サマー&バケーション(クレーマーが現れた編)
程度です……いやテキトーと読んだ方が良い位にテキトーっす。
大輝が寝てから数時間……。
「大ちゃん」
「……」
「ねぇ」
「……」
「起きてよ」
「……にはは、水着のお姉様がいっぱいだ……ゲヘヘ」
「(カチン!) 起きてってばっ!!」
「グホッ!?」
start
寝てる間に目的地へと到着した――のは良かったが。
「イツツツ……なぁ葵。ものスゲー鳩尾らへんが痛くてしょうが無いんだけど」
そう、理由は分からないが鳩尾辺りに鈍い痛みがあるのだ。
アイマスク装備で寝ていてしかも直前まで寝ぼけいた俺には、その痛みの原因が分からない。
だからその理由を知ってそうな葵に聞いてみたのだが……。
「……」
「何怒ってんだよ?」
「……」
何か知らんが葵の奴はツンツンしていた。
恐らくコイツが俺に何かしたのだろうと思って聞いても、こんな感じでソッポ向くだけで何も教えてくれない……うう、胃がキリキリしやがるぜ。
「集まったな? それでは旅館の人に挨拶するから全員一列で並べ!」
タイトル戦で敗北したボクサーの気持ちはこんなもんなのか等と思っていると、一番前で俺達を先導していた茜ちゃんの声が聞こえる。
この学校の連中は俺を含めてほぼ全員が茜に逆らうなんて馬鹿な真似をする奴が居ない為、茜ちゃんの声がした瞬間気味が悪い位に整列が完了する。俺も。
「という訳で……」
そして何故か居る理事長(推定年齢50代のガチムチのエロオヤジ)が有りがちな話をペチャクチャ話すのを適当に聞き流していると旅館の中から女将らしき人が……。
あら~結構タイプか――
「ヤベーよ大輝ちゃん!! オレあの人好きかも!!!」
ちっ、お前もか赤也よ。
「へい、そこの美人な女将さん!! 是非おれっちと友達以上の関係に……」
「静かにしろこの馬鹿!」
「あぼっ!?」
ぴょんぴょん跳ねながら俺達の前に立つ女将に早速のアプローチを掛ける赤也に、疾風の如くスピードで黙らせる茜ちゃん。
その画がシュールなのか、女将さんが引き攣った笑顔をしているのを俺は見逃さないし、ついでだから俺目線からのデータをご紹介しよう。
歳の頃は恐らく20代後半から30代前半のやや小さめで着物? 的な衣装な為かハッキリとした体型は分からないが、まぁ葵よりかはスタイル良いだろう。
実に日本人らしい黒髪を団子みたいに後ろに一つ束ねているし、容姿も悪く無い……いや寧ろ俺は好きだね。
とまぁこんな感じだが、果たして既婚者なのか……うむむむ、後で聞いてみようかしら?
「大ちゃん?」
「――――はっ!?」
女将さんを見ながら自分なりにデータとして纏めていたら、いつの間にか話が終わっていたらしく、横に引っ付いてた葵が俺を見ながら呼ぶ。
「どうしたのさ? ボーッとして」
「いや女m――何でも無い……」
っぶね……。危うく『女将さん見て妄想してました』とか言っちまいそうな所だったぜ。
コイツ、何故だか知らんが中2の途中から俺が他の女子の話題を振ると怒り出すんだった。
「?? 大丈夫なら良いけど……それより皆先行っちゃったよ? ボク達も早く行こう」
「うん」
……赤也達、解散したらなら俺に一言声位掛けて欲しかったんだが。
「そういえば大ちゃん達の部屋は小泉君達と一緒なんだよね?」
「あ? そうだけど、それがどうかしたのか?」
「いや、夜はどうするの?」
「夜――――あ……!」
葵の言った“夜”という言葉に、一瞬意味が分からなかったが、直ぐに何の事だか思い出す。
「お前とは別部屋だったっけ? しまった……普通に忘れてたぜ」
「うん、ちゃんとボク無しで寝られる?」
中々に広く、そして綺麗で日本的な造りの旅館の中をてくてくと二人並んで歩きながら話は進む。
「…………。無理っぺぇな。確か中学の頃の修学旅行は3日連続寝不足の揚句に最終日は完全にダウンしちまったしよ」
