要素のある話の筈なので!!平にご容赦をッ
むむ。むむむ。
俺は今非常に悩んでいた。
過去、どうすればモテるだろうかと考え悩んでいた時期もあったがその時に匹敵するくらいには悩んでいた。
何故かって?それは―――
「ここ、どこだよ・・・」
そう、わけの分からない異世界へと一人降り立っていたからである。
見渡す限りは草、草、草。
そして目の前にあるのは何処かへと続いているのだろう補装されていない道。
一体ここは何処なのでしょう。
思わず首を傾げる俺。
何故こんなことになっているのか。
事の発端はそう、あの自称女神さんに告白された事だった。
☆
「あの、私と、私と―――お付き合いして下さいッ」
自称女神こと銀髪美少女のシルフィさんは何を思ったのかそんな事を口走った。
その言葉にフリーズする俺の頭。
だってあれだぜ?
ちょっと考えられないような美少女に「付き合ってください」だぜ?
うん、きっとこれは壮大なドッキリか何かなのだろう。
今にも「ドッキリ大成功」と書かれた看板を持ったスタッフさんが出てくるはずだ。
幼馴染である立花を助けようとトラックの前へと飛び出してから今現在まで、混乱続きの俺の頭はそう現実逃避する。
しかし、いつまで経っても陽気なスタッフさんは出てこずこの真っ白な謎空間にいるのは相変わらず目をウルウルさせて俺の返答を待つシルフィさんと俺だけだった。
「えっと、お付き合いって、あのお付き合い?」
沈黙が支配するこの空気に耐え切れず思わず聞いてしまう。
「はい。信さんの世界でいうお付き合いであってます。いえ、信さんさえ望んでくれるなら『結婚』というものでもいいのですけど・・・」
そうして恥ずかしそうにクネクネと身を捻るシルフィさん。
うんそっかー、結婚かぁ。
そろそろ俺も身を固めなきゃならんと思ってたし丁度いいかなぁー。
なんて。
まだ高校二年生になりたての俺がそんな事を思えるわけもなく『結婚』などという非リア充が生涯言われることのないだろう言葉ランキング堂々のベストスリー(俺調べ)に入るだろう言葉に頭が再びフリーズする。
「い、いやいやいやちょっと待って。仮にさ。俺が死んじゃって、君が女神ってやつだとしてこんな不思議な空間にいたとしてもさ。君と俺接点なんてないよね?それに俺みたいなモテないやつより他の格好いい人の方がいいんじゃない?」
慌てて紡いだ俺の言葉にんー、と人差し指を口に当てるシルフィさん。
こんな状況でなんだけど、あーちくしょう、可愛いなぁもう!
やっぱり元がいいとどんな仕草も絵になるのかね。
そんな見当はずれな俺の憤りを知らないシルフィーさんはにこやかな顔で衝撃の事実を口にする。
「信さんが死んでしまったのと、私が女神っていうのは間違いのない真実なのですけれど。それと信さんは知らないようですが決して信さんはモテていないわけではなかったですよ?」
「なんですと?」
「信さんの幼馴染という立花さん?と妹さんの雫さん?が信さんへと好意を抱く女性全てをブロックしていたに過ぎません。後はまぁ、そんな彼女らのブロックをすり抜けたようなイケナイ女性には女神の呪いで告白する気自体を消させてもらいましたが・・・」
そう言ってフフフと光のない瞳で笑うシルフィさん。
やっぱり元がいいとそんな怪しい仕草でさえ・・・ってそれはもういいんだよ!
それより、え?
