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世界が赤く染まる日  作者: 夜桜
第二章 闘技大会編
14/27

私はあなたが

咲視点


あれから一週間、私は日影君と会えずにいる。

私は彼に会う勇気がないんだ。


彼は、私に目を向けることなく、ただ彼の道を歩んでいく。

だからきっと彼は私のことを拒絶するだろう。

私はそれが怖いんだ。

それなら彼と会わない方がいい……。


そう、思っているはずなのに。

私の心が、彼を求めているのを感じる。

私は彼の笑顔が見れればそれでいい。

彼の声が聞ければそれでいい。


なのに彼はどうしてあんなにも遠くにいるんだろう。

いや、私が距離を作っちゃったのかな。

もうどうしたらいいのかわかんないよ。




授業が終わり、教室から出るとそこには朝倉君と二見さんがいた。

彼らは話があるというので、誰もいない生徒会室に行くことにした。

私達3人しかいない生徒会室は、心なしか重い空気になっているように感じる。


「水野先輩、どうして神谷君に会いに来ないんですか」


二見さんが私に尋ねる。

私だって会いたいよ。

でも、私は……。

私が何も言えないでいると彼女は続ける。


「先輩はずるいですよ。神谷君はあなたにだけ優しい笑顔を向けて、私にはそんな顔見せてくれなくて、それでも私は彼から逃げたりはしないです。あなたは逃げてる。今、日影君はすごく苦しんでます。私たちのためにすべてを話してくれたけど、自分が近くにいたら私達が苦しむとかそんなことを思ってる。そんな彼の気持ちがわかんないんですか。本当は私が何とかしてあげたいけど、私じゃダメなんですよ……」


そこまで話したとき、彼女の瞳には涙がたまっていた。

そして彼女は、ごめんなさいと言ってその場から立ち去ってしまう。

困った様子の朝倉君がさらに私に話しかける。


「すみません。先輩。あいつも悪気があるわけじゃないんですけど、日影のことを大事に思ってるやつなんで」


それはすごい伝わってきたわ。

私は彼女のように強くはいられない。


「俺が言いたいのは、日影に今何かできるのは先輩だけってことっす。恥ずかしい話、俺たちじゃ日影に何もしてやれなかったんですよ。だけど先輩は違う。日影はあの日も、先輩にだけ謝って出ていきました。そしてあいつが一番優しい顔をするのも先輩を見るときです。だから、今あいつを助けてやれるのは先輩だけだって俺は思います。そんだけです。二見が心配なんでいきますね。わざわざすみませんでした」


彼はそう言うと、生徒会室から走って出ていった。

二見さんも朝倉君も、日影君のことを本当に大切に思ってる。

彼のために私のところに来て、何とかしようとしている。

私は本当にこのままでいいの?日影君のためにも、自分のためにも。

いいわけがないよ。だって、私は日影君に会いたいって思ってるんだもの。日影君と一緒にいたい。

私は日影君が……好き。好きなんだ!


私は今までくすぶっていた何かが吹き飛んだように感じた。

はやく彼に会いたい。

その一心で気づいたら生徒会室から飛び出していた。



私は彼を探し回る。

どこ、どこなの……!

そしてようやく、一年生の教室の前にいる日影君を見つけた。

日影君、日影君!

心の中で叫びながら、彼に向っていく。

あと少しで……。

そう思ったその時、私は背後から誰かに口をふさがれ、そして意識が消えていく感覚に襲われた。






穂香視点


私は今生徒会室の扉の陰に隠れてる。

ひっじょーーに気まずい場面に遭遇し、とりあえず隠れたのだ。

それにしても、なかなかすごい行動力をもった後輩たちだな。

仮にも先輩である咲に対してあんな言いたい放題言って出てっちゃうんだから。

咲はあれだけ言われても自分がどうしたいか気づかないのかしら。


いえ、大丈夫そうね。

咲も何か考えていたと思ったら、急に飛び出していったのだ。

いやー、青春だねー。

……いかんいかん。本当に年寄りみたいになってるよ、私。


まあゆっくり歩いてけば、うまくいってる咲と神谷君が見れるだろう。

そう思っておそらくそこにいるであろうと目をつけ、一年生の教室に向かった。

しかし、そこには一人で教室の前で掃除をしている神谷君だけがいた。

おかいいわ、もしかして失敗したのかしら……。

とりあえず、彼に声をかけてみる。


「神谷君、久しぶり」

「立花先輩、お久しぶりです。どうかなさいましたか?」

「咲来てないかな?」


神谷君は少し表情を曇らせながら言う。


「いえ、来てませんが。何かありましたか?」


これはいよいよもっておかしい。咲があの場から飛び出す理由なんて神谷君に会いに行く以外ないはず。もしかして何かあったんじゃ……。

そんな私の様子を見て、神谷君も何か感じ取った様子で、


「俺、咲先輩を探してきます!」


というと走って行ってしまう。

これなら多分大丈夫でしょうけど、私も探そう。万が一ってこともあるし。

そうして私も走り出した。




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