始まり
『草食男子』ってみんなから言われる俺は、自他共に認める草食男子である。
平和主義で料理好き。
女子と話したり、自分の意見を言うのが苦手。
空気のように生きてきた。
青山 想 アオヤマ ソウ
『部活女子』とは私のことって言えるほど部活が、命な私!
楽観主義でポジティブ思考。
家事全般や、細かい事がかなり苦手。
いつも楽しく気楽に生きてきた。
池野 晴 イケノ ハル
同じクラス…それだけが2人を繋ぐ唯一の接点。
正反対の2人は最低限の会話しかしないただのクラスメイト。
そんな生活が一変する!!?
グラウンドを、綺麗な髪をなびかせて走るキミ。
そんなキミの汗に触れて初めて人を愛しいと思った。
この気持ちが今、動き出す。
想side
「よしっ!」
今日も上出来!!
彩りも栄養バランスも良い感じ。
本日のタイムは15分。
俺の朝は弁当作り&朝食作りから始まる。
「んー、おはよう。」
「おはよう、鈴音さん。今日の朝ご飯も冷蔵庫に入ってるから。」
「はぁーい。じゃあ、想 いってらっしゃい。」
「うん、いってきます。」
鈴音さんは俺の母親で、父親は5才の時に亡くなった。
父親が鈴音さんって呼んでたから俺もそう呼んでる、いや呼ばされている。
そんな俺も、もう高校生だ。
10月の並木道には、少しづつ枯れ葉が落ち始めていた。
俺は自転車のペダルを力強くこいだ。
すると、いつもの場所にいつもの2人が待っていた。
「遅いぞ、遅刻はしないと思うけど。」
「悪いな、翼。」
「おはよう!想。今日の体育ってバスケだよね?」
「えっ?今日からは持久走だと思ったけど?」
「おぅ、俺もそう聞いてる。空、頑張れ!」
「うるさいな。」
本田 翼、宮本 空は小•中•高の付き合いで腐れ縁ってやつ。
翼はイケメンで、運動も勉強も出来る完璧男。
その上、バスケ部の新星エースとして活躍中。そして、王道の彼女はマネージャーってオチ。
空は天然で、運動オンチ。そのかわり頭が良くて天才肌。俺と同じ帰宅部。
やたらと年上キラーな童顔男。
ちなみに、今は2年生の準ミス狙いらしい。
「そういえば空、準ミスとはどうなってんの?」
「あっ、この前っていうか4日前にデートしてきたよ!」
「「はぁ?」」
「映画見たいって言うからさ。後1ヶ月もすれば付き合えるでしょ?
残すは告白だけだし、返事はOK以外考えられないし。」
「空ってさ、顔と中身一致しないよな?」
「それ、俺も思った。あんな純粋そうな顔して、めっちゃ計算高いからな。」
「別にいいじゃん、遊んでる訳じゃないし。
むしろ本気だからこそ、失敗したくないから計算してるんじゃん!」
空には敵わないとつくづく思う。
まぁ、本気なら良いんだけど、真似はしたくないかも。
ってか、冷静に空って今までに何人と付き合ってきたんだろう?
すぐに変わるから全然把握できてないし。
計算して女を落とすなんて凡人の俺には不可能に近い話だ。
「想もさ、彼女つくれば?モテるんだから。」
「えっ、俺なんて全然モテないし。」
「そんなことないって、……もしかしてまだお前。」
「翼、それはないよ。もう忘れたっていうか、過去の人じゃん。」
「じゃあ、なんで彼女つくらねぇーの?」
「好きな人がいないから。」
「告白されてるんだから、とりあえず付き合えばいいのに。」
「空っ!?なんで俺が、告白されたこと知ってんの?」
「秘密!」
「俺と空の情報網をなめるなよ?」
こいつらがいる限り、隠し事なんて出来ないな。