コンビニへ行こう!
皆さん始めまして、斎藤一樹と申します。この短編が私の当サイト「小説家になろう!」におけるデビュー作となります。これ以降の掲載は不定期ですが、なるべく早いペースで行きたいな〜、と思っています。たまに私のページを覗きに来て頂けましたら幸いです。
蒼衣さん主催の恋愛短編企画に参加させていただいてます!宜しければ他の作品もどうぞ。
僕が小学校五年生になる頃、僕の家は引越しをして、僕自身も転校をすることになった。
慣れ親しんだ元の学校に未練が無かったわけじゃあないけれど、これから始まる新たな学校生活に期待を隠し切れなかった事を覚えている。
さて。そんな生活の中で、僕はクラスメイトだった一人の女の子に恋をした。よくある、ありふれた話である。そして元来積極的な性格でもなかった僕は、彼女と同じ中学校に進学したにも関わらず、とうとう卒業式の日を迎えても告白をすることが出来なかった。
それから一年と数ヶ月が経った。彼女と僕の家は同じ学区内にある程度には近所にあるはずなのだが、ついぞその姿を見なかった。そして次第に、彼女との思い出も薄れてきた頃の事だった。
その日、夕食を食べ終わった後に突然母親が「あ、ラップが無くなった」と言い出した。話を聞くと、どうしても必要なのだと言う。なし崩し的にお使いを頼まれてしまった僕は、仕方無しに近所のコンビニまで出掛けた。
お目当ての物を見つけ、レジに持っていくと店員が「久しぶりだね〜」と声を掛けてきた。
「え?」
吃驚して顔を上げると、店員の女の子が悪戯っぽく微笑んでいた。
「私の事、覚えてる?」
そう問うてくる。その表情と声に、懐かしい記憶が脳裏を過ぎる。そして僕は、彼女の名を呼んだ。
「ゴメン、始め気がつかなかったよ」
記憶の中の彼女とは、髪型も違うし顔付きも微妙に異なっていた。
「そう?私はすぐ分かったけどな」
どういう意味だろう。僕はそんなに特徴のある顔立ちをしているというのか。そうでないと思いたい。
それから二言三言、会話を交わして僕はそのコンビニを出た。他の客の迷惑になることは避けたい。
しかし、良い事を知った。まさかこんな所で彼女に再開するとは。バイトのシフトを聞いておかなかったのは失敗だったが、これからはちょくちょくあのコンビニへ足を運ぶことにしよう。運が良ければまた会えるはずだ。
あの卒業式から一年と少し。どくん、と高鳴った胸の鼓動に、もう終わったと諦めていた燻りがもう一度燃え始めたことを知った。
了
はい、ぶっちゃけ実話が少し混じっています。というより、実話をモチーフに書いた作品がこの短編です。