壁
4人の視点です。読みにくくてすみません。
美紀視点
あの事件からもう一週間たった。
今は学園も落ち着いていて、普通の生活が戻ってきている。
私達は神谷君から神谷君自身の過去や能力についての話を聞かせてもらって、正直驚きはしたけどだからって私たちの関係が変わっちゃうとかは思わなかったんだ。
でも、彼にとってはそうじゃないみたいで。
「神谷君、おはよ!」
「ああ、二見。おはよう」
彼は私が声をかけても、そう言ってそそくさと自分の席に行ってしまう。
達也君が声をかけても、あんまり反応してないみたい。
神谷君、私達との間に壁を作っちゃってるな。
はぁ。
どうしたらいいのかな。
「美紀、おはよう」
「千恵、おはよー」
「今日もダメだったの?」
千恵もそんな状況を心配してるみたいで尋ねてくる。
「うん。達也君が話しかけても駄目みたい」
「美紀や達也君でも駄目なら、やっぱり水野先輩くらいしか……」
私もそれは考えた。
私にとって水野先輩は恋のライバルだから悔しいけど、今神谷君の心を動かせるのは水野先輩しかいないと思う。
なのに水野先輩はここ一週間神谷君の前に姿を見せない。
あの日水野先輩はすごい泣いていたのが印象に残っている。
彼女は彼女で考えてることがあるのかもしれないけど、何もしないなんて。
水野先輩も苦しいのかもしれないけど、今一番きついのは絶対神谷君なのに。
そんな自分勝手なことを考えてる私も最低だけどさ……。
「美紀、無理しないでね?」
千恵のその言葉は本当にありがたかった。
「うん。ありがとう」
私はできる限り笑ったつもりだったが、千恵の顔を見るとうまく笑えなかったみたい。
ずっとこんな風だったらいやだな。
はやく神谷君とちゃんと話したい。
そう思いもう一度神谷君の方を見るが、彼はこちらに気づく素振りを見せない。
「はぁ……」
私はもう一度深いため息をついた。
達也視点
あの日から一週間たったけど、日影のやつ俺らとつるむ気がねえみたいだな。
あの日に日影から離された内容には確かに驚いたが、俺らはダチだろうが。
そんなん関係ねえってのにあいつ散々スルーしてきやがって。
俺はできた人間だからまあそれでも水に流してやらんでもないが、二見にまでその態度じゃあな。
あいつ絶対つらいだろうな。
そんなことを考えていると、
「朝倉君、やっぱりだめ?」
と加藤が声をかけてくる。
彼女は彼女で思うところがあって、俺たちのことを心配しているようだ。
ありがたいな。
「うん。ダメだなありゃ」
「そっか」
加藤もすごく辛そうだ。
よし!
「まあ何とかなるさ。だからそんな顔すんなって」
俺はめいいっぱいの笑顔でそう言った。
すると彼女も笑い返してくれる。
やっぱみんな笑えねえと、楽しくねえよな!
絶対何とかしてやるぜ。
とはいえ残る頼みの綱は水野先輩くらいか。
多分それしか方法はないよな。
俺は今日の放課後水野先輩に殴り込み、もとい話し合いに行くことに決めた。
加藤視点
美紀も朝倉君もやっぱり辛そう。
見てられないよ。
神谷君、どうしても元通りにはなれないの?
私は神谷君の方を向き、声にならない声で投げかける。
はあ、私はどうしてこんなに人に気持ちを伝えられないんだろう。
もっとちゃんとしなきゃっ
朝倉君も励ましてくれたんだし、私もちょっと頑張ってみよう。
意を決して神谷君に声をかけに行った。
「か、神谷君……」
「ん、加藤どうした?」
「えっと、最近元気ないなって思って」
私……なんかこの聞き方よくない気がする……。
あー、何やってんの私!
「いや、そんなことないよ」
あー、やっぱりー。
こんなんじゃ駄目だー。
「そ、そう」
「うん」
……終わっちゃったよー。
ダメだこれじゃ……。
ちょっと落ち込みながら自分の席に戻っていく。
もう一度神谷君の方を向くと、その前の席の朝倉君が苦笑いを浮かべている。
あー……。
そんなダメな私だけど、なんとかみんなの力になりたいな。
穂香視点
んー、咲ったらあの日からずっとぼーっとしちゃって、何やってんのよ。
そんなことしてるとホントに取り返しがつかなくなっちゃうわよ。
押しかけてちゅー神谷君だって咲のことしか考えられなくなるっての。
……それはさすがにないか。
神谷君ガード固そうだし。
とはいえこのままじゃ駄目ね。
だけど下手に咲を刺激しても逆効果だし、はぁ……どうしたものか。
あー!やめやめ。
こんな考えすぎると年くっちゃうわ。
本人たちにやらせましょ。
私はそう切り替え、本人たちの行く末をあたたかく見守ることにした。




