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世界が赤く染まる日  作者: 夜桜
第一章 入学編
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入学式Ⅱ

入学式Ⅱです。生徒会長視点となります。

入学式の一日はこの話で終わる予定だったんですが、意外と長くなりそうです。

「生徒会長挨拶。生徒会長、水野咲」

「はい」


私は返事をして舞台へ歩いていく。

私はこの舞神学園の生徒会長なのだ。

本当は目立つことはあまり好きじゃないんだけど、友人や先生に強く押されてしまって、仕方なく引き受けた。

新入生は私に向けて尊敬や憧れといったまなざしを向けてくる。

私は、そんな人に尊敬されるような人間じゃないのに……。

考えるのはやめてさっさと挨拶を済ませちゃおう。

そう思い、私は舞台へ上がった。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。生徒会長の水野咲です。皆さんがこの舞神学園の生徒になられたことを、私は心から喜んでいます。」


私が舞台に立ち、話し始めると、新入生や在校生からの視線が集中していることがより分かる。

そんな中、新入生の中に一人目に留まった子がいた。彼も他の生徒たちと同じようにこっちを見ているけど、そこには尊敬や憧れといった感情は感じなかった。私は不思議とそれが嫌ではなかった。

いけない、挨拶に集中しなきゃ。

私はできるだけあの子のことを気にしないようにして、挨拶に集中する。


「これから、私たちと共に良き学園生活を歩んでいきましょう」


やっと挨拶が終わり、私は自分の席へ戻っていく。

あの子、なんて名前かな。

私はふとそんなことを思ってしまう自分が急に恥ずかしくなった。

何考えてるのよ私……。

話したこともないし、どんな子なのかもわかんないのに。

あー、私どうしちゃったんだろ。

私はなんとか自分を落ち着かせ、式の進行を待つ。

次は新入生代表の挨拶だったかな。


「新入生代表挨拶。新入生代表、神谷日影」

「はい」


すると、私が気になっていた彼が席を立ち舞台へ歩いていく。

うそ……あの子新入生代表だったの。

やっぱり只者じゃないのかな。

新入生代表なら主席合格だし。

耳にかかるかどうかの黒髪に凛々しい顔立ち、そして真っ赤に燃え上がる炎のような瞳。

そんな彼に、女子生徒たちからの視線が集まっているのがここからでも分かる。

私も彼から目が離せずにいた。

彼は舞台に上がり、原稿を持ちながら話し出す。


「あたたかな春のおとずれと共に、私たちは舞神学園の入学式を迎えることができました。本日は、このような立派な入学式を行っていただき、ありがとうございます」


その静かな中に決意を感じさせるような声に、生徒たちは釘づけになる。

そこからは自信に満ちた雰囲気を感じさせる。

しかし、私にはその奥に何か悲しみを持っているように感じた。

気のせいかな。

神谷日影君かー、どんな子なのかなー。

……って、私あの子のこと気にしすぎ。


「悔いのない学園生活が送れ、しっかりした行動が取れるよう自分自身を向上させていきたいと思います」


彼は代表の挨拶を終えると、自分の席へ戻っていく。

在校生の中にも、頬を赤らめながら彼へ情熱的なまなざしを送っている女子は少なくなかった。

彼、これから大変だろうなー。


その後、事務的な連絡を終えて、入学式は閉式となった。

式が終わり、先生の指示を受けながら皆講堂から出ていく。

今日は、あとホームルームだけだ。

私は何か用事があるらしく先生に呼び出されているけど。

何だろう。生徒会関係かな。






ホームルームが終わった後、私は職員室へ向かった。


「失礼します」


私は職員室の扉を開け、中に入る。


「おお、水野わざわざすまんな」


声をかけてきたのは大久保先生、たしか新入生のAクラスの担任になったはずよね。

私はてっきり生徒会担当の山田先生からの用事かと思ったんだけど。


「いえ、大丈夫です。それでなにかありましたか?」

「いや、うちのクラスのやつを一人お前に会わせておこうと思ってな。呼んであるからもうすぐ来ると思うんだが」

「えっと、なんで私なんでしょうか」

「毎年の決まり事だよ。生徒会長に新入生代表を引き合わせることになってるんだよ」


え、それってつまり……。


「失礼します」


私が状況を飲み込むのと同時にその声が聞こえ、私は振り返ってしまう。

そこには、職員室の扉を開けた新入生代表の神谷日影君がたっていた。

そして彼はこちらに近づいてくる。

私の心臓はもうバクハツ寸前です。


「おお神谷、来たか」

「はい、遅くなってしまいすみません。それで用というのは」

「こちらの生徒会長さんと会ってもらおうと思ってな。ほら、挨拶しな」


そういうと彼は体ごと視線を大久保先生から私に移す。


「挨拶が遅れてすみません。一年、Aクラスの神谷日影です。よろしくお願いします」


彼は落ち着いた感じで、すごく丁寧に頭を下げてくれた。


「こ、こちらこそよろしくね」


私は本当に緊張していて自分の名前を言うのすら忘れてしまっていた。

あー、私のばかー。


「まあこんなとこじゃ落ち着いて話せないだろうし、学園の案内でもしてもらって来い。水野お願いできるか」

「は、はい。わかりました」


大久保先生、まじですかー!?

どうしよ、すごい緊張します。

……って私どうしたのよ!

恋する乙女じゃあるまいし。


「ありがとう、よろしく頼む」


大久保先生にそういわれ、私たちは職員室を出て学園を回ることになった。



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