あの時程葵が近くに居ない事を悔やんだ時は無かった……当日の修学旅行の最終日に至っては記憶があやふやな程までに寝不足になっちまったし。
「フフッ、そうそう。酷い顔してたもんねぇ?」
「笑うな。はぁ、いつまでも餓鬼みたいな事言ってる訳にもいかないよなぁ……」
「ボクからしたら完全に慣れちゃってるから全然良いんだけどね。ましてや11年もやってればね」
「だがよ、お前に男が出来ちまったらそんな事言ってらんねーだろ?」
「……。大ちゃんはボクに彼氏が出来ても構わないと?」
「……。いや、出来れば俺がお前離れ出来るまでは……」
「ふ~ん? じゃあ一生無理だね(だってボクは……)」
「一生無理か……ふっ、そうなったら俺と結婚するか?」
一生を寝不足で過ごすとか生き地獄も良いとこだ、だったら葵を………………って、動機が最低だな俺。
「……。本気にするよ?」
「遠回しに“安眠の為にお前が欲しい”とか言っちゃってる人間に対して本気にするなよ」
「ボクはそれでも構わない」
「……。ケッ! 優しい幼なじみを持てて嬉しい限りだわ」
ほんと、昔からコイツは冗談を間に受ける。
からかい易いのは良いけど、詐欺とかに引っ掛からないか心配だよ。
★☆
この臨海学校……別名“慰安旅行の予行練習会”なので、実質最終日まで自由行動だったりする。海で遊びほうけるのも自由、寝てるのも自由、流石に繁華街に行ったりすりのは駄目らしいが“高校生らしいモラルを守る”というのを条件に理事長のエロオヤジが許可しているのだ。
まぁ、一人一人にGPS付きの携帯を持たせてるし危なくなったら防犯ブザーが勝手に鳴るように細工してあるから大丈夫らしい。
噂によれば理事長が雇った専属SP300人がそこら中に配備されてるとか何とか……本当かどうかの真相は不明だが、とにかく“自由”がこの臨海学校とやらのテーマなのだ。
「で、準備の時にあれだけギャースカ周りが騒いだ結果、まぁ当然の如く俺達4人が固まった訳だが……」
窓の外からは海が一望出来る和風な部屋のど真ん中に設置してあるテーブルを俺達部活メンバーが囲うようにして座りながらポツリと俺が呟くと、他の三人はうむと頷いた。
「本音っつーか、オレっちとしては女の子と同部屋が良かったりすんだけどね~」
と、茶をすすりながら言うのは赤也。
全くその通りだ、出来たら葵と同部屋が良かった……じゃないと寝不足で死ねる。
「……。赤也はまだそんな事を言ってるのか、いい加減諦めたらどうだ。普通に考えてもそれは無理だぞ?」
内心同意していたら、そんな赤也に対して薫が呆れましたとばかりな目で見ながら言う。
「我輩も女子達とは嫌でしたから薫殿の言った事には同意しますな」
無駄に多才な来夏は、自作で作ったギャルゲーをしながら呟く。
ふむ、来夏も嫌だったらしい……って、今回の1人称は我輩なんだ、リアルにそんな1人称を使う奴初めて見たぞ。
「まぁ、決まった事を今更グチグチ言うのも良く無いし、これからどうするかを皆に聞きたいんだよね、俺は」
俺達以外の連中は早速海に行ってきゃぴきゃぴしているという情報らしい。
普通なら俺達も海でギャースカ騒ぐのだが、俺と薫は異様なまでに紫外線に弱いから、日焼け止めクリームとか塗らないとヤバイ事になっちまう。
「オレっちは海に行こうかな、クラスの子達に誘われてるし」
「うむ、僕も海だな……日焼け止めクリーム塗らないとアレだが」
「我輩としてはゲームがしたいのですが……」
「来夏……相変わらずインドアだな。俺も海だな……本音言うと繁華街とかメチャ行きたかったけど」
という事で3:1で海に決まったので嫌がる来夏を引きずりながらも海へと向かうのであった。
衝撃的な出会いまで後少し……。
暑い……つーか暑い……。
波の音が海に来たという事を自覚させられるんだが、ヤバイ夏を嘗めてたわ。
