表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

追ってくる視線

作者: 蒔名ルラ

ようこそ、ごゆっくりお楽しみくださいませ

 俺は会社の休暇を使い神奈川の下の方へと

ドライブしに行っていた。


「(一般道路でもよかったな)」


 家が神奈川の上の方にあるため

平日だが一応高速を使って明日の朝には到着するよう

3時に家に出たのだが予想よりも早くついてしまった。


「(4時...夏とはいえ日が昇るのはもうちょっと後か)」


 いまは7月中旬、途中パーキングエリアに入ったが

夜でも暑かった。

そして現在、コンビニで駐車して時間つぶしを考えていた。


「(せめてゲーセンとかあれば)」


 家の付近は都会に近いため、探せばあったのだが

神奈川の下の方は森や山だらけで

娯楽施設はあまりない。

特にこんな時間はやってるところがないだろう。


「(ん...心霊スポットか)」


 スマホでSNSを漁っていると

この時期にぴったりなホラー話があった。

その中に心霊スポットがあり、神奈川の一覧が表示されている。


「(15kmくらい離れているが心霊スポットあるのか)」


 少し遠いが往復で丁度1・2時間は潰せるだろうと思い

早速車を走らせた。





 カーナビに住所を入れて走っているのだが

中々着かない。

というのもずっと山を走っているのだ。


「(カーブ多いし、小石が車にぶつかる...最悪だ)」


 急カーブの繰り返しでしかも小石が

車にぶつかる音がする。

いまさらだが来て後悔した。


『まもなく、目的地周辺です』

「(そろそろか)」


 目的地が見えてきた。

そのまま山を下る道と横に道がある。

恐らく横道だろうと思い曲がる。


『お疲れ様です、目的地です』


 カーナビがそう告げた。

俺は本当にここなのかと思い

看板がないか探していると


「(あった...ここか)」


 洞窟の心霊スポットなのだが

丁寧に方向まで書いてある看板があった。

近くにはバス停もある。


「(観光スポットとしても有名なのか)」


 もしかしたらハズレを引いたのかもしれないと

思いながら先の道を見る。


「(トンネルがあるな...車一台分か)」


 通って良いのか悩んでいたが

こんな時間にこの場所へ来る人なんて

いないだろうと思い、車でトンネルを進んだ。


「(真っ暗だ、電灯一つもないなんて)」

 

