闘技大会予選
いよいよ闘技大会が始まります。
日影視点
いよいよ今日は闘技大会当日だ。
俺はしっかりと準備をしてきているのでまあ何とかなるだろう。
達也なんかはぶっつけ本番とかいってたが大丈夫なのだろうか。
そんなことを考えていると、
「日影君、おはよう。調子はどう?」
と咲先輩が声をかけてくれる。
「咲先輩、おはようございます。まあいつも通りですかね」
「なら大丈夫なのかな?今日ははりきって応援しちゃうね!」
これは咲先輩のためにも負けられないなー。
「ありがとうございます。頑張りますね」
そう言って俺たちは別れ、俺は予選の待機場所へ向かう。
試合はドームで行われ、学園の全生徒に見られながら行われる。
予選は30人で1グループの乱戦方式で、最後まで勝ち残った一人が決勝トーナメントに進める。
1クラス60人で4クラスあるから、決勝に進めるのは8人ということになる。
意外と厳しいんだな。
ちなみに俺は第8グループ、最終グループだ。
そうしているうちに予選の第一グループが始まった。
乱戦形式となると戦い方は様々になってくる。
何も考えずに戦いまくる者から、ひたすら逃げ回る者までいろいろいる。
しかし結局はAクラスのある程度優秀な生徒が広範囲に効果がある能力を使って他の生徒を蹴散らしていくので、最終的にAクラス同士の戦いとなった。
そうして一人目の予選通過者が決まった。
その調子でどんどん予選は進んでいき、予選第4グループとなった。ここには達也と二見がいる。
いきなり予選で当たっちゃったかー。
「予選第4グループ、開始!」
審判の先生の号令で、試合が開始するといきなり達也が動いた。
「強化、パワーアーム!」
達也はそう叫び、強化した右腕を地面に振り下ろす。
すると、地面にヒビこそ入らないがすさまじい振動が全員を襲い、ほとんどの生徒は身動きが取れない。
そうして身動きが取れないでいる生徒たちを達也は次々と殴り飛ばしていく。
そんな中、二見も負けていない。
「テンペスト」
二見がそう言うと、風系統広範囲能力であるテンペストが発動し、その名のごとく強烈な嵐が生まれほとんどの生徒を吹き飛ばしていく。
そうしているうちに結局達也と二見だけが残った。
「二見やるなー、けど負けないぜ」
「私だって負ける気はないわよ」
二人ともやる気満々だ。
…………
しばらく沈黙が続く。
「クラウド」
沈黙を先に破ったのは二見だ。風系統補助能力クラウドで、雲が発生する。
達也は嫌な予感がし、すぐに勝負を決めようと焦った。
「強化、スピード!」
達也は強化系能力で移動速度を上げ、二見に近づき殴りかかる。
しかし二見はそれを読んでいた。
「ソリッドクラウド」
先ほど発生させた雲を風系統補助能力ソリッドクラウドで固形化して達也の攻撃を防ぐ。
さらに発生させた雲をすべて固形化して達也を取り囲む。
「ライトニング」
固形化した雲から雷が発生したようで、一瞬光りそして決着となる。
「試合終了!勝者、二見美紀!」
審判の先生の宣言とともに会場から拍手が起こる。
「やった!勝った勝ったー!」
二見はものすごく嬉しそうにはしゃいでいる。
達也は……一応大丈夫そうだな。回復班に回復されて元気そうだ。
こうして第4グループが終わり、その後もどんどん試合が進んでいく。
第7グループでは加藤が出ていたようだが、俺は次のグループが出番なので見ることができなかったが惜しくも敗れたようだ。
そしていよいよ俺の出番がやってきた。
俺は他の生徒と共に闘技場に出ていく。
準備は問題ない。いつでも来い!
「最終第8グループ、開始!」
先生の試合開始の合図でそれぞれが戦い始める……かと思われたのだが俺の周りを他の男子生徒全員が囲んでいる。ちなみにこのグループの女子生徒はこちら側にはかかわりたくなさそうにしている。男子は大体20人程度か、Aクラスが7人。てかこの組のAクラスみんな男子かよ。何か恨まれるようなことしたかなー。
だがそんな状況でも俺は動じない。
そんな俺の様子を見て、取り囲んだ男子生徒たちもどう動くか迷っているようだ。
時間がもったいないからすぐに終わらせよう。
「強化、パワーアーム」
俺は先ほど達也が使用したのと同じ強化系能力を発動する。
ただし、俺と達也では精神力が異なるため、威力が変わってくる。
俺は強化した右腕をその場で振りぬいた。
すると、腕を振りぬいたことによって衝撃波が生まれ、周りを取り囲んでいた生徒達だけでなくその奥の女子生徒達までも吹き飛ばした。
そして闘技場には俺だけが立っていた。
「し、勝者、神谷日影!」
驚きのあまり静かになっていた会場から、一気に歓声が沸き起こる。
その歓声はしばらくなりやまなかった。
「ちょっと派手にやりすぎたか」
そう俺はつぶやいた。
咲視点
「すごい……すごすぎる」
私は日影君の試合に驚きを隠せずにいた。
いくら新入生代表だからって、あんな強さは異常だ。
それはみんなが感じ取っている。一年生の持つ強さではない。
あれは私たち三年生の中でもほんの一握りの生徒しか到達できない領域のそれだ。
いや、それ以上かもしれない。
私も勝てるかどうかわからないわ。
そんなことを考えながらも私は胸の高鳴りが抑えられなかった。
私が気になっていた彼はやっぱり只者じゃなかった。
私は彼と話したくてすぐに待合室に行った。
そこにはいつもと何ら変わりない日影君がいる。
彼は私に気づくと近づいてきてくれた。
「日影君、おめでとう!」
「ありがとうございます。咲先輩が応援してくれたおかげです」
彼はそう言ってくれる。
彼は優しいんだ。
「ううん。日影君ほんとにすごかったよ。次も応援してるね!」
「ありがとうございます。次も頑張りますね」
彼は優しく微笑んでくれた。
私は彼のそんな笑顔に自分が満たされていくのを感じた。
いつまでもこの笑顔を見ていたいな。
そう、私は思った。