俺はモテていないわけじゃなかったって今・・・。
確かに俺は今までアニメでいう「フラグ建築士」と言われても不思議ではないくらい様々なイベントをこなしてきたつもりだ。
でも、それでもモテなかったのは俺自身の魅力の無さからだと思ってたんだけど・・・。
「立花と雫が、ブロック・・・?なんで?」
思わずそんな言葉が漏れてしまう。
だってそうだろう?あんなに俺にモテないモテないと言っていたあいつらが一体なんで・・・。
そんな俺の疑問に少しヒヤッとするような笑顔を浮かべたままのシルフィさんは「なんでなんでしょうね?」と首を傾げた。
「まぁ、おおよその理由は分かりますけどそれは私の口から言うべきことではないでしょう。そしてもう一つの問いに対する答えは簡単です」
「ん、もう一つの問いって・・・」
「私と信さんの接点、というやつです」
「あ、あぁなる程。でもそうだよね?俺君みたいな可愛い子と会った事もないと思うんだけど・・・」
「可愛いだなんてそんなぁ・・・」
俺のふとした一言にすっごい喜んでいる自称女神さん。
そんな女神さんに視線で続きを促すと気を取り直すようにコホン、と咳払いをした。
「確かに、直接会った事はないですね。でも私はここからずーっと信さんの事を見てきましたから私からすれば初めましてってわけではないんですよね」
「え、ずっと見てきたって・・・」
「はい!ある時にふとあの世界を見る機会があったんですけど・・・その時にたまたま目に入ったのが信さんだったんです!そして恥ずかしながら・・・」
そこで一旦言葉を区切るシルフィさん。
そして・・・
「一目惚れ、しちゃったんです・・・ッ」
信じられない言葉と共にいやんいやんと首を振った。
一目惚れ。
ほう。
言葉だけは知っていたその言葉。
でも一生俺とは縁のない言葉だと思っていたそれが、想像だにしていなかった状況で告げられたのだ。
「ん・・?ずっと・・・?」
っと、一目惚れなんていう言葉にばかり気を取られていた俺だったがシルフィさんの言葉にはもう一つ気になるワードがあった。
そう、強調して言っていた「ずっと」というところだ。
「えっとずっと見てきたって具体的にはどれくらいなの・・・?」
「言葉通りずーっとですよ!神としての仕事をしながらもずっと見てました!それこそ信さんの世界でいう365日24時間ってやつですね!」
「!!??」
とんでもない事実をとても可憐な笑顔で言うシルフィさん。
その表情は間違いなく恋する乙女そのものなのだが(非リア充視点なので自信はないけど)言ってることが怖すぎる!!
ゾゾゾッと背中が寒くなった同時に俺は悟った。
―これ以上、この事を聞いちゃダメだ―
と。
「そ、そうなんだ。ところで俺、この後どうなるんだろ?シルフィさんの話しが本当だとしたら死んじゃってるんだよね、俺」
慌てて話を逸らそうと試みる俺。
そんな俺とは対照的にシルフィさんは落ち着いた態度で応じる。
「んー、信さんが望むなら主神級は無理ですけど従属神くらいにはしてあげられますし・・・この場所で私と一緒にずっと過ごしてもらうとか、ですかね?」
凄い!聞きましたか?皆さん!
一般的な高校生かつ世界を代表する非リア充だったはずの俺が、なんと神様になれるんですって!
これが人生の転機、ってやつなんですかね!俺もう死んでるけど!
しかも、こんな美少女と一緒に過ごせるって本当夢のような出来事ですね!
・・・なんて、普段だったらにべもなく食いつくような提案だったんだけど。
少し怖い発言を聞いた後だからか、それとも前の世界に未練があったからかは分からない。
けれど俺は気付けば首を横へと振っていた。
「・・・ごめん。もし本当に俺の事が好きで言ってくれているのなら気持ちは凄い嬉しいんだけど、今は答えられない。ほら、君は俺の事を知っているかもしれないけど、俺は君の事をよく知らないしさ」
本来であればぶつけてくれた気持ちを無碍にするような酷い言葉だとは思う。
正直、泣かれても仕方がないかと覚悟もしていた。
だが、そんな俺の予想を裏切りシルフィさんは相も変わらずにこやかな笑顔のままだ。
「そうですよね。信さんならそういうと思っていました。正直勢いだけでなんとかなればとも思っていたんですけれど・・・そう上手くはいかないものですね」
ペロッと舌を出して言うシルフィーさん。
神であるはずの彼女が上手くはいかないなんて、本当だったら笑うところなのかもしれないけど状況が状況だけに笑えない。
依然にこやかな表情であるはずの彼女も無理に元気に振る舞っているような気がしてならなかった。
そんな少し悪くなってしまった空気の中、シルフィさんは不意にぱんっと手を打ち鳴らした。
「なので、今から信さんを私の管理外の世界へと転生させようと思います!」
「なぜに!?」
唐突すぎるその提案に彼女が神であることを忘れ思いっきりツッコんでしまう。
だが、当の本人であるシルフィさんは何処を吹く風だった。
俺の言葉にニヤリと笑った彼女は続ける。
「だって、私の事を知らないからお付き合いしてくれないんですよね?ですから私の事をよく知ってもらおうかと!」
「それで何で異世界に!?」
得意げに語った彼女の言葉を聞いても全く理解できなかった!
