三つの魂、一つの火花
【前回までのあらすじ】
超同調修行中の武とまいの元に、競艇レーサー・波多野が現れる 。異なる競技、異なる機体。しかし、その根底にある「マブイ」の真理が、彼らを一つの運命へと導いていく。
「……蒸気圧、安定。ポンプ圧力、正常値。よし、これならターン中にエンジンが止まることはないよ」
まいの手によって、波多野の競艇ボート「マブイ・スライダー」が黄金の息吹を取り戻していく。整備用タブレットには、野球用とは異なるが、同じくらい鋭い出力波形が描かれていた。
「助かったぜ、お嬢さん。……あんたらの『マブイグミ』の精度、半端ねぇな」
波多野がボートを叩き、感心したように武を見た。武は黄金のバットを傍らに置き、じっと波多野のボートを見つめている。
「……波多野。あんたの戦場(水上)には、『霧』を切り裂くヒントがあるか?」
「霧か。……競艇じゃ、水しぶきで前が見えねぇのは日常茶飯事だ。だがな、俺たちは『眼』で見てるんじゃねぇ。プロペラが水を噛む『振動』で、コースの先を読んでるんだよ」
その言葉に、武の脳内で何かが弾けた。
霧隠家の術を破るのは「心眼」だけではない。相手のマブイが霧を揺らす**「異常振動」の残響**。それをバットで捉えることができれば——。
その時、ガレージの屋根の上から、軽やかな声が降ってきた。
「なるほどね! 振動を波形として捉えて、逆位相のマブイで打ち消す……あるいは共鳴させる。科学部としても、その理論は興味深いな!」
「……誰だ!?」
逆光の中、ガレージの天窓に座っていたのは、大学のジャージを羽織った「学園ヒーロー」——**日向**だった 。その瞳には、武と同じ「黄金」の輝き、そして天才特有の知的好奇心が宿っている。
野球、競艇、ヒーロー。
広島の小さなガレージに、ゼロコアを打倒する「三本の矢」が揃った瞬間だった。




