第17話:火の国の洗礼
【前回までのあらすじ】
軽トラの荷台でゼロコアの追撃を「打ち返した」武。重装甲からくりの盾を黄金のフルスイングで粉砕し、包囲網を突破した二人は、噴煙たなびく阿蘇の山中へと踏み込む。
軽トラックがヘアピンカーブを曲がり切ると、視界が唐突に開けた。
月光に照らされた阿蘇の五岳。その山肌は、通常の夜山とは異なり、不気味な脈動のように赤黒く明滅している。
「……着いたよ。ここが阿蘇松井家の領地、『マブイ樹』の森の入り口」
ハンドルを握るまいの声が、緊張で強張っていた。まいのタブレットには、ここら一帯の「地熱マブイ」の数値が異常値を叩き出していることが示されている。
武は助手席から降り、黄金のバットを担ぎ直した。
足元からは微かな振動。それは火山の活動ではない。何千体もの「地熱蜂」が、地底で一斉に羽ばたいているような不気味なノイズだ。
「待っとったばい。蔵野武、それにオペレーターの娘」
霧の中から現れたのは、ボロボロになった大鎧を纏った九龍だった。彼の背後には、浄化された『岩鉄猪』が控え、その鼻からは青い蒸気が漏れている。
「九龍、様子がおかしいな。ここは、俺の知っている阿蘇じゃない」
「ああ、ゼロコアの奴ら、山の最深部にある『マブイ石の母岩』に直接パイプば打ち込みよった。山全体が、毒されたマブイで熱病にうなされとるたい」
その時、山の斜面から無数の赤い「眼」が光った。
財団に操られた野生の機獣たちが、侵入者を排除せんと、静かに包囲網を縮めてくる。
武は赤い瞳を光らせ、静かにジャージの袖を捲り上げた。
「……マブイの熱病か。なら、俺が冷やしてやる。黄金のバットでな」 [cite: 2026-01-24]




