国家代表選抜大会Ⅰ
日影視点
国家選抜代表大会。地域、組織、年齢、性別など関係なく、ただ実力が認められた者のみが集まりその中で頂点を決める。
そしてより強き者は国のため、世界のために力を尽くすことになる。
俺と咲は今、その会場である、舞神学園のドームに来ている。
少し前に闘技大会での事件があったため、俺たちはこの場所にいい印象は持っていない。
しかし、そんなことを言ってる場合ではない。ここには国に実力が認められた人間が集まっている。気を抜けばケガだけでは済まないかもしれない。
今回の国家代表選抜大会は特別回で、普段の代表選出は1名なのだが、今回は3名となっている。これだけ聞くとハードルが下がっているように思われるが、今回は緊急であるために代表になった際に出る報酬が今までの倍以上になっているらしく、今まで参加していなかった猛者たちも参加してくるらしい。
とはいえ、師匠クラスに到達している者も今のところ見当たらず、俺は心配することも今のところない。
咲の様子は……大丈夫そうだ。
彼女も修行を積んで成長したし、この程度では怖気づかないのだろう。
咲は俺に笑顔を向けこう言う。
「これなら私でもいい線いくかもね!」
おいおい、他のやつからすごい目で見られてるぞ。っていっても、本当のことだしいいか。奴らもすぐにわかる。
そうこうしているうちに開会式が始まった。
開会式は特に形式ばったモノではなく、試合の方式などの説明のみだった。
説明によると、予選は8つのグループにわかれて、それぞれのグループでの乱戦方式。上位2名が決勝に進む。決勝はトーナメント方式で3位まで決める、といったもので、体力や精神力の総量に問題がないか試すために今日一日ですべての試合を終わらせるらしい。今日一日で国家代表が決まるとあって国のお偉いさん方や、国家代表の総長も来ているらしい。
ルールなどは闘技大会とほとんど変わらないが、一つだけ大きな違いがあるとすれば、試合の結果それぞれが大きなケガや障害を負っても国は保証しないということくらいか。これだけの実力者が揃えば、そういった試合も出てくるだろう。特に、俺と試合した奴は最低でも全身火傷にはなってしまうかもな。まあ加減はするつもりだが。
俺と咲はその場で別れ、それぞれの試合の準備をすることにした。
俺は第2グループ、咲は第7グループだ。
いきなり同じグループじゃなくてよかったと胸をなでおろしていた咲の顔を思い出し、少し顔がにやつく。いかんいかん。集中集中。
そうして第一グループの試合が始まった。
当たり前なのだが、その試合は俺たちの学校の闘技大会などとは比べ物にならないくらいレベルが高かった。
具体的には中級能力が乱発されるなかで上級能力をどこで織り交ぜるか、またどう凌ぐか、といった感じだ。しかしほとんどの者は上級能力の発動にそれなりの時間を要するので、隙が生まれ狙った相手に集中している間に他の者につぶされるといった光景もしばしば。
しかし、俺はそんな中で一人、他の者とは明らかに別格である男を見つけた。あんなやつ最初にいたかな、と思いつつ彼の試合を集中して見る。彼は状況に応じて的確に能力を発動していく。
他の者は使おうともしない初級能力から上級能力まで、しかも何のタイムロスもなく発動できる。それだけでは済まず、彼は風系統、光系統、強化系統の三種類の能力を高いレベルで扱っていた。あんな真似、師匠レベルでもたやすくできないだろう。
彼は一体何者なんだろうと疑問に思っていると、近くの男たちが話している声が聞こえてきた。
「おい、やっぱりあいつ只者じゃねえよ、噂はほんとだったんだ」
「あいつって、あの一人やたら余裕そうに戦ってるやつか。何か知ってんのか」