くそが付く程にアチィ。
「ひゅ~! 皆水着じゃん!!」
「ゲームがやりたいでござる……」
隣で赤也と来夏が何か言ってるようだが、俺と薫はそれどころでは無い。陽射しがやばくて早いとこクリームを塗らないと全身の皮膚がボロボロに……。
「大丈夫か薫?」
「ああ……何とか」
と、言ってはいるがどう見ても大丈夫じゃ無い。早いとこ日陰に避難を……。
「大ちゃ~ん!」
4人でキョロキョロしながら俺と薫は日陰、赤也はクラスメート共の水着姿、来夏はボーッと空をみながら歩いている最中に聞こえる俺を呼ぶ声。もしかしなくてもこれは葵であり、コチラに向かって手を振ってる。
「お、葵ちゃんじゃん! う~む、背が低いからちっぱいでもオレっち的にはOKだな!」
「おい、大輝の居る前で何て事を言うんだ貴様は」
「惜しい……あれで後10㎝でも身長が低ければ合法ロリに進化できたのに……」
赤也、薫、来夏の順にこの前買った青の水着を着ている葵を見てからの感想を漏らしながらも呼んでいる葵の元に向かう。
「よーす葵……と班の皆さん」
葵だけだと思ったら、どうやら班の子達も居たらしい。
パラソルの影に隠れてて見えんかったわ。
「遅いよ大ちゃん、何してたのさ?」
「あ? ああ、日焼け止めクリーム塗ってたら遅くなっちまって」
「おぉっ!! 大輝ちゃんのクラスメートちゃん達も可愛いねぇ!! オレっちは小泉赤也! 知ってるかな?」
「白山薫……です」
「我輩は緑川来夏である! 趣味はゲーム!!」
「こ、こんにちは……」
「す、凄い……唯一4人だけの男子が私達の所に……」
「夢? これは夢なのか!?」
「言ってくれたらボ――私が塗ってあげたのに」
「それが薫の奴も肌が弱いらしくてな? 面倒だし手間が掛かる前にお互いに塗ってまえって事になったんだよ」
「ふ~ん?」
俺のクラスメート達とペチャクチャしている三人の横で、パラソルの下で座りながら葵に遅れた理由を説明する。
やがてお互いに打ち解けてきたのを機に、『さてどーすっか……』という時だった。
「ん? 向こうが騒がしいな……」
ビーチの入口付近に人だかりが出来ているのが俺達から確認出来る。
ああ、ちなみに此処等全体は理事長が金に物言わせたらしくて俺達の貸し切りだとか。
「ん~? 何だろうね?」
「ふむ、誰かが怒ってるような声が聞こえるが……」
「確かに……ってアレ? 来夏は?」
人だかりを皆で見ていたら、来夏が居ない事に気が付く。
うん? と思っていると赤也がああ……と思い出したかのように口を開く。
「来夏ちゃんなら何か知らないけど物凄いナイスバディなクラスメートちゃんに拉致られてたぜ?」
「え マジで? ……知らんかった」
ナイスバディってのが凄い気になるが、居ない理由が分かった為そこまで考え無かった。
今は人だかりの方が気になってしょうがないし。
「ふむ……俺達も行ってみるか?」
段々と人の固まりが大きくなっていくのを見てたら、そこに何が気になってくる。
だから行って見てみようと腰を上げて行くと、他の奴等も気になってたのだろう、一緒に付いて来た。
皆して野次馬根性丸出しだわい。
―
――
―――
俺がこの19年生きてて分かった事が一つ分かった……。
「だぁぁぁかぁぁぁるぁぁぁぁ!!! オレ達は早朝5時から此処で場所取りしてたの!! そん時は“貸し切り”とか書いてある立て札とか無かったの!! だからオレ達にだって使う権利があるの!! 分かりますか!? Do you understood!?」
何時に無くキレまくってる先生……原因は目の前でスカしたツラしながら先生の言ってる事を生返事で返してる見た目ターミ〇ーターのあの人みたいな姿をした男にある。
「そうは言いましてもねぇ……一応此処等は全て桜木高校の生徒さん方の貸し切りになるという契約を地主としていますので」