 ハイビームにして前をよく確認して運転すると

しばらくして通行止めのゲートがあった。


「(ここから徒歩か)」


 そこで停車しエンジンを切った。

横を見るとお地蔵様と下る階段があった。

車を降りようとしたとき何かが車にぶつかった。


「(まさか)」


 頭に幽霊や心霊現象が思い浮かんだ。

その音はまるでぶつかるように

あちこちから聞こえる。


「(いまならまだエンジンを掛けて逃げられる)」


 そう思いエンジンを掛けようとしたとき

フロントガラスに蜂がぶつかってきた。


「うわ」


 思わず声を上げた

それは何度も攻撃するように車を飛び回り

ぶつかっていた。

そう音の正体は蜂だったのだ。


「(幽霊よりたちが悪い)」


 2分くらいじっとしていると

やっと攻撃をやめたようで

音はしなくなった。


「(刺されないといいんだが)」


 いま頭の中の恐怖優先順位は

蜂がダントツだった。

スマホとLEDライトを持っていくとキーを抜き

鍵を閉めた。


「(よし蜂はいない、いまがチャンスだ)」


 と思い、車を離れると蜂の羽の音は

聞こえず一安心した。


「(よかった...そういえばここ心霊スポットなんだよな)」


 一旦脅威がさると次に

心霊スポットということを思い出し

恐怖が芽生えた。

入口の付近にでかいお地蔵様があった。


「(でかいな)」


 最初の感想はそれだったが

なぜだろうか、全身に鳥肌が立った。


 ―ゾクゾクゾク


「(なんだこれ...意識しすぎだ)」


 何かあると思ってしまい

恐怖を感じたのだろうと自分に納得させる。

もう一度でかいお地蔵様を見ると

やはり全身に鳥肌が立った。


 ―ゾクゾクゾク


「(やめよう、さっさといくか)」


 いきなりこんなんで大丈夫かと

思いながら階段を下った。

鈴虫? の音や虫の音がすごいする。


「(夏場に来る場所じゃないな)」


 こういう山奥にある場所は整備されてないのが

ほとんどだ、故に夏場は虫だらけ。


 ―ブゥゥゥゥン


 階段を下っていると嫌な音が聞こえた。

俺は確認せずそのままダッシュして駆け抜けた。


「(来るんじゃなかった!!)」


 そう蜂だ、この音は間違いなく蜂だ

そのまま駆け抜けて聞こえなくなると

呼吸を整え歩き始めた。


 ―ブゥゥゥゥン


 まただと思うと

ダッシュし駆け抜けた。


「(こういう場所はもう絶対冬に行く)」


 息切れしながら、歩いていくと

蜂の音に警戒しつつも周りを見渡していた。


「(地蔵だらけだ...)」


 どこを見ても地蔵だった

地蔵で道を作られていた。


「(分かれ道?)」


 目的の場所へ向かう途中

分かれ道があった。

近くに看板はないかとライトで探していると

発見できた。


「(これを登れば良いのか)」


 上へ続く道に歩いていった。

しばらくして水の音が聞こえた。

そして目的の洞窟へとたどり着いた。


「(ここが噂の洞窟か)」


 地蔵がやはり何体か置いてあり

スマホで数枚写真を取ると

確認した。


「(何にも写るわけないか)」


 期待はしていたが、写るわけがなかった

写真は土産として取っておき

車に戻るため元来た道を歩き出した。


「(また蜂から逃げる準備しておかないと)」


 行きがあったんだから当然帰りもある。

俺はそう思いいつでもダッシュできるよう

息を整えていた。


「(あのでかい地蔵...あれは)」


 ―ゾクゾクゾク


 考えるとやはり鳥肌が立った。

なんなんだ、あれはと思っていると。


「(蜂の音がしない)」


 しないのだ、蜂の羽音が

まぁそれはそれでいいんだがと

思いながら登っていくが鳥肌は治まらなかった。


「(なんなんだよ、これ)」


 別に洞窟の地蔵を見ても何も感じなかった

途中の地蔵も同じだ。

でも"あのでかい地蔵"だけは考えるだけで

鳥肌が立つ。


 ―ゾクゾクゾク


「っ!」


 俺は蜂なんかがいようがいまいだろうが

お構いなしに走った。

だけど自分でもペースが遅いことに気づく。


「(なんだこれ、もっと早く走れるだろ)」


 足が重い、いや何かがおかしい

全然進まないのだ。

やっとの思いで息切れを起こしながら

車までたどり着いた。


「っ...はぁ...はぁ」


 ポケットから車のキーを取り出し

解除する。

すぐに車の中に入りエンジンを掛け

クーラーをつけた。


「はぁ....はぁ...」


 とりあえずこんな状態で運転するのは危険だと思い

運転席を倒し横になった。


「(なんだったんだろうな)」


 そんなことを思いつつ目を瞑り

5分くらい経っただろうか、そろそろ出るため

起き上がる。


「(あのでかい地蔵)」


 ふいに見るとでかい地蔵は

来たときと変わらず佇んでいた。


 ―ゾクゾクゾク


 しかし見るとやはり鳥肌が立った

俺はそんな現象が嫌になり車を動かした。






 来たトンネルを出ると登る道に引き返せるようで

ここでUターンも可能だろう。

山道の車線に出る前に一度車を止めた。


「(じゃぁまたコンビニ戻って、朝迎えたらどっか探そう)」

 

 宿でもなんでもいい

疲れたと思いながら道に出ようとしたとき。

不意にルームミラーを見た。











 ―トンネルの奥に目が写っていた。









 俺は息が一瞬止まった。

それはずっとこちらを見ていた。

顔は見えない...しかし目は見える。


「っ!!」


 車を発進させた。

来た山道を下っていった。


「(焦るな、事故の原因になる)」


 できるだけ落ち着かせカーブは

きちんと減速し曲がった。


 ―ゾクゾクゾク


 鳥肌が立った。

さっきの目は本物だ

ルームミラーを見ないと決めても

不意に目が行ってしまう。





















 ―ガードレールの下に目があった。









「(見られている)」


 ずっと見られている

鳥肌はおさまらなかった

不意に自分の腕を見ると毛が立っていた。


「(恐怖してる...落ち着け)」


 いまは運転に集中しろと

自分に言い聞かせるが

吐きそうなくらい気持ち悪くなった。


「(うっ...走ったせいで酸欠か? カーブのせいもあるな)」


 先ほどの疲れがまだ残っていたみたいで

ひどい吐き気が襲った。


「(で、でも停まるわけには...うっ)」


 だがしかし、これ以上は運転に支障が

きたすと判断し

本来はダメだが直線の道の傍らに止めた。


「(早く!!)」


 俺は止めた瞬間すぐに内カギを閉めた。

窓も全てあがっていることを確認し

何もせず目を瞑った。


「(とりあえず、身体を落ち着けさせて運転をすぐに再開しよう)」


 目的地まであと8km、さすがに

この距離を吐き気に耐えながら運転するのは

俺でも不可能だった。


 ―ゾクゾクゾク


 それはすぐに起こった

全身にまた鳥肌が立った。


「(落ち着け、あんなの見るな、思い出すな)」


 ―ゾクゾクゾクゾク


 しかし鳥肌は止まらず

ひどくなっていく。


「(み、見られてる...それも近くで)」


 一度そう思ってしまっては

もう目も開けられない。


 ―ゾクゾクゾクゾクゾク


 鳥肌は止まらず全身を掻きだした。

おさまれとおさまれと自分に言い聞かせて。


「や、やめろ見るなぁ!!」


 気づけば叫んでいた。

俺は既にそいつの視線を感じていた。


「あが....が...」


 ついに喉を掻いた

それでも鳥肌はおさまらず

ひたすら喉を掻いた。

痛みで誤魔化そうとしたのだ。


「ぐげ....あが....あ...」


 痛い、痛いけど

それでも目は開けられなかった。

だが開けなければと思い自分の行動を

整理する。


「(開けたらまず、ハンドブレーキを下ろしてDにして車を動かす)」


 行動が決定すると目を開けた。

視界に何が移ろうが最初の行動通り

ハンドブレーキを下げギアをDにし

アクセルを踏んだ。


「(大丈夫前はいない)」


 前方に視線はなかった。

そのまま進み急カーブがありそこを曲がろうとした直後

その先を見るため左を見た。


















 ―赤い瞳が二つこちらを見ていた。


















































 その後、山奥で事故が発生し

運転手は死亡、首元には掻き毟った痕があり

全身も引っかき傷だらけだった。

夏ということでホラー作品に挑戦。

夏場は幽霊よりも蜂が怖いですよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