幕間 鍛錬 / 彼のこと
ちょっと短いけどつなぎの話です。
鍛錬
日影視点
俺たち一年生にとって初めての闘技大会まであと一週間となり、それぞれが準備や自主的なトレーニングに励んでいた。
俺も新入生代表を務めたので、さすがに下手な姿は見せられない。
ということで日々のトレーニングよりハードな鍛錬を行っている。
朝は普段通りで、6時に起床し、まず10キロ程度のランニングをする。
次に、強化系能力を調整し、自分の思い通りの力が出せるようにする練習を行う。
朝の鍛錬はこの程度だ。
その後は学園へ行き、普通に授業を受ける。
夕方に授業が終わると、帰宅し再び10キロ程度のランニング、強化系能力の練習を行う。
これは基本的な鍛錬なので、一日2回行うようにしている。
次に、強化系能力を用いて、家の裏に広がる山の中で様々な動きをする練習だ。
脚力を強化することで素早く、長い距離を一度に移動できるようになるが、うまく調整しないと直線的な動きばかりになってしまう。予測されにくい動きをするための鍛錬というわけだ。
師匠がいればさらに実践的なこともできるのだが、今は師匠は旅に出ているためそれはあきらめる。
なのでこの内容をひたすら繰り返す。
何事も基本は反復練習だ。
そうして闘技大会までの一週間はあっという間に過ぎていった。
彼のこと
咲視点
私は日影君のことをまだ全然知らない。
この前お昼ご飯を一緒に食べた時にも、彼はすごく辛いのを隠しているように感じた。
もしかして、私迷惑に思われちゃってるかな。
……はぁ。
「……さきー……咲!!」
「わぁ!びっくりした。何よ穂香?」
「何よ穂香?じゃないよ。何回呼んでも気づかないんだから。何ぼーっとしてるのよ」
そんな何回も呼ばれてたのか。
全然気づかなかった。
日影君のこと考えてると他のことを忘れちゃうんだよなー。
「何でもないよ。」
「どうせ神谷君のこと考えてたんでしょ。はー、どんだけ好きなのよ。まだ出会って2週間くらいなのに」
「ち、違うよー!す、好きとかそんなんじゃないんだって!」
「いやいや、まあいいけどさ。咲がこんな風になるの初めてだから私は応援してるけどねー」
うー。
穂香には何を言っても無駄な気がする。
好きとかそういうのはよくわかんないけど、日影君のことはやっぱり気になるんだよね。
でも……
「私って、日影君のこと何も知らないんだよね。いつも日影君辛いのを我慢しているように見えて……。なにか抱えてるように見えるけど、私にはそれがなんなのかもわからなくて」
私じゃ力になれないのかな……。
「はあ、咲は深く考えすぎなのよ」
「そうなのかな」
「なんならとっ捕まえて話させちゃいなさい」
穂香はむちゃくちゃ言うなー。
でもなんかすっきりした。
「そんなことできないよー」
私はそう言って苦笑いを浮かべる。
そうだ。彼が何を抱えているのかまだ私にはわからないけど、いつかきっと話してくれるよね。
私、頑張って日影君の力になってみせる。




