第14話:共鳴する鼓動
【前回までのあらすじ】
蔵野家を襲った汚染機獣『岩鉄猪』に対し、武は黄金のバットを振り抜いた。眉間のマブイ石を的確に捉えた「センター返し」の一撃は、機獣を破壊することなく、その身を蝕んでいた汚染マブイのみを霧散させた。
静まり返った蔵野家の庭に、岩鉄猪のボイラーが奏でる「シュン、シュン」という規則正しい排気音だけが響く。
「……信じられん。岩鉄猪の荒ぶるマブイが、静まっとる」
九龍が驚愕し、愛機から降りて歩み寄る。武は黄金のバットをゆっくりと下ろし、動かなくなった機獣の頭にそっと触れた。その冷たい金属の肌の下から、まるで生物のような微かな鼓動が伝わってくる
「……お前も、勝手に中身を書き換えられたんだな」
武の呟きには、自身のサイボーグ化された運命と重ね合わせるような、深い悲しみが混じっていた。
その時、まいのタブレットが鋭いアラート音を鳴らした
「武おじちゃん! 猪の耳の後ろに、見たことないチップが付いとる! そこから不気味な信号が出て、阿蘇の奥深くにマブイを送信しとるよ!」
「……ゼロコアの仕業たい」
九龍が顔を強張らせる。財団は単に機獣を暴れさせるだけでなく、彼らを「アンテナ」として使い、阿蘇の地下に眠る巨大なエネルギー源を探っているのだ 。
「……武、こいば連れて行く。俺たちのマブイ樹の番人なら、こん子の汚染ば完全に解けるかもしれん」
九龍の言葉に、武は黙って頷いた。
去り際、岩鉄猪は一度だけ武を振り返り、感謝を伝えるかのように小さく鼻を鳴らした。
「……さて」
武は再びジャージを羽織ると、赤い瞳で阿蘇の山並みを睨み据えた。
「平和に野球をさせてくれないなら、こっちから打ち込みに行くまでだ」




