表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が赤く染まる日  作者: 夜桜
最終章 世界が赤く染まる日
25/27

生き残った二人

凌視点


僕の目の前には月本才がいる。

僕は彼を長年探し続けていた。

僕たちは同じ村で生まれ、そして彼は僕の弟のような存在だった。

共に修行し、共に強くなることを、村を一緒に守っていくことを誓っていた。

だけど、僕たちのそんな生活はある日幕を閉じることになった。


あれは才が舞神学園の一年の春あたりのことだった。

その時の彼は、舞神学園に主席で合格し、僕が残した舞神学園での記録を塗り替えっていってやるなどと楽しそうに過ごしていた。

あの日、僕と才はいつものように一緒に修行していた。

すると、どこからか黒い男たちが現れ、村を襲い始めたんだ。

すぐに異変に気付いた僕たちは村にかけつけ、その男たちと対峙した。

しかし、その人数の多さに僕たちはかなり押されていた。

このままでは勝ち目がないと悟った村一番の能力者だった村長である僕の父は、僕たちに逃げるよう言う。

だが、僕たちは村を見捨てて逃げることなどできないと、その場で戦い続けようとした。

しかし、父は僕と才を両腕に抱え、近くの川までくると僕たちを流した。

僕たちは、すでに消耗していてその川の流れに逆らうことができず、ただ流されていった。


そして数時間後、僕たちはなんとか村に戻ると、そこには村人たちの死体の山がだけが残されていた。

血の匂いでむせかえるようなそこの空気に、僕たちは絶望した。

その日を境に、僕の前から才は姿をを消した。


そして今彼と僕は向かい合って立っている。

あれから2年、彼はもう昔の彼ではない。

すべてに絶望し、すべてを破壊せんとするその瞳は、あのころの輝きを微塵も感じさせないただ冷たいだけの瞳だった。


「才、僕は君を絶望から救いたいと願い、君を探していた。君はとても優しかったよ。どうかあの頃の君に戻ってほしい」

「あの頃?お前は本気で言ってるのか?凌。俺たちに戻る場所なんてない。俺たちには何もないんだよ」


才は冷たい声でそう言う。俺は続ける。


「戻る場所はもうないかもしれない。でも、僕は君とまた過ごしたいんだ。あの時からずっとそれを望んで君を探してきた。僕にとって君はかけがえのない家族だと思っているから」


彼はそんな俺の言葉に表情一つ変えずに答える。


「凌、お前は確かに俺の兄貴みたいな存在だったよ。だが今はただの敵だ。俺はお前を排除する」


彼は深い深い闇の底にいるように見える。

彼の深い絶望は、周りのすべてを巻き込みながら、破壊を繰り返すだろう。

僕は彼を止めて、彼を救いたい。

今更僕にそんな資格があるのかわからないけど、僕がやらなくてはならないんだ。


「凌、お喋りはここまでだ。」


彼はそういうと瞬時に僕の後ろに移動したと思うと、闇系統能力シャドウエッジを放つ。


「くっ……やるしかないのか」


僕はそうつぶやきながら彼の攻撃をギリギリで躱す。

そして、すかさず能力を発動する。


「アブソリュートゼロ!」


僕は水系統上級能力アブソリュートゼロを用いて彼を氷漬けにしようとする。

しかし、


「トリック」


とつぶやくと、いつの間にか僕の背後にいた。

僕は何が起こっているかわからぬうちに彼の闇系統能力シャドウストライクで背中を切り裂かれた。

空間系能力か……。


僕は消えかける意識を、なんとか保ちながら彼と距離をとり彼の姿を見る。

彼の体からあふれ出す闇に、僕は恐怖を覚えた。

だけど、ここで立ち止まるわけにはいかない。

僕があきらめてしまえば、才はこのまま闇の中に堕ちていってしまうだろう。

そんなことはさせやしない。

僕は賭けに出ることを決めた。これを使えば僕も無事でいられるかわからないけど今はそんなことを言っている場合ではない。


「スピリットバースト!」


僕がこの能力を発動すると、僕の姿は消失した。


「な、俺と同じ空間系能力か。小賢しい。ならば、イーヴィルアイ」


彼はすべてを見破る邪眼で、僕の姿を追おうとした。

しかし、それでは僕を見つけることはできない。空間系能力は自分の体をどこかに移し替えることなどができるが、僕が使ったのはそれではなく光系統能力だ。

光系統最上級能力スピリットバーストは、その危険性からはるか昔に封印されたとされている能力だ。

それは自分の体を光子に変換し、肉体自体を消す能力だ。

肉体がない状態に精神が耐えられなければ、その時点で僕はこの世から消え去ってしまう。


その状態で僕は光系統能力ヘブンズレイを放ち続ける。

どこからともなく現れる強力な光線に、才はなすすべもなく焼かれていく。

そして彼はその場に崩れ落ちた。


僕は能力を解除し、彼の前に姿を現す。


「ばかな……この俺が、敗れる?そんなことがあってたまるか!」


彼は地面をはえずりながら、僕を憎しみに満ちた目で見上げてくる。

彼は、もう……帰ってこれないのか。


「俺は全てを許さない!俺は世界を壊し続けてやる!」


才のその眼は、すでに人間の物ではなく、闇に堕ちた魔物そのものだった。

僕は、そんな彼に


「すまない。僕は何もしてあげられなかった。本当にすまない」


そう言い、彼に光系統最上級能力セレスティアルレイを放ち、彼の体を強力な光で焼いた。

僕は、彼に何もしてやれなかった後悔と悲しみを感じながら、その場から立ち去った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