仄肌寒い神無月
>題材[はた迷惑な,川,抱き寄せる,もう大丈夫]ギャグっぽくやってみよう!
> 診断メーカー
意味も無く走っていた。
止まらない足、止まらない汗――。
土手道をすれ違う人は皆、奇異の目をこちらに向ける。
何故走るのか、走っているのか――正直な所、自分でも分かっていない。たぶん、走る必要も無いだろう。
ただ、ある種の脅迫観念にも似た衝動が自分を突き動かしていた。
『アイツを早く探し出せ』と――。
もったりと足に絡み付く漆黒のロングスカートは、走ることを遠回しに――だが、強固に抗議している。
十月も半ばに差し掛かっているが、頬を撫ぜる風は仄温かい。
通気性というものを知らない白のブラウスとコルセットとの相乗効果もあり、自分は今汗だくだった。
俗に云う「メイド服」に身を包み、更に走ること地球時間で五分ほど。
川岸に立つ“アイツ”を見つけた。自分にこんな格好をさせた元凶――幼馴染み。
長い付き合いだから、何となく、どこに居るか分かっていた。
学園祭の出し物『仮装喫茶』で、自分が引いた役所はメイドさん。その衣装を用意したのがアイツ。
着替えた自分の姿を見たクラスメートの反応は、思いの外上々だった。本人の心中を知る由もなく。
そんな中、アイツだけは仏頂面で、フイっとどこかに行ってしまった。
だから、自分はアイツを探してる。
やるべきことをやるために。
足音と気配を消し、暗殺者になったつもりで近付く。背後から、ゆっくりと。
射程内に入ったのを確認後、腕を回して抱き寄せ、耳元で優しく囁いた。
「――見つけた」
抱き締めた瞬間、ビクッと硬直したコイツ。自分を抱き締めたのが誰か理解すると、観念したのか硬直を解いた。
「……お前ッ、追い、かけてッ、来たのか。……その衣装の、ままで」
「そりゃそうだ。やることあったから」
“俺”の返事を聞いたコイツは、再度身を固くした。
抱き寄せるために回した腕は、今はコイツの首にチョークを決めるために使っている。完全に決まった三角締めからは、屈強なメリケンだろうが逃げられない。
「……お前ッ、やっぱり、怒ってるんじゃねえかッ!?」
「違うよ。超怒ってるんだよ」――と、俺の腕の中でもがくコイツに囁き、「もう大丈夫だ。死ね、クソ野郎」――と、吐き捨てる。
そのまま、“男二人”で十月の川面にダイブした。




