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第5話:黄金の休息と、まいの秘密道具

【蔵野家・リビング ― AM 10:00】

昨夜の猟兵との激闘を経て、武は久々に畳の上で目を覚ました。

サイボーグ化された体は重いが、まいの「整備蛍セイビホタル」たちが夜通し関節部のボルトを締め、マブイの循環を調整してくれたおかげで、オーバーヒートの痛みは引いている

「あ、武おじちゃん。おはよう! ほら、動かないで。まだ右腕のグリスが馴染んでないんだから」

まいはエプロン姿で、手には菜箸ではなく特殊なスパナを握っていた。

彼女はメカニックとして、武の「外付けマブイ80」のユニットと、サイボーグ化した肉体の同調率をチェックしている

「ごめんな、まい。苦労をかける」

「いいよ。……ただ、武おじちゃんのマブイ、やっぱり変だよ。属性の変質のせいかな? 普通のグリスだとすぐに焦げ付いちゃう」

まいは少し困ったように笑い、タブレットに表示された武の「蒸気圧力」と「バッテリー残量」のグラフを見せた 。そこには、ハンパーマンだった頃の武からは想像もできないほど、黄金に輝く高エネルギーの波形が刻まれていた 。

「ただいま。……武、起きたか」

縁側の戸が開き、剣心が帰ってきた。その肩には、灰色の毛に覆われた奇妙な巨大なミノムシが張り付いている。

「それ……からくり虫の、月影オオミノガか」

「ああ。夜通しの索敵で腹を空かせてな。今は大人しいものだ」

剣心が軽く叩くと、月影オオミノガは心地よさそうに蒸気を吐き出し、剣心の懐へと潜り込んだ。

「パパもお疲れ様! ちょうどお茶が入ったところだよ。はい、これ食べて」

まいの差し出した皿には、真っ白で柔らかな大福が並んでいた。だが、その餅からは微かな燐光が漏れている。

「……マブイ大福か」

武が一口かじると、生身の舌が感じる甘みと共に、熱いエネルギーが全身の回路を駆け巡るのが分かった 。胸のバッテリー残量がじわじわと回復していく 。

「おいしいな。……まい、その手」

武は、まいの指先が少し赤く腫れているのに気づいた。整備用の特殊潤滑油による『グリス負け』だ 。

「あ、これ? 平気平気。武おじちゃんの黄金のマブイを整備できるなんて、メカニック冥利に尽きるもん」

まいは笑って手を隠したが、その瞳は本気だった。

そんな家族の光景を眺めながら、剣心がふと、庭の植え込みに目をやった。

「……武。お前の放った黄金のマブイ、どうやら遠くの連中まで呼び寄せたらしいぞ」

剣心の視線の先。そこには、阿蘇の火山地帯にしか生息しないはずの、金属質の羽を持つ『地熱蜂ジネツバチ』が一匹、武の放つマブイの残滓に惹き寄せられるように、不気味な羽音を立てていた 。

「阿蘇松井家……。いよいよ本格的に動き出すか」

穏やかな朝食の時間は、もうすぐ終わろうとしていた。

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