2、人生相談とか、ねぇ?
妹の暴走は朝だとか夜だとか時間に捕らわれない。
今日は朝からだった。
いつも7時にセットしている時計がけたたましく鳴り響いた。重い上肢を振り回して時計を止めて目を開けた。
しかし、今日は日曜日。だから、いつもよりも長く寝ることにしよう。そう思い一度覚醒した頭をゆっくりと枕に戻してから、しばらくたった時。
腹に重さを感じて起きた。
「……ふ?」
目を開けると僕の腹の上に跨がる妹がいた。え、ちょっと待て。何があってこんなことになっている?
「お兄ちゃん。何で寝てるの」
妹は僕を睨みながら言う。
何で寝ているの、と言われても日曜日だからという理由しかないし、むしろ何で妹が僕の部屋にいるのか聞きたい。
「え?」
「だからー。何で寝てるのって言ってるのよ。分かる?」
「いや、分からないけど」
「はぁ。あんたばかぁ?」
その口振りはとあるキャラクターを思い出させた。そう言えばそのキャラクターも兄貴の腹の上に乗っていたようなはず。まだ人生相談を持ちかけられないだけましなのだろうか。
さすがに妹とあの本のような関係になるのはごめんだ。だってあれ、最終的にキスしちゃうし。
「バカで良いからさ、寝かせてくれない?」
「何で?」
すると妹は首を傾げた。全く僕の言い分を理解していない表情だ。
僕の方が何で? と言いたい気分だよ。
「えっと、退けてくれないの?」
僕も首を傾げようとしたけど妹の重さのせいで体が自由に動かなかった。そこまで重くはないけど、腰がぎしぎしなる。僕、よわっ。
「退ける必要ないでしょ。だって、世の兄は妹に踏まれたいんだってあのアニメの主人公は言ってたわよ。だから、避けなくても良いでしょ?」
あのアニメ、というのは分からないけど妹に最悪な知識を植え付けやがってなんてことをするんだ。
それにどこの兄貴が妹に踏まれたいなんて思うんだ。近親相姦の何が楽しい。僕には一ミリも理解できない。
妹はそういう面白そうなものや、興味のあるものは思いっきり影響を受けてしまうから今後そういうのは近づけないようにしたいと思いました、まる。
「それはアニメの中だけの話だよ」
僕が言った瞬間。
「死ねば?」
酷い言葉と共に彼女のビンタが頬に落ちてきた。ばちーんっと激しい音と痛みが走る。相手が女の子(笑)だからって全力なのだから痛い。
「だぁ!?」
「本当に、あんたってサイテー」
そう言い残してから妹は僕の部屋を去っていった。
後に残ったのは、頬の痛みと妹が腹に残した温もりだけだった。
「一体どういうことだか」
再び布団を被ると、二度目の睡眠に戻った。