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世界が赤く染まる日  作者: 夜桜
第三章 国家代表選抜大会編
19/27

前日

日影視点


気づけば国家代表選抜大会はもう明日だ。

今回は、師匠がいるということもあって舞神学園で行われることになっている。

またあのドームか。あそこは、どうしても闘技大会のときの事件を思い出させる。俺はそれでも大丈夫だけど、咲は大丈夫かな。彼女の方が俺よりも怖い思いをしていたし。

そんなことを思っていると、師匠からの風系統上級能力、ウインドインパルスが飛んでくる。今俺は師匠と修行中なのだ。集中しなくては。


「ファイアウォール」


俺は炎系統能力ファイアウォールを使い、炎の壁でウインドインパルスを相殺する。俺の精神力であれば中級程度の能力でも他の人が使う上級能力と同程度の威力が出せるものが多い。とはいえ制御が難しいのだが。


「よし、炎系統能力の制御もかなりいい状態になってきたな。これならこの前のように倒れることもあるまい。今日はここまでにしよう。」


俺が炎系統能力者だということはすでに国内の主要な機関には伝わっているらしく、俺はこれまでのように能力を隠さずに戦える。まあ、世界でただ一人の炎系統能力者となってしまったわけだから嫌でも注目されそうだがな。

咲の修行ももう終わるかな。

俺は咲の方に向き直る。彼女はその美しい髪を揺らしながら戦っている。俺はついその姿に見とれてしまう。

彼女は修行相手の大久保先生の放った光系統能力ライトクロスによる複数の光の欠片をあっさり躱す。しかし、ライトクロスでは精神力の込め方によって光の欠片の数を制御できるため、大久保先生が精神力を込めることでさらに多くの光の欠片が彼女を襲う。

しかしそれに彼女が動じることはない。


「アブソリュートゼロ!」


彼女は水系統上級能力をあっさり使う。

彼女はあの事件の時と比べ、はるかに強くなっている。普通であれば上級能力の発動時間には莫大な時間がかかるのだ。あの時の彼女も上級能力の発動には時間がかかっていた。

それが今ではここまで速く、そして威力を落とすことなく発動できる。師匠や俺なんかは別だがここまでの速度で上級能力を発動できる能力者は、師匠曰く世界にもあまりいないそうだ。

彼女の発動したアブソリュートゼロには闇の性質が付加されており、あたり一帯を絶対零度で襲いながら光の欠片も無効化していくという恐ろしい状況だ。大久保先生も顔を青くしながら必死に後退している。


「お、おいおい!あんなのくらったら死ぬぞ!」


大久保先生がそう叫んだところで咲の修行も終わりだ。

これなら咲もそうそう負けることはなさそうだな。


「日影!帰ろっ」

「うん。師匠、俺たちは先に帰りますね」

「おお、お疲れ様。あんまり遅くまでいちゃついてちゃだめだぞー。本番は明日なんだから」


師匠はニヤニヤと俺たちを見ながら言う。

俺たちはそんな師匠のいじりにもだいぶ慣れたので、適当にやり過ごして出ていった。






里香視点


私は大会前最後の修行を終えて出ていく日影と水野君の姿を見ながら、自分を責める気持ちに襲われる。

日影の目は少し前と違い復讐に囚われておらず、ただ大切な人を守りたいという思いで動いていることが私には分かる。そんな彼を、私は戦場に送り出さなくてはならないのか。彼だけではない。彼の最も大切な人、水野君をも戦場に立たせようとしている。

あの二人はおそらく国家代表に選ばれる、私はそう思う。それは彼らにとって、辛い道でしかないはずだ。私ができるのはあの二人への風当たりが強くならないように動くことくらいだ。

私はそれでも、成長した弟子とそのパートナーが手を取り合って世界を変え、自分たちの力で幸せな生活を作り出してくれると信じている。日影の心を動かした水野君と、そんな彼女を守ると誓った日影。彼らならきっと。

私はそんな根拠も何もない願望を、自分の胸の中で膨らませていくのだった。






咲視点


私と日影は修行を終えて一緒に帰っている。日影は帰り道が真逆なんだけど、瞬歩を使えば一瞬で着くからといっていつも私を家まで送ってくれる。私はそんな彼と一緒にいられる時間が本当に幸せに感じる。


「明日はいよいよ代表選抜だね」

「ああ。まあ師匠も多分大丈夫だって言ってたから何とかなるよ。咲もホントに強くなったし」

「ありがと!でも日影君には全然追いつけないな。日影君あれで本気じゃないんだもんね」


彼は里香先生との修行の時でさえ力をセーブしている。本人はそういう制御の練習だと言っているが、全力で能力を使ったらどうなってしまうのか、私には想像できない。


「そんなことないさ。俺と咲は能力も戦い方も違うんだから、咲はこれでいいと思う」


彼のそういった言葉に私はいつも励まされる。彼が言うと他の人に言われるよりも、より心に響く。私は嬉しくなって彼の腕にくっつく。彼は少し照れてるけど拒むことはせず一緒に歩いてくれる。

私は日影の力になりたい。彼ともっと近づきたい。ずっと一緒に生きていきたい。だからもっと強くならなきゃ。

私はひそかにそんなことを心に誓うのだった。




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