ぺらぺらと説明をするボディーガードさん。
というのも、俺と先生は朝の4時頃から張り切ってこの場所に来たんだが、いくら何でも早過ぎるから良い時間になるまで他の場所に行ってたんだ。
で、戻って来たら“桜木高校御一行様”なんつー立て札と共に一般人は完全に立ち入り禁止になってたっていう寸法だ。
まぁ当然『はいそうですか』と納得出来る訳も無く、こうしてボディーガードらしきおっさんとやり合っている……みたいな訳さ。
ちなみにナンパの話は忘却の彼方に飛んでいる、だってナンパする以前に海に遊びに来たんだし。
「別にオレ達はおたく等の生徒にちょっかい掛けるなんつー真似はしねぇよ、只ちょっとだけ肌を焼けさしてくれれば直ぐ帰るし、なぁ零?」
「え? あ、ああそうですはい。ちょっとだけ波に乗りたいンスよ。この場所の他にビーチは存在しないみたいですし……」
急に先生から話を振られて一瞬だけ戸惑うが、このまま何もせずに“はいサヨナラ”は俺も嫌なので、先生に続いてボディーガードのオッサンに事情の説明をする。
「う~ん……そうは言われましても“生徒と先生以外は此処を通すな”と桜木高校の理事長さんから仰せ遣ってますから」
が、やはり向こうも仕事なので俺達を入れる気が全く無い。
はぁ……これは諦めるべきか? 何か知らないが桜木高校とやらの生徒……うん、多分女子校なんだろうね、小娘共がワラワラと沸いて来る。
しかも俺と先生を見ながらヒソヒソやってやがる……まぁクレーマーみたいな事をしてる俺達に良い印象は無いだろうから仕方ないけど。
「すまん、どいてくれ……どうしました?」
そろそろコチラが退かないとサツを呼ばれそうな気がして来た正にその時だった。
ワラワラとゴキブリみたいに女子校生の塊の一番後ろから塊を掻き分けるようにして目の前に現れた女が一人……。
「あ、銀城先生……」
ほう、女はどうやら先生らしい。
女が現れたと同時にボディーガードが背筋を伸ばしている。
「すいません、何やら此処が騒がしかったみたいなので気になって来てみたのですが……」
と言いながら俺と先生を交互に見る女……ええっと銀城って人か。
って、あら……良くみたら美人だわなこの人。
「ハッ! 漸く話の分かりそうなのが現れたみてぇだなオイ」
何時もならこのクラス美人に鼻の下を伸ばす先生だが、状況が状況なのか完全に喧嘩腰の口調で銀城って人を睨む。
「すいません、コチラのボディーガードが失礼をしたようで……私は桜木高校の教師の者です」
おっとこの人……見た目に反してこうした事に慣れてんのか? 先生の睨みに全く動じてる様子が無いが……。
「ああそう? 先生様でございますか? うんうん、漸く話が一歩進むようでこちとら安心しましたわ」
そんな銀城って人の態度が気に入ら無いのか、自分の職業的なものも省みずに喧嘩腰な口調を崩さない真ティーチャー……こんな事がばれたらクビにされちまいそうで俺は心配なんだが……。
続け
多分な次回
何故か知らないが真と茜の話し合いに縺れ込んだ。
その間零はと言うと……。
女子達
『……ヒソヒソ』
零
(…………何故こうなった?)
女子達に囲まれた揚句に誰も自分に話し掛けてこないという最悪な空気を味わっていたぁぁぁ!!
零
「……(チラ)」
女子達
『(ねっ、今私の方を見たよね? あの人超カッコイイじゃん!)』
女子
『(いやどちらかと言えば私の方ね)』
女子
『(いやいや、間を取って私だね)』
零
「…………(先生、俺暴れちまいそうです……だから早く戻ってきやがってください)」
大輝
「……あの人誰? 先生じゃ無いよな?」
赤也
「つーかムカつく程にイケメンだな……」
薫
「女子達があの人に視線を送り続けてるから僕としては気が楽だけどな」←砂のお城を製作中
来夏
「リアルなリア充さんみたいですな、ははは」←同じく城製作