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第23話:マブイ樹の鍛錬

【前回までのあらすじ】

月夜の阿蘇で、戦う理由を語り合った武と九龍。復讐ではなく「当たり前」を取り戻すために。九龍から贈られた「地熱蜂の蜜」が武の傷を癒やす中、まいは一つの決断を下す。


「……できた。武おじちゃん、右腕のバイパス接続、完了だよ」

まいの声は、疲労でかすれていた。彼女の指先はグリスで黒く汚れ、その頬には小さな「グリス負け」の炎症ができていた。だが、その瞳には強い光が宿っている 。

武がゆっくりと右腕を回すと、黄金の関節から「シュンッ」という、これまで以上に鋭く澄んだ排気音が響いた。

「すごい……阿蘇の地熱マブイを直接、冷却回路に組み込んだの。熱には、より高い熱をぶつけて循環させる。九龍さんに教わった、松井家の鍛冶の応用だよ

武は立ち上がり、横に置かれた黄金のバットを手に取った。

そこには、九龍が持ち込んだ「マブイ樹」の若枝が、まるで血管のように巻き付いていた。木属性の柔軟性と、武の金属性の硬度が融合し、バットはかつてないほどの『しなり』と『重み』を纏っている。

「……いいバランスだ。これなら、どんな魔球(汚染)も拾える」

「感傷に浸っとる時間はなかばい」

九龍が愛機に飛び乗り、火口の方向を指差した。

そこでは、ゼロコアの汚染パイプが脈打ち、地底から這い出そうとする「巨大な影」の咆哮が、阿蘇の夜気を震わせていた。

「……あいつが、財団の用意した『四番打者』か」

武の赤い瞳が、ターゲットをロックする。

武、まい、九龍。バラバラだった三人のマブイが今、一つの「チーム」として、阿蘇の深淵へと走り出した。

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