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「これから野球部の部室へいく。で、帰る」

 克磨かつまはそう告げると歩き出した。

「ちょっと待って! 部室いくって? 帰るって何!」

「言ったままだ。部室いって、用がすんだらボクはすぐに帰る」

「じゃあ、カバン取ってくるから待て!」

 克磨は面倒そうに「ああん?」と唸ると、「じゃあ、さっさと取って来いよ」と投げやりな感じで言う。

「走れ」

「なんで!」

「野球部のヤツが帰っちまうかもしれないだろう」

「わーん!」

 私は階段を上へ駆け上がった。そして三階まで上がって疲れた。

「さっさとしろよ」

 階下から克磨の声がする。言い返す気力をもう一度走る気力へかえた。

 ホップ・ステップ・深呼吸のリズムで三階と四階のあいだにある踊り場に着いた。深呼吸をするため、一度膝に手をついて身を屈めた。もしかしたら、私はちょっと楽しんでいるのかもしれないな、と思った。

 よし、と手すりにつかまりながら前を向くと、折り返す段のから腕が伸びてきた。

「あっ」

 と呟くあいだに、私は右肩を衝突されたような力で押されていた。あまりにも不意であったため、後ろ向きのまま私は空中へと身を投げ出された。

 悲鳴がしょうもない音量ででた。次の瞬間、私は背中と後頭部に衝撃を受けた。と思ったらそのまま階段を転がり落ちていた。頭を両手で抱えながら転げ落ちた。膝をぶつけ、頭を守る手を切り、背中から三階の踊り場に着落した。

 落下が終わった途端、はち切れそうな痛みが手の甲やわき腹、腿や足首を中心に噴き出した。視界もなんだかぼやけている。ぼやけた天井がモザイク加工されて見えていて、気持ち悪い。

 定まらない視界で上の踊り場を見上げた。誰もいない、ように見える。

 ふざけやがって――

 天の声まで聞こえてくる?

 だるくて口が開かない。あれ? なんて言おうとしたんだっけ? なんで、話そうとしたんだ?

 足音が、廊下に反響した。……誰の?

晩家くれにけさん? どうした!?」

 だんだんだんと階段を駆け上がってくる音がして――


「……――」

「――――」

 人の声がする。それに気付いて目を開けると、ちょっと薄暗い天井が目に入った。

 体を動かしてみると、節々から痛みの信号が伝わってきてもんどりうった。

 がしゃんとカーテンが勢いよく開けられるような音がして、私の視界は明るくなった。蛍光灯の灯りが差し込んだらしい。

 光のほうへ顔を向けると、克磨の顔が見えた。左手に白いカーテンを掴んで、無表情を浮かべている。いつも通りの顔だ。

「ああ、目、覚めた?」

 克磨の隣に女性が現れた。確か、この人は保健室の先生だった気がする。若くて始終ぽけーとしている印象がある。なんでそんな人がこんなところに? というかこんなところって何? ここはどこ? 私は晩家弥芳みよし。よし、オッケー。

「晩家さん、大丈夫? 痛いとこある?」

 保健室の先生が聞く。私は「全身」と曖昧に答えた。

「三階で倒れてたみたいじゃない。武登むとくんが保健室まで運んでくれたんだよ? なんでまた、あんなところに?」

 そっか。ここは保健室なのか。納得。って、克磨が運んできてくれたのか。お礼言わなきゃな。というか、なんで私は三階で倒れてたの? 三階? うーん? たしか――

「あっ、そうだ、落とされたんだ」

「落とされた!」

 突然の大声に克磨を見ると、なんとも形容しがたいという形容がしっくりくる表情を浮かべていた。

「誰に? 誰に落とされたんだ!」

 冗語が恐がって逃げていくほどの勢いがあったため、「わからない」と視線を天井へ向けて答えた。

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