第15話:阿蘇への隠密行
【前回までのあらすじ】
浄化した機獣『岩鉄猪』を九龍に託し、武は財団『ゼロコア』の陰謀を食い止めるべく阿蘇へと向かう決意を固める。「平和に野球をさせてくれないなら、打ち込みに行くまでだ」。その言葉を胸に、武はまいの操る軽トラックの助手席に乗り込んだ。
軽トラックが阿蘇の裾野、人気のない県道を走る。荷台には、布で隠された黄金のバットと、予備の蒸気シリンダーが積まれていた。
「武おじちゃん、さっきから後ろの車のマブイ波形が妙なの。一定の距離を保って、こっちの通信をジャミングしてる」
ハンドルを握るまいが、バックミラーを睨みながらタブレットの解析画面を指差す。
「……来たか」
武の赤い瞳が、夜の闇を貫いて後方の黒いセダンを捉えた。
直後、セダンのルーフが展開し、そこから複数の『工兵』型からくりが飛び出した。さらに空からは、財団が誇る空中戦力、カラスを模した偵察機獣の群れが急降下してくる。
「目的地に着く前に、ここで『素体』に戻してやろうという腹積もりか」
武は走行中の助手席から身を乗り出した。
前方では、道路を封鎖するように財団の重装甲からくりが立ち塞がる。
「まい、スピードは落とすな。こいつらは……俺が全部打ち返す!」
武は大学ジャージを風になびかせ、黄金の機械腕を剥き出しにする。
セダンのサンルーフから、ゼロコアの指揮官が不気味な合成音声で告げた。
『蔵野武。お前のマブイは財団の資産だ。返却を求める』
「断る。これは、俺が大学を卒業し、プロのマウンドに立つためのチケットだ!」
武が黄金のバットを構えた瞬間、後方のセダンからマブイを凝縮した弾丸が放たれた。




