第29話:嵐の前の休息、そして
【前回までのあらすじ】
阿蘇の火口で執行官・黒鉄を粉砕した武 。マブイ樹の力を得て覚醒した黄金の右腕は、阿蘇の自然を救い出した 。戦いを終えた三人は、次なる戦場を見据えながら、一時帰路につく。
広島、蔵野家のガレージ。
レオンが尻尾を振りながら、ボロボロになって帰還した武とまいに飛びついた 。
「レオン、ただいま。……ごめんね、お腹空いたでしょ」
まいは疲れ切った表情ながらも、愛犬の頭を撫でる 。その傍らでは、武が黄金のバットを整備台に置いていた。バットに刻まれた「陰」の侵食跡は消えていたが、再錬成によって増した質量は、今も重厚な威圧感を放っている 。
「……武おじちゃん、しばらくは機体のオーバーホールが必要だよ。阿蘇での負荷は、設計限界を遥かに超えてた」
「ああ、頼む。……だが、財団は待ってくれないだろうな」
武がテレビをつけると、ニュースでは「阿蘇の局地的な地震とオーロラのような発光現象」が報じられていた。当然、ゼロコアが裏で糸を引く情報の隠蔽だ 。
その時、まいのオペレーター用タブレットに、未知の暗号通信が入る 。
『——阿蘇の執行官を倒したか。だが、あれは我らゼロコアの「九番打者」に過ぎん』
画面に映し出されたのは、無機質な財団のロゴと、次なる標的の座標。それは、広島の防衛線を担う「浅野家」の領地近くを示していた 。
「……前哨戦か。望むところだ」
武の瞳に、再び金属性のマブイが宿る 。
第4章、ゼロコアとの全面対決に向けた「前哨戦」の幕が上がる。




