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境界を越えるマブイ


【前回までのあらすじ】

武とまいは、霧隠家の術を破るための「超同調フルシンクロ」修行を敢行。黄金のマブイがガレージを包む中、突如として競艇の勝負服を纏った少年が現れる。

ガレージのシャッターから差し込む夕日に、少年の影が長く伸びる。

その背後には、トレーラーに積まれた流線型の「からくりボート」が、異彩を放って鎮座していた。

「……ここ、蔵野さんのガレージで合ってるか? 俺は波多野はたの。競艇でトップを目指してる。エンジンのマブイ圧が安定しなくて、最高のメカニックがいるって聞いてきたんだが」

まいは、黄金の光の中にいる武を一瞥し、スパナを握り直した。

「……悪いけど、今は『打席』の最中なの。でも、そのボートのボイラー……排気圧の調整がめちゃくちゃ。このままじゃ『異常振動バイブレーション』でレーサーの手足がイカれちゃうよ」

まいの鋭い指摘に、波多野は驚いたように目を見開く。

「……へぇ。野球専門かと思ったが、水上のからくりにも詳しいんだな」

その時、瞑想状態だった武がゆっくりと目を開けた。黄金の残光が瞳の奥で揺らめいている。

「……まい。そのボートの調整、やってやれ。……波多野と言ったか。あんたのボートから漂うマブイ、俺のバットと似た『渇き』を感じる。……競艇も野球も、最後に頼るのはマブイの純度だ」

武は修行の手を止め、波多野を真っ向から見据えた。

広島の霧を晴らすヒントは、意外にも「水上」を全速力で駆ける、新たな風(競艇)の中にあるのかもしれない。

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