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世界が赤く染まる日  作者: 夜桜
第一章 入学編
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入学式Ⅰ

入学式の一日は2話に分かれて投稿します。

―― 国立舞神学園(こくりつまいがみがくえん) ――

ここは、国の中でも選ばれしエリートのみが入学を許される超難関校だ。

選ばれしエリート、それはただ学問に長けているだけの者を指しているわけではなく、多様な能力が求められる。

そしてこの学園への入学のための必須条件に、異能の力と呼ばれるものがある。

この世界には、科学的に証明することのできない能力を持った人間たちがいる。

その力は異能の力と呼ばれている。

ここ、国立舞神学園では、この異能の力を持った少年・少女たちを集め、将来異能の力を世の中で役立てることができる人材に育てていくことを教育方針としている。


俺は今、そんな国立舞神学園の校門をくぐらんとしている。

俺、神谷日景(かみやひかげ)は厳しい入学試験を突破し、この学園の生徒になることに決まったのだ。

今日はその入学式である。


「……ようやくここまで来た」


俺は心の中でそうつぶやくと、校門をくぐり、国立舞神学園の地を踏んだ。






一年生の教室は第一校舎の4階にあるようで、俺はすぐに教室に向かった。

一年生のクラス分けは入学試験の結果で既に決まっており、事前に知らされている。

俺はその中で最も優秀な者が集まるAクラスに配属されている。


教室に入ると、すでに半分以上の席が埋まっており、俺は自分の学籍番号を示す紙が貼られた席につく。


「今日からここにいるやつらと共に学園生活をおくっていくのか」


俺はそんなことを考えながら教室を見回すが、特に目を引くような人は見当たらない。

ここでいう目を引く人というのは、より強い能力を持っている人物のことで、こういった人はそれぞれが独特のオーラを放っているのである。

俺の師匠はとんでもないオーラを放っていた。


俺は考えるのをやめ、時間まで読書をすることにする。






しばらく読書を続けていると、30代半ばと思われる男性が教室に入ってきた。


「全員そろってるな。俺が今日からここの担任になる大久保仁(おおくぼじん)だ」


彼は教室に入ってくると、そのように自己紹介した。


「早速だが入学式に移る。講堂に移動だ」


俺たちAクラスの面々は、大久保先生の指示に従って講堂に移動する。

その途中で大久保先生が声をかけてきた。


「お前が神谷だな。新入生代表の挨拶をお前がすることになっている。これが原稿だ」


そう言うと、上質な紙を一枚渡してきた。


「しっかりやれよ」


俺はどうやら新入生代表だったようだ。つまりは主席合格である。

薄々そう思っていたのだが、このタイミングで伝えるのは遅すぎるだろう……。とはいえ、代表の挨拶くらいは軽くこなしてこよう。


こうして俺は、新入生代表として講堂に向かっていくこととなった。







講堂にはすでに在校生である2年生、3年生は集まっており、新入生もBクラス、Cクラスは集まっている。この学園は1つの学年につき、AクラスからDクラスの4クラスとなっている。

俺たちAクラスが講堂に入り、そのすぐあとにDクラスも入ってきた。


入学式が始まると、校長や国のお偉いさんの退屈な話がしばらく続き、その後生徒会長の挨拶にうつる。


「生徒会長挨拶。生徒会長、水野咲」

「はい」


司会の先生の呼びかけに対し、澄んだ声で返事をした生徒会長の水野咲みずのさき先輩は席を立ち、舞台へと歩いて行く。

腰のあたりまで伸びた美しくつやのある黒髪を揺らしながら歩く姿に、誰もが見入ってしまう。俺もその大多数の一人で、彼女から目を離すことができなかった。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。生徒会長の水野咲です。皆さんがこの舞神学園の生徒になられたことを、私は心から喜んでいます。」


水野先輩は、落ち着いた澄んだ声でそう話し始めた。

彼女の青い瞳からは、俺たち新入生に向けた優しさが感じられ、彼女の一言一言は緊張した新入生の心を落ち着かせていく。

俺は、そんな彼女からその瞳と同じ青いオーラを感じ取った。

生徒会長ともなれば、やはりその実力は素晴らしいのだろう。


「これから、私たちと共に良き学園生活を歩んでいきましょう」


そんなことを考えている間に、生徒会長の挨拶は終わってしまった。

彼女は自分の席へ戻っていく。

次は俺の出番か。


「新入生代表挨拶。新入生代表、神谷日影」

「はい」


俺は舞台へ向けて足を進めた。



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