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―プロローグ―④
―同刻・向かいの控室―
「シンラス、お前…」
「なんスか」
神妙な面持ちで眼鏡をくいっと上げるもう一人の候補、ヤマセが本作主人公シンラスに迫り寄る。
ちょっと後ずさるシンラスは口をヘの字に曲げた。
「お前、俺の心のアイドル☆サリアちゃんのこと好きやろ?」
「…は?」
何だこの人…先輩だが関係ない。
「いつも一緒にいるやんけ!」
「相棒なんスけど」
シンラスは今更何を言うんだこの人…という顔をした。
この学院は入学当初からパートナーを見付け、二人一組で行動をとることが決められている。
ヤマセは未だ決ってないようだが。
「うそやん!絶対うそやん!」
「うそじゃないですよ」
ヤマセのサポーターであることを伝えにきたシンラスだったが、扉を開けた瞬間からこのやりとりが続いているのである。
近くのパイプ椅子に座ったシンラスは
「サリア、シロナ先輩のサポーターついてますよ」
と告げた。
「うそやん!絶対うそやん!」
窓の方へ顔を向け何度目かの「うそやん!」を叫ぶヤマセ。