「ああ。あいつ舞神学園時代に俺の同期だったんだけど、その時から飛び抜けていて学園始まって以来の逸材として最強の称号を思いのままにしていたんだ。だけど卒業後の消息は不明になっていたんだよ。名前は如月凌。なぜ今さらになって出てきたのかしらねえけど、あいつはやばいぞ」
如月凌か。そんなやつがいるとは。さすが代表選抜。
あれは咲にはすこし荷が重そうだな。
第一グループはある程度人数が減ったところで如月凌が風属性上級能力エアリアルブロークンを発動し、空気を凝縮させて爆発をおこし、残りの人間をすべて吹き飛ばした。
……これって2位どうやって決めるんだ。
しかしそんな心配は無用だったようで、記録映像から爆発に一番耐えていた者を選んで2位としていた。
これなら俺も気にせず戦えそうだな。
そして次は俺の出番だ。
試合のためドーム中央の闘技場に出ていく。周りを見渡したがさっきの如月凌のような奴は流石にいないみたいだ。でも一人だけ結構強いやつはいるな。咲くらいだろうか。
そしてもう一度試合のルールの確認が行われ、その後それぞれ闘技場内の好きな場所に移動する。
俺は面倒だったのでその場に留まった。
そして審判の試合開始の合図がでる。
「第2グループ、試合開始!」
その審判の合図が出るとすぐに数人の男がこちらに向かって全力で走ってくる。
まあ俺の見た目はたしかにそんな強そうに見えないからな。
そのうちの一人は
「小僧、俺に見つかったのが運のつきだったなぁ!」
とか言っている。はぁ……
俺は心の中でため息をつきながら、彼らの射程内に入らないうちに終わらせようと思い、能力を発動する。
「フレイムウェイブ」
俺がそうつぶやくと、炎の波が発生し彼らを襲う。
彼らはそれぞれ悲鳴を上げながら炎の波に飲み込まれていく。
俺は頃合いをみて能力を解除し、彼らを死なせないようにした。いくら中級能力でも俺の炎系統は簡単に人間の命を奪ってしまうからな。
その光景を見た周りの奴らや、試合を観戦している人達は驚きを隠せずにいる。
「お、おい。あいつ炎系統……」
「あれが噂の、舞神学園の……」
そんな俺を見て自分から攻撃をしてくるものなどいるわけもなく、俺にできるだけ関わらないように戦闘を続けようとしているのが分かる。だが俺がそんなことを許すわけがない。
俺は強化系統能力瞬歩を使って高速で移動しながら、炎系統能力フレイムを対戦相手が視界に入るたびに発動し続け、彼らの足元から炎の柱を発生させる。
彼らはそんな迫りくる恐怖から逃げるためかもはや戦闘をせず逃げ回っているようにしか見えない。
俺は一人一人追っていくのが面倒になり、広範囲能力を使うことにした。
「ファイアストーム」
俺は炎系統能力ファイアストームで闘技場の4分の一ほどを飲み込む炎の嵐を発生させて、逃げるために俺と真逆の方にかたまっていた対戦相手たちを全員まとめて包み込んだ。
俺が能力を解除したところで、試合終了のコールがかかる。
「勝者、神谷日影! 相原加奈!」
このもう一人の勝者である相原加奈は、俺の近くでぼーっとしている。
そして急にはっとしたように様子で、「あ、終わったか」とつぶやいたかと思ったら俺に声をかけてきた。
「いやー、派手にやるねー君。ここでぼーっとしててよかったー」
「あなた……始まってからずっとここにいましたよね」
俺は半ばあきれ気味にそう言うと
「予選面倒でさー、君があまりに強かったからぼーっとしてればいいかと思って。まあおかげで何もせずに終わったし、ありがとねー」
と、彼女はだるそうに待合室の方へ歩いていった。
この人、本当に強いのかな。そう、この人がこの組で唯一強者の雰囲気を感じた人物なのだ。
まあ決勝でわかるだろう。
その後、咲も無事問題なく予選を通過し、俺たちは決勝トーナメントに臨むことになった。




