第24話:火口の四番打者
【前回までのあらすじ】
まいと九龍の技術が融合し、武の右腕と黄金のバットは「阿蘇・後編仕様」へとアップデートされた 。三人は阿蘇の心臓部、地底から這い出そうとする巨大な影の咆哮を目指し、火口の縁へと辿り着く。
火口の淵に立った武の眼下に広がっていたのは、地獄のような光景だった。
何十本もの巨大な汚染パイプが、阿蘇の母岩へと深く突き刺さり、脈動しながら「闇のマブイ」を吸い上げている 。その中心、汚染の霧の中から姿を現したのは、先ほどの重装甲機獣とは一線を画す、洗練された人型のからくりだった。
その機体は、死神のような大鎌を野球のバットのように肩に担ぎ、全身から黒い蒸気を噴き出している。
『よく来たな、廃棄物。私の名は、ゼロコア執行官・黒鉄』
合成音声が、火口の爆音を切り裂いて響く。黒鉄が担いだ鎌を一振りすると、真空の刃が武の足元の岩盤を容易く切り裂いた。
「武おじちゃん気をつけて! あいつ、普通のからくりじゃない……属性が『陰』に塗り替えられてる!」
まいのタブレットが、絶望的な数値を弾き出す。黒鉄の周囲では、マブイが吸い込まれるように消失し、光さえも届かない暗黒の空間が形成されていた。
「九龍、あれが財団の言う『四番打者』か」
「ああ……地熱ば吸い尽くして、山ば死なせるための死神たい。ありゃ、野球のルールなんて守る気はなかばい」
武は黄金のバットをゆっくりと構えた。
新しく組み込まれた地熱冷却回路が、武の右腕を内側から熱く、力強く押し上げる
「……ルールなんて関係ない。汚い球を投げる奴は、スタンドまで叩き込むだけだ」
黒鉄が死神の大鎌を低く構え、音もなく踏み出した。
阿蘇の頂をスタジアムに変える、命懸けの「後編」が、今プレイボールした。




