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ひねり~消えた殺人鬼~  作者: 愚童不持斎
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17 消えなかった真実

 病院からの帰り道。

 私とスフィーは並んで歩きながら、事件について話をした。

「――呪いにとらわれた『依代よりしろ』は悪意が増幅し、本来なら起こさなかった事件を起こす。それはいかなる善人をも狂わせてしまうのだ」

 スフィーが悲しげに言う。

「うん、リコ先輩は本当は殺人鬼なんかじゃないんだよね」

 私はそう言って、しみじみと事件を振り返ってみた。

「――だけど本当に事件が解決できてよかったよね。リコ先輩は自分が死ねなかったのを『悪運』っていったけど――あれは『救い』だったんだよね」

 私の言葉にスフィーは頷く。

「そうだな。もしリコがあのまま死んでいたら、全ては終わっていただろう」

「私ね――正直今回の事件も、昔あった『首盗り鬼事件』みたいに、全てが闇に消えたまま終わっちゃうんじゃないかってずっと思ってたんだ」

 安堵の気持ちから、私はふと本音を漏らす。

「ねえ……スフィーは事件の最中、ほんのちょっとでもそんな気持ちになったことなかった?」

 スフィーはそれに首を振って答えた。

「ないな。犯人も真実も、消える事などないのだからな。もし消えたとしたら、それはただ見抜けぬだけなのだ」

「ふーん……スフィーは常に見抜く自信があるんだ」

「最低限必要な情報さえそろっておればな」

 ……本当にスフィーにはひとかけらの不安もなかったのだろうか?

 ――正直、私は単なる強がりだと思うけど……まあ本当ということにしておこう。

「――まあ、とにかくやっと終わったんだよね」

 私はそう言って両手を上に突き上げ、思い切り伸びをする。

 ――日曜日の、のどかな昼下がり。

 ふと見上げると、そこには今までの陰鬱さを払拭するような晴天が広がっていた。

 ……これで平和な日々が戻ってきたのだ。

 私はやっとそう実感する。

「さあ帰るぞ、ひねり」

 立ち止まって空を見ていた私に、スフィーがそう声をかけた。

「うん、帰ろ」

 微笑んで答え、また歩き出す。

 私はスフィーと一緒に、ゆっくりと家路を歩いていった――。


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