第38話:シンクロ・マブイ
【前回までのあらすじ】
霧隠家のジャミングに苦戦し、撤退を余儀なくされた武たち 。浅野・長谷川の両家に前線を託し、広島のガレージに戻った武は、大宮家の古文書を紐解きながら次なる進化を模索し始める 。
ガレージには、不気味なほどの静寂が流れていた。
武はコクピットに座り、目を閉じて黄金の右腕と「対話」を続けている。
「……まい、もう一度、第35話の戦闘ログを流してくれ。俺の心拍と、マブイの出力波形がズレた瞬間を特定したい」
「わかった、武おじちゃん。……でも、これ以上のシンクロは、脳への負荷が『異常振動症』の域を超えちゃうよ……」
まいが震える指でタブレットを操作する。彼女の側でも、レオンが心配そうに武の足元に寄り添っていた 。
武が求めているのは、パイロットの「意志」がオペレーターの「数値」を介さず、ダイレクトにからくりへ伝わる**超同調**だ。
「霧の中じゃ、まいの指示がコンマ数秒遅れる。その一瞬が、ゼロコアの執行官には命取りになるんだ。……俺がお前の『眼』になり、お前が俺の『脳』になる。そうすれば、霧隠の術なんて関係ない」
その時、ガレージのモニターにニュース速報が流れた。
『——広島湾、謎の霧がさらに拡大。海上交通に影響、からくり競艇の開催も見合わせか』
武はそのニュースに一瞥をくれ、再び教本に目を落とした。
「……ま、別の戦場(レース場)でも頑張ってる奴らがいるみたいだな。俺たちも、ぐずぐずしてられない」
武の黄金の指先が、古びた教本の「マブイグミ」の深層心理に関する記述をなぞる 。
それは、人間とからくりが魂のレベルで混ざり合う、禁断の修行の始まりだった。




