―プロローグ―⑫
「すごい風…ヤマセ何するつもりなの!?」
シロナも砂塵のせいで辺りが見にくくなっていた。
台風並の風が撒き起こった。一瞬の後、無風の静まりかえった空間になる。
「みんな逃げるか伏せろッ!!!」
シンラスは叫ぶと、ベルトに引っ掛かっている愛銃『片眼の龍王』に手を伸ばした。
「風・爽…東風の神風ッ!!」
再び轟風が撒き起こった。
刃のような旋風は暴れ始める。
「わーーーーッッ!!」
「またでかいのきたぁッ!」
ユンとロンの声は掻き消され、放送席のテントは跡形もなく更に遠くへ飛ばされた。
会場の皆は慌てふためき混乱が起こる。
そんな中、
「ヤマセばっかいいとこどりッ!ずるい!あたしだってえぇぇ…ッッ!!」
と叫び、体に白い光を纏わせるシロナの声も重複した。
「やっべ!…サリア!!!」
「ちょッ…待ッ…!!」
二人同時に愛銃を構える!
シロナにまとわりつく光が弾けた。
「シロ魔法・奥義!ホワイトディサペアーッ!!」
瞬く間に光は地を走り、ヤマセに滅のダンスを誘う。
ヤマセが放つ神風は大空を踊り狂う。
そして、
「とまれえぇぇーーッ!!」
「いっちゃえぇぇーッ!!」
と叫ぶ声が、戯曲を終盤へと導く。