頭に疑問符ばかり浮かぶ俺に対して胸を張った彼女はなおも続けた。
「まぁ、理由は追々分かりますよ!それに信さんにとっても悪い話ではないかもしれないんですよ?」
「ん?それはどういう・・」
「だって、私の管理外の世界であれば元の信さんの世界へと帰る手段があるかもしれないじゃないですか!例えば、魔法とか、ね?」
「ま、ほう・・・?」
「えぇ。そういった魔法がある世界かもしれませんよ?いえ、信さんが望むのならそういった世界へと転生させましょう!」
そこで一旦考える。
確かに、落ち着いて考えてみればメリットはあるかもしれない。
こんな不思議体験をしている俺だ。
異世界があって、その世界に魔法があると言われても今更疑ったりはしない。
そして出来れば、雫と立花の事にケリをつけてから彼女、シルフィさんの返事をしたいとも思っていた。
それが叶うかどうかは別として。
それに加えて、結果的にそうなってしまっただけとはいえ好きだと言ってくれた女の子を振ったのにも関わらず二人っきりで過ごすというのも精神的にキツイ。特に今までそんな経験がなかっただけに滅茶苦茶キツイ。
そこまで考えた俺はどうです?とこちらの様子を窺うシルフィさんに一つ頷くとむしろ、と口を開いた。
「そこまで言うならこっちからお願いするよ。異世界へと転生させてもらっていいかな?」
俺の返答を聞いたシルフィさんは花の咲いたような笑顔を浮かべるとはい!と元気よく頷く。
「では早速転生させますね!信さんが向こうの世界ですぐに死んでしまわないよう女神の加護をつけますので!!期待しててくださいね!」
と、しゃべりながら手の平をこちらに突き出す彼女。
その手には光の粒子みたいなのがどんどんと集まっていて・・・。
ん?ちょっと待って死ぬ?
加護?何のこと!?
ではいきます!と言った彼女に対して俺は、
「ちょちょ、ちょっと待って!普通!普通でいいから!後死なないようにってどういう事!?」
と叫ぶ。
そんな俺の魂の叫びにシルフィさんは「じゃあ加護についてはちょっとサービスするくらいにしておきますね!自ら進んで困難の道を行くとはさすが信さんです!」というと今度こそ集めた光を俺の方へと飛ばしてきた。
その光の粒子へと飲み込まれながら俺は死ぬってどういうことだぁああああと再び叫ぶも・・・聞こえてきたのはまた後でですねー!というシルフィさんの気の抜けるような声だけだった――――
そうして冒頭へと戻る。
シルフィさんの放った光の奔流に飲まれ、身体を引っ張られるような感覚があった後気が付けばこの自然溢れる道にポツンと一人立っていたのだ。
え、何これもう異世界?
それでここ、何処?どないしろと?
そんな幾つも浮かぶ俺の視界の片隅にあったのは・・・1LV という表示だった。
よろしければ評価ブクマなどよろしくお願いいたします。
また本文に関してですが、何故女神が自分の管理外の世界へと飛ばしたのかなどの理由は後々分かる(予定)です