プロローグ
ここは、創造主が末娘、美と愛を司る女神シェンリーベが守護する国。
女神シェンリーベは美を司るだけあって、美しいモノを好みました。
美しい容姿は勿論、
美しい景色、美しい建物、美しい食器。
更には目には見えない美しい心まで。
そうして女神シェンリーベが愛した美しいモノ達にはいつしか魔力が宿るようになりました。
魔力はあらゆる形で発展し、国を富ませたため、国民も積極的に美しくあろうと努力するようになりました。
そんな中、一際美しい心を持った女がいました。
女神シェンリーベはその女を殊更愛していたため、女が懐妊した時に溢した言葉を叶える事にしました。
雪のように白く、鮮やかな薔薇のように赤く、黒檀の窓枠の木のように黒さを持った、美しい子が生まれるといい。
そうして生まれた子供は願い通り、雪のように白く美しい肌にまるで鮮やかな薔薇のように赤い唇、そして黒檀の窓枠の木のように黒く豊かで美しい髪を持っている女の子でした。
女の子は皆に歓迎され、すくすくと健やかに育ったけれど、その母親は病に倒れやがて息を引き取りました。
女の子が悲しみにくれているのを哀れに思った父親が再婚し新たな母親を連れてきました。
実母と同じくらい美しく優しい継母に、女の子も次第に心を許していき、穏やかな日々が続いていました。
けれど、それも長くは続かず今度は父親までも病に倒れやがて息を引き取りました。
女の子もそのショックからか、同じく病に倒れてしまいました。
女の子の友達である七匹の小鳥達が懸命に看病したけれど、看病むなしく女の子もやがて息を引き取ってしまいます。
まるで眠るようにして横たわる女の子の側で離れたくないと、いつまでも嘆き悲しむ小鳥達を哀れに思った女神シェンリーベはこの小鳥達に加護を与える事にしました。
そうして加護を与えられた小鳥達はそれぞれ特別な力を発揮するようになりました。
その様子を見ていた継母が言いました。
「このようにかわいそうな女の子を他にも出さないようにするために、どうか力を貸しておくれ」
その言葉に感銘を受けた小鳥達は喜んで協力を申し出ました。
そのお陰で、継母はその病に対する薬を見つけ出しました。
そうしてこの国にまた平穏が訪れたそれ以来、継母は女王となり、七匹の小鳥と共に長い治世を敷きました。
女王はやがて息子に跡を継がせたけれど、今も尚この国を見守っているのです……。
とある母子の寝物語にて、「悲劇の女の子。七匹の小鳥と優しい女王陛下」より。