1-1 どうやら非リア充を脱出できるようです
そんなわけで完全鈍い系主人公回でした。
次話からちゃんとファンタジーします。
本当です。
本文は後々弄るかもしれませんがご理解いただけますようよろしくお願いいたします
K O K U H A K U
それは秘密にしていたことや心の中で思っていたことをありのまま打ち明けることであり、また、その言葉そのものの事を言う。
昨今では恋愛感情がある事を相手に伝えることを指すことが多いようだが、語源としては自らの宗教や犯した罪などを公言する際に使われていた言葉だという説もあるらしい。
…なんて、少し博識ぶって解説してはみたものの結局は相手に自分の気持ちを伝える行為という解釈で間違ってはいないだろう。
……告白、ねぇ。
俺から言わせれば告白なんざ、悪しき習慣でしかない。
だってそうだろう?
俺みたいな非リア充側の人間からすれば関わりのない単語ベストファイブには入るだろう単語だぜ?
リア充滅べ。
これに尽きる。
だってさ、女の子から告白受けるとかもうそれだけでリア充だよね。
見てるだけでニヨニヨするような甘ったるい空気作り出しちゃってさ。
あいつらの出す空気は公害認定されるべきだと声を大にして叫びたい。叫ばないけど。
もう本当見てるだけでマジ滅べって感じになる。
リア充が憎い。
告白が憎い。
告白という文化さえ無ければここまで惨めな思いをする事もない筈なのだ。
え、俺?俺はもちろん告白なんかされた事ありませんよ、ええ。何せ非リア充日本代表レベルだと自負しているくらいですから。
というかそもそもされてたらこんな事思うか?普通。思わないだろう!
何せ俺に至っては前提となる告白以前にまいしすたーこと雫には「兄さんが告白とかあり得ませんね。このままだとどうせ将来も一人でしょうし、可哀想なので私が一緒にいてあげますよ」なんて言われて哀れまれてる始末だぞ?
あの時は感動の涙で前が見えなかったね。
なんていい妹を持ったんだろうって。
決して悲し涙じゃないぞ?本当だぞ?
そしてついでにいえば幼馴染からも「あんたはどうせ私がいなきゃ何も出来ないんでしょうし仕方がないから一緒にいてあげるわ」と言われている。
これね、言葉だけ聞けばスッゴいフラグ立ってるでしょ?
でも実際メチャクチャ同情心たっぷりの生暖かい笑顔で言われたら「ぁ、本当生きててすいませんでした」ってなるから。
フラグ立ってるとかカケラも思えないからね。
この幼馴染に限っていえば幼い頃から「あんたがモテるわけないでしょ?」と、さも世界の常識のように俺の事を詰っていたので告白紛いの照れ隠しというわけでもない筈だ。つまりは本音。
ここまで言われるという事はきっと俺がモテないのは世界の常識なのだろう。
そのうち法律とかにもなるはずだ。
俺こと大沢 信 に好意を抱いてはいけない。なんてね。
ちなみにこの時も笑顔で心の汗を流していた。
…せつない。
更に更に言えば、あいつらみたいに近しい人間だけではなく、実はこれでも俺はやることはやってきていた。
それなりにフラグが立つはずだろうイベントをこなしてきているのだ。
具体的に言うのは面倒くさいので割愛するがそれはもう色々あったさ。
だが、そこから発展し告白をされた回数は、ゼロ。
ゼロだぜ?
もうここまで言えば分かるだろう?
つまり俺は、徹底的にモテない。
モテた試しがない。
ともなれば当然告白されるなんて夢のまた夢。
そんな非リア充日本代表を超えて世界の非リア充代表なのが俺――――だった。
だった、だ。
「あの、私と、私と――――お付き合いして下さいッ」
そう、俺は今。
記念すべき人生初の告白ってやつを。
謎の空間で「女神」を名乗る謎の銀髪美少女から受けていた――――
☆
謎の美少女より告白を受けた時より少しばかり時は遡る。
その日、俺はマイシスターこと大沢 雫に近所の公園へと呼び出されていた。
雫とは二歳違いの兄妹で、俺がまだ五歳くらいの時に再婚した今の母さんの連れ子だったのが雫だ。
所謂義妹、というやつだな。
義妹とは言いつつも長い時を一緒に過ごしていた俺達はそれなりに仲も良い。・・・筈だ。
少なくとも、ギスギスしたような関係ではない。
俺がそう信じたいだけかもしれないけど。
さて、そんな雫が俺を公園に呼び出すというのはかなり珍しい事だった。
それはそうだろう。
何せ家が一緒なのだからよっぽどの理由ではない限り家で話せばいい事なのだから。
それに雫は頭がいい。
悲しいことに、兄である俺よりも頭の出来はいいといっても過言ではないだろう。
そんな雫が人目を避けてまで俺に伝えたいこと。
そう考えただけでも普通の事ではあるまい。
拙い頭でそう考えた俺は少し緊張した面持ちで公園へと向かっていた。
「っと、待ち合わせ場所はこの辺か」
指定された時刻よりも多少早く着いた俺は雫がいないかどうか辺りを見回す。
早く着いた俺だったが基本的に妹の雫は俺の行動よりも一手先に動いている事が多い。
なので今回も俺が多少早く着くことも予想し、早く来ているのではないかと思ったのだ。
(んーと、あ、やっぱいた)
予想通り俺よりも早く来ていた雫。
そんな雫は指定していた場所より少し離れた場所で落ち着きなくウロウロしていた。
いつも冷静沈着な雫にしては珍しい事だ。
やっぱりただ事ではないに違いない!
よし、と覚悟を決めた俺は未だ俺に気付いた様子のない雫に近付いていく。
すると足音で気付いたのか俺の方へと振り返る雫。
「あ、に、兄さん。来てくれたんですね」
「そりゃ呼ばれたんだから来るだろ」
「そ、それもそうですね」
ソワソワ。
キョロキョロ。
そんな擬音語が似合う程動揺している雫。
本当こんなに落ち着きのない雫は珍しいなぁ。
「それで、話ってなんだ?」
「あの、それがですね、えっと」
一つ大きく息を吸う雫。
そしてキッとこちらを睨むようにして見つめた雫は意を決したように口を開く。
や、ヤバイ。
俺も何だかドキドキしてきた。
何を言われるんだろうか?
もう、兄さんの妹ではいられません!縁を切ってくださいッとかかな?
もしそんなこと言われたら俺は多分生きていけない。
決してシスコンというわけではないと思うが、今までそれなりに仲が良かっただけにショックも大きいのだ。
そんな嫌な想像ばかりしている俺に構わず雫は言った。
「・・・今までずっと隠していたんですけど・・・実は、もう兄さんの妹でいたくないんです!!」
はいキターーーーーーーッ
嫌な予想的中ッ
こんな予想あたってほしくなかったけどッ
死のう。今すぐ車道に飛び込んで死のう。
サッと顔が青くなった俺に対し、雫は慌てて「違うんです!」と否定する。
「決して兄さんが嫌いというわけではありません!!じ、実はその逆で―――」
と、雫が気になる事を言った瞬間・・・。
『ちょーーーーーッと待ったぁあああああ』
雫の言葉を遮るように大音量の「待った」が入った。
この声は聞き覚えがある。
いや聞き覚えがあるというレベルではない。
それは幼馴染の立花のものだった。
大音量の待ったをかけた立花はかなり距離のある場所から走ってこちらに向かってくる。
それを見た雫は「ちっ、私の仕掛けた108の罠を回避してくるなんてッ・・・」とか言っているけどお兄ちゃんにはちょっと意味が分からないや。
「一人抜け駆けなんてさせないんだからッ」
昔からのトレードマークであるサイドポニーの髪を振り乱しそう言って青の信号を渡り走ってくる。
・・・抜け駆けってなんだ?
頭にクエスチョンが浮かぶ俺。
しかし、俺が冷静にその状況を見れていたのはそこまでだった。
それは何故か。
それは―――
「危ない立花!!」
確かに青の筈の横断歩道を渡っている立花だったのだが、何と信号を無視して飛び出している大型トラックが見えてしまったのだ。
俺の言葉に「え?」と言って立ち止まる立花だったが・・・間に合わない。
横断歩道のど真ん中で立ち尽くす立花に・・・恐らく居眠り運転だろう、容赦なく猛スピードのトラックが迫ってくる。
「くそっ」
その光景を見た途端に「あ、兄さん!?」と声を上げる雫を放置して立花へと飛び出していた俺だが・・・間に合うかはギリギリだった。
色々なフラグを立ててきた俺をなめんなよッ
こんな状況だって何回か経験してきとるわ!
なんて自らを奮い立たせる俺。
「きゃっ!」
そうして何とか間に合った俺は呆然としてトラックを見つめる立花を何とか押し飛ばし、何とか自らもトラックの進路外へと逃れようとするが・・・
どうやらそれは間に合わないみたいだ。
チラリと見えたのはもう間近に迫るトラックで。
「兄さん!!!!」
という雫の絶叫を最後に、俺の意識は暗転したのだった。
・・・・・
・・・
・・
「あれ?俺生きてる?」
来るはずの衝撃に備えて目をつぶっていた俺だったのだが、待てど待てど衝撃がこない。
・・・もしかして、助かったのかな?
そんな淡い期待を抱いて目を上げた俺だったのだが・・・
「こんにちわ!大沢 信さんッずっとずーーとお待ちしておりました!」
待っていたのは立花や雫の顔ではなく・・・見たこともない銀髪美少女の満面の笑みだった。
「えっと、君は?え、俺助かったの?」
そんな訳の分からない状況に動揺する俺。
だってほら、俺トラックにさ。
それにこの子は?お待ちしておりましたって。
しかも見渡してみれば周りは病院もビックリな真っ白の謎空間だった。
いかに様々なフラグイベントに出くわしてきた俺とて混乱するのも無理はないだろう。
そんな俺を見た謎の美少女はくすりと可憐な笑みを見せる。
「あ、申し遅れました、私十六の世界の管理をしてますシルフィと言います。信さんの世界でいうところの女神ってやつですね。それから信さん、あなたはあなたの記憶にある通り、居眠り運転をして暴走したトラックに轢かれ亡くなってしまいました。そうして浮遊した魂を、私の方で呼び寄せた次第ですね!」
そんなトンデモナイ事を笑顔で告げる美少女。
いやいやいや、女神様って。どう見たって俺と同じくらいの歳やん?しかも一般人かつ非リア充代表の俺相手に敬語ってさ。
「えーと、うん?」
説明してくれた筈なのにその前よりも混乱する俺。
「そ、それであの・・・」
しかし、そんな俺の様子を無視して何やら一人もじもじし始めた自称女神様。
ちなみに自称、というのは俺がまだ女神だと信じていないからだ。
「一つ、信さんにお願いがありまして・・・」
そして上目遣いで見つめてくる自称女神。
否、美少女である。
「ん、お願いって・・・?」
そして自分の混乱を一先ず置いておいて思わず聞いてしまう自称非リア充代表。
ちなみに自称、というのは自覚しているからである。悲しい。
「あ、あの・・・!」
頬を赤く染め潤んだ瞳で口を開いたシルフィさん。
おや?こんな表情どっかで見た気がする。
と、美少女の思わずドキドキしてしまうような顔見て真っ先に思ったのはそれだった。
そして思い出す。
あぁ、そうか。
さっきの雫みたいな表情なのか、と。
結局何が言いたかったのかは分からなかったけど。
どこか他人事のようにそんなことを考える俺に対し、シルフィさんこと自称女神様は意を決したようにこぶしを握って胸に当てた。
「あの、私と、私と――――!!」
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とりあえず、鈍い系主人公は皆滅べばいいんですよね。
今回の主人公である信は本人も言っていた通り一級フラグ建築士の予定でありますが、何故今までモテなかったのかという説明についても次回辺りに明らかになると思いますのでよろしくお願いいたします。