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プロローグ
すぐ先に断崖絶壁がある。人類は、今その目を見開かないと、そこに落ちてしまうだろう。もう時間がない。便利という名の麻薬におぼれている時間はない。
今から100万年ほど昔、太陽系の第3惑星に、「人類」と呼ばれる霊長類が誕生した。彼らは巧みに道具を用い、複雑な言語を操るほど、高い知能を有していた。それゆえ、産業革命を起こし、さらに複雑な機械文明を作り上げるにまで成長した、いや、退化したのかもしれない。人類は、地球史上類を見ない機械文明を成立させたことで、自らのことを、「最高の生物」と錯覚し、生態系を破壊することを省みなかった。機械文明の基礎であるそれを破壊することがいかに愚かな行為であったかも知らずに・・・。
気付いたのは20世紀に入ってからだった。しかしそれでも、彼らの多くがその重要性を知らず、知ろうともせず、ただ手に入れた文明にしがみついているだけであった。一見進化しているように見えても、精神的には退化が始まっていたのである。
はたして、この種は自らが滅びる前にそのことに気づくことができるのであろうか。非常に心